Bionews
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4月 第1週,2週3週4週

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4月 第4週
010428 <遺伝子を操る>DNA鑑定、超微量でも 犯人像の再現も視野に
 「DNA鑑定」が、さまざまな場で利用されるようになった。技術的進展も著しい。
 DNAは遺伝情報を記した暗号文字の集合体である。人間の場合、暗号文字の99・9%は同じ配列だが、残り0・1%は人によって違う。DNAを鑑定すれば、個人が特定できる。犯罪捜査の有力な武器である。現場に犯人のDNAが残っていれば、大きな手がかりになる。日本でもすでに2600件以上行われ、229件は裁判で証拠に採用された。

 この種の動かぬ証拠としては指紋が知られている。だが、不完全な指紋は証拠にならない。DNA鑑定とその技術的進展が、このネックを解決しつつある。

 帝京大医学部の吉井富夫講師(法医学)らは、コピー用紙や感熱紙に残された指紋からDNAを解析する技術を確立した。アルコール溶液に浸すなどして指紋の中にあった細胞からDNAを取り出す。これを増幅してDNAの量を増やし、酵素で切断してどんな長さの断片ができたか調べる。この断片のでき方のパターンを、指紋の持ち主の血液のDNAを切断したパターンと比べたところ、ぴたりと一致した。

 微量のDNAを増幅する技術が進んだことが、この解析を可能にした。10年ほど前までは、解析には少なくとも50万分の1グラム程度のDNAが必要だった。1平方センチの指紋に含まれるDNAは約100億分の1グラム。同じ大きさの血痕の1000分の1しかない。とても解析に至らなかった。
 「DNA鑑定を使えば、証拠として役に立たなかった不完全な指紋も生かせる」と吉井さんは自信をみせる。
 実際の捜査で、こんな微量の試料からDNAを解析した例はまだない。しかし、現場で応用可能なことは実証されている。

 防衛医科大の向田政博教授(法医学)らは、ひき逃げ事件を起こして雨の中を80キロ以上逃走したトラックのタイヤから、被害者のDNAを検出した。
 目撃証言から逮捕された容疑者の車には、左後輪のタイヤに何かがこすれたような痕跡が残っていた。血痕などはなかったが、痕跡の6カ所に粘着テープを張り付けて試料を採取した。1カ所あたり1億分の1グラム程度のDNAが解析でき、被害者のDNAと一致した。
 この場合は被害者のDNAだったが、犯人を特定するケースでは、採取したDNAを照合するDNAが必要だ。欧米各国は、証拠と照合するため、犯罪者のDNAデータベース作りを進めている。

 英国は1995年、世界で初めて重罪犯のDNAサンプルを集めたデータベースの運用を始めた。現在保存されているサンプルは約100万人分。さらにDNA採取の対象をすべての犯罪者に広げ、2004年までに200万人分のサンプルを追加する計画だ。米国でも、連邦捜査局(FBI)が1998年から全米50州が解析した服役囚らのDNAのデータを集め、再犯時にチェックできるようにしている。  では、犯人と一致するDNA資料がデータベースになく、まったく見当がつかない場合は、どうするか。ここでも新しい研究が進んでいる。DNAから皮膚の色や顔の骨格を再現し、犯人像を推定しようというのである。

 人間の皮膚にはメラニンという色素が含まれている。これが多いと皮膚は黒くなり、少ないと白や黄色になる。同じモンゴロイド(黄色人種)でも、高緯度地域に住む民族は、メラニンが少なく色白の人が多い。
 東京大理学部の石田貴文助教授(人類学)らは、ニューギニアから中国東北部まで30地域に住むモンゴロイド約900人を対象に、メラニン合成を調節するたんぱく質の遺伝子を調べた。
 この遺伝子は、暗号文字の配列の違いによってさまざまなタイプに分けられる。低緯度地域の人に多いタイプが高緯度地域では少なく、高緯度地域に多いタイプが低緯度地域では少ないなど、居住地の緯度によって遺伝子のタイプが違っていた。中国東北部に住む人の中には、白人と同じタイプの遺伝子を持つ人もいた。
 石田さんは「紫外線が強い低緯度地域では、紫外線を吸収するメラニンを多く合成できる方が有利だ。これが遺伝子のタイプの違いになって表れたのではないか。遺伝子の違いと肌の色の関係が分かれば、遺伝子解析から肌の色が予測できる。髪の毛や目の色も分かるだろう」と言う。
 顔の形成に関係する遺伝子も、これまでに80種類以上見つかっている。  毛髪を赤くする遺伝子を発見した豪州クインズランド工科大のアンジェラ・バンダール主任研究員は、次のように予言した。

 「いずれは犯罪の目撃者がいなくても、遺伝子情報からモンタージュ写真が作れるようになる」
<毎日新聞ニュース速報>
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010428 <糖尿病治療>脳の糖濃度感知のメカニズムを解明
 体内の血糖値を一定に保つため、脳がぶどう糖(グルコース)の濃度を感知するメカニズムを、千葉大学大学院医学研究院(細胞分子医学)の清野進教授(代謝・内分泌学)らの研究グループが、英オックスフォード大学との共同研究により世界で初めて解明した。低血糖症や糖尿病などの新しい治療法につながる可能性がある。この研究成果は、5月1日発売の米科学誌「ネイチャーニューロサイエンス」に掲載される。
 体内で血糖値が下がると、脳の視床下部にある神経細胞が自律神経に信号を送り、血糖値を上げるグルカゴンホルモンが分泌されることにより、体内血糖値は一定に保たれる。だが、脳がぶどう糖の濃度を感知する仕組みについては解明されていなかった。
 清野教授らは、糖尿病の発症に深くかかわるインスリンホルモンの分泌を調整する「ATP感受性カリウムイオンチャネル」の遺伝子を破壊した実験用マウスを作製。このマウスに人工的に低血糖を誘発させたところ、グルカゴンホルモンの分泌は低いままで、血糖値は回復しなかった。この実験で、同チャネルがぶどう糖センサーとして決定的な役割を果たしていることが判明した。
 清野教授は「血糖値維持メカニズム全体の解明に大きく近づいた」と話している。  大村裕・九州大名誉教授(神経生理学)の話 このぶどう糖感知のメカニズムを使えば、人工的に満腹感を作り出し少量の食事で済ますことで、肥満防止や糖尿病治療につながる可能性が高い。学術的にも非常に重要な発見だ。 
<毎日新聞ニュース速報>
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010428 <遺伝子組み換え>塩分に強いイネを開発 東農大などの研究
 海水(塩分濃度は約3・5%)の半分近い塩分濃度の水でも栽培が可能な遺伝子組み換えイネの開発に、東京農業大と財団法人・進化生物学研究所(東京都世田谷区)の研究グループが成功した。東南アジアなどでは、地球温暖化が原因とみられる海面上昇で水田が海水につかる問題が起きており、塩害に悩む地域の食糧供給に役立つと期待される。7月に東京で開く日本植物細胞分子生物学会で発表する。

 植物は、塩分濃度の高い環境で育てられると、体内で活性酸素という物質を大量につくるようになる。その結果、遺伝子や細胞が傷つき、枯れてしまう。  研究グループは、大腸菌のカタラーゼという酵素が活性酸素を消す働きを持つことに着目し、その酵素の遺伝子をイネの細胞に組み込んだ。
 イネが高さ5センチ程度の苗に成長した段階から、海水濃度の約6分の1(0・6%)の塩水で育てたが、順調に成長し、収穫までできた。海水の半分近い濃度(1・5%)の塩水でも、20日間まではほぼ順調に成長した。一方、通常のイネは、海水の6分の1の塩分濃度だと10日で枯れた。
 研究グループによると、過去に肥料を使いすぎた耕作地でも、塩水と同じような仕組みで植物体内に活性酸素が生じイネが育たなくなる。だが、組み換えイネなら栽培可能だという。
 研究グループは、細胞内に塩分が蓄積するのを防ぐ働きを持つ大腸菌の遺伝子をさらにイネに組み込み、海水と同濃度の水でも生育するイネを作る計画だ。

 研究グループを指導する進化生物学研究所理事を務める駒嶺穆(こまみねあつし)・東北大名誉教授(植物生理学)は「栄養分が豊富で劣悪な環境でも育つイネの開発を進めたい」と話している。 【新・神への挑戦取材班】

●安全性の確認必要
 高倍鉄子・名古屋大教授(植物生理学)の話 カタラーゼは耐塩性を高めるうえで非常に有望視されていた。耐塩性のイネはこれまでも開発されているが、今回のは収穫までこぎつけ、最も抵抗力を持っていると言える。安全性の確認は必要だが、途上国の食糧供給に貢献できる。
<毎日新聞ニュース速報>

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010424 <禁煙>できないのは遺伝子のせい? 米国がん学会発表
 禁煙が続かないのは意志が弱いためではなく、遺伝子の問題――。愛煙家の言い訳にもなりそうな研究結果が22日、カリフォルニア州デイナポイントで開かれた米国がん学会の会合で発表された。
 テキサス大MDアンダーソンがん研究所のポール・シンシリピーニ助教授らの研究。
 同助教授は、ヘビースモーカーの中年男女134人を対象に、カウンセリングやニコチン・パッチ、抗うつ剤投与などの禁煙プログラムを実施。全員が持っていたDRD2というドーパミン(脳の神経伝達物質)受容体遺伝子のタイプ別に禁煙継続状況を比較した結果、A1タイプの遺伝子を持つ人のほうが喫煙を再開する割合が高かったという。
 CNNテレビは、遺伝子が禁煙の障害になっていることを明らかにした初めての研究としており、シンシリピーニ助教授は「遺伝子解析で、より効果的な禁煙への支援が可能になる」と指摘。遺伝子のタイプ別に適切な禁煙薬の開発に期待を示した。
(ニューヨーク共同)
<毎日新聞ニュース速報>

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4月 第3週
010420 マウスのぜんそくの遺伝子発見 武田が医薬品化目指す=ヒトの対応遺伝子も確認−
 肺気腫(しゅ)などの慢性閉塞(へいそく)性肺疾患や気管支ぜ んそくなどの原因となる人の遺伝子を発見したと、医薬品大手の武 田薬品工業(大阪市)が二十日、発表した。
 この遺伝子はCLCA1と呼ばれ、茨城県つくば市の同社研究所 で発見された。これがつくるタンパク質が、呼吸困難やせき、たん などの呼吸器疾患特有の症状を起こすとみられ、同社は「両疾患の 成人患者は世界で計五千五百万人と推定され、この発見を根治薬の 開発につなげたい」としている。
 同社はまず、ぜんそくマウスの気道上皮の、粘液を分泌する杯状 細胞で、Gob―5という遺伝子が特異的に発現、さらに炎症の悪 化とともにこれが顕著に増加することを確認した。
 次いで、正常なマウスにこの遺伝子を過剰に発現させると、粘液 分泌が盛んになり、気道が過敏になるほか、気道が狭まり、炎症細 胞も広がった。逆に、ぜんそくマウスでこの遺伝子の発現を抑制す ると、症状が改善、Gob―5が呼吸器疾患の発症に密接にかかわ ることを突き止めた。
 遺伝子同士を比較した結果、マウスのGob―5と人間のCLC A1の塩基配列が七○%一致。さらに、実際に人の呼吸器疾患患者 でもCLCA1の発現を確認、ほぼ同じ働きをしていることを突き 止めた。
 同社は既に、CLCA1タンパク質の働きを阻害する可能性があ る化合物を多数突き止めているという。既に特許を申請、米科学ア カデミー紀要に発表した。
<共同通信ニュース速報>

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010420 MRSAのゲノム解読 新抗生物質の開発へ前進
抗生物質が効かないため医療現場で深刻な問題になっているメチ シリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の全遺伝情報(ゲノム)を 、平松啓一順天堂大教授(細菌学)を中心とする国内の共同研究グ ループが世界で初めて解読し、二十一日付の英医学誌ランセットに 発表する。
 菌が抗生物質に対する耐性を獲得する仕組みの解明や、効果的な 抗生物質の開発にもつながりそうだ。
 解読したのは通常のMRSAのほか、「切り札」とされる抗生物 質バンコマイシンへの耐性もあるMRSA。
 平松教授によると、MRSAのゲノムは、約二百八十万個の塩基 対が環状に並んでおり、約二千六百個の遺伝子を持つ。このうち約 七十個は、病原性関連とみられる遺伝子で、今回初めて見つかった 。効果的な抗生物質を開発する標的になると期待される。
 バンコマイシンが効かないタイプも、ゲノムの九六%が通常のM RSAと同じだった。同教授らは、この四%の違いから、バンコマ イシンに対する耐性の原因を絞り込みたいとしている。
 MRSAのゲノム解読は、米国や英国のチームも早くから取り組 んでいた。平松教授らは昨年四月から解読に着手したが、日本学術 振興会の研究班と、経済産業省所管の製品評価技術基盤機構が菌の解読作業を分担。互いに情報交換することでスピードを上げ、解読 終了にこぎつけた。
<共同通信ニュース速報>

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010417 <遺伝子を操る>「ナツコ菌」で納豆誕生 種の垣根超え新生
いま、この地球上には「新しい生物」が次々に生まれようとしている、といっても、 あながち大げさではない。
 多様な生物は「種」によって区分される。「生命の設計図」であるゲノム(全遺伝情報)の基本構造の違いが種を決める。では、種を超えてその設計図のかなりの部分を組み換えたら、どうなるか。同じ種のすぐれた個体同士を交配させる品種改良などとは次元が違う。そこで誕生する生物は、まったく新しい生物種といえないか。
 三菱化学生命科学研究所(東京都町田市)の板谷光泰・主任研究員らは「納枯(ナツコ)」と名づけた“新しい細菌”を作った。納豆菌の「納」と枯草菌の「枯」が名前の由来である。
 枯草菌のゲノムは約400万個の遺伝暗号文字(塩基)のDNAからなる。枯草菌は外部のDNAを取り込み、自分のゲノムの塩基配列の似た部分と取り換える性質を持つ。納豆菌と枯草菌の塩基配列には似た部分が多い。枯草菌の培養液に納豆菌のDNAの断片を入れただけで、枯草菌は納豆菌の遺伝子を取り込んだ。ナツコでは約400万個の暗号文字のうち30万〜40万個分が納豆菌と入れ替わった。遺伝子数にしておそらく200個を超える。
 ヒトとチンパンジーでさえ、塩基配列の違いはわずか1・4%である。ゲノムが1割も入れ替わったら、もはや枯草菌とはいえない。ナツコは大豆から納豆を作る働きもちゃんとした。
 ほ乳類では、染色体1本をほぼ丸ごと別の生物に入れる技術も開発された。染色は遺伝子が乗っている「乗り物」と考えたらいい。
 鳥取大医学部の押村光雄教授(細胞工学)とキリンビールのグループは、細胞の中にヒトの21番染色体を導入したマウスを作った。発生初期のマウスの細胞にヒトの21番染色体を入れる。これをマウスの胚(はい)に注入し、胎内に戻して育てる。普通のマウスの染色体は40本だが、このマウスは染色体が41本の細胞と40本の細胞の両方を持つ。21番染色体の塩基数は約4500万個。他の生物に移入されたDNAとしてはけた違いの大きさだ。
 さて、これらの研究の目的は、むろん「新しい生物種」を作ることではない。  まず、ナツコ。従来の遺伝子組み換えや遺伝子治療では、ウイルスなどに必要な遺伝子を組み込み、他の細胞に運んでいた。しかし、ウイルスなどに組み込めるDNAは、塩基数で数千個程度に限られていた。枯草菌の性質を利用すれば、これを一気に増やせる。板谷さんは遺伝子約900個分(塩基90万個)に相当するらん藻のDNAを枯草菌に挿入することにも成功している。
 「他の生物のゲノムを望み通りに枯草菌に入れられるので、光合成する枯草菌もできる」と板谷さんは語る。
 では、染色体導入マウスは何のためか。ヒトの場合、通常2本しかない21番の染色体が3本あるとダウン症になり、知的障害などが起きる。
 「染色体導入マウスでも21番染色体を含む細胞が多いほど、ダウン症によくみられる心臓の奇形などが多かった。このマウスを使ってダウン症の症状の改善に役立つ研究ができる」と押村さんはいう。
 押村さんらの研究グループは、ヒトの7番染色体の一部をマウスの細胞に入れることにも成功した。約300万の塩基からなる、この染色体の断片には、肝臓で薬物を分解する主な酵素の遺伝子が含まれる。
 薬物を分解するマウス自身の遺伝子は働かないようにしたので、このマウスではヒトの薬物分解機能だけが働く。開発中の新薬を投与すれば、人体に対する毒性や代謝速度などが分かり、臨床試験前に有望な薬をふるい分けできる。
 「遺伝子は染色体上のどの位置にあるかで働きが違う。だから、遺伝子をやみくもに組み込んでも、本来の働きを再現できるとは限らない。従来の遺伝子工学は遺伝子を一つ一つ組み込んでいたが、これからは染色体レベルで遺伝子を操作する『ゲノム工学』が必要になる」と押村さんは話す。
 だが、ゲノム工学によって複数の種のゲノムをつなげた「ハイブリッド生物」が次々に誕生すれば、「種」によって区分された生物の概念も変革を迫られる。生物についての従来の考え方を根っこから覆すことにもなるかもしれない。
 遺伝子組み換え実験は、危険度に応じて外界から隔離された施設の中で行うことになっている。しかし、国などの承認が必要な一部の実験を除けば、条件を満たした施設の中で一つの生物のゲノムをどれだけ組み換えようと制限はない。
<毎日新聞ニュース速報>

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4月 第2週
010413 生命のタネは宇宙から アミノ酸型のなぞ解明 大阪大教授ら
いん石に乗ったアミノ酸が宇宙を旅するうちに特殊な光を浴び、 あるタイプだけ生き残って地球に到来し、生命のタネになった―。 そんな仮説を裏付ける有力な証拠を井上佳久大阪大教授(光化学) らの研究チームが見つけた。
 タンパク質をつくるアミノ酸には組成が同じで、立体構造が鏡に 映したような関係にあるL型とD型の二タイプがあり、生体中には そのL型しかないことが大きななぞだったが、チームは星の進化の 最終段階である中性子星周辺から出る特殊な光がD型だけ分解して しまうことを実験で初めて確認。このほど米化学誌オーガニック・ レターズに発表した。
 井上教授らが利用したのは「円偏光」と呼ばれる光。この光は進 む際に波の振動方向がらせんを描くのが特徴で、ある種のアミノ酸 に照射するとL型かD型のどちらかを分解することが分かっていた 。
 だが、ロイシンなど体を構成する主要なアミノ酸については、エ ネルギーの低い光を使った実験しかできず、同様の現象は確認でき ていなかった。
 井上教授らは、産業技術総合研究所の小貫英雄・国際システム主 幹が開発した高いエネルギーの偏光を生み出す装置を使用。紫外線 よりも周波数の高い遠紫外領域の円偏光をロイシンなど三種類の必 須(ひっす)アミノ酸に照射してみた。
 この結果、中性子星を回る電子から放出されると考えられている 「右円偏光」を照射すると、D型だけが分解されることが分かった 。さらに、この反応は周りが強い酸性のときに起きることも突き止 めた。
 井上教授は「アミノ酸を乗せたいん石がそうした場所を通り、L 型だけが残って地球に届き、それを材料に生物が生まれたのではな いか」と話している。
<共同通信ニュース速報>

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010413 <時計遺伝子>皮膚や臓器の細胞の中にもあることを確認
生物の体内で自動的に時を刻み、睡眠や臓器の活動などのリズムを決める体内時計を つかさどる「時計遺伝子」が、皮膚や臓器の細胞の中にもあることを、神戸大医学部のグループがマウスを使った実験で世界で初めて確認した。ほ乳類では脳細胞の中にあることは分かっていたが、脳以外の細胞にも同じ機能があることを初めて証明。不眠症や時差ぼけの原因にもなる体内時計の仕組みの解明につながる研究として注目される。13日付の米科学誌「サイエンス」で発表する。
 グループは岡村均教授や八木田和弘助手ら。グループは1997年にマウスの脳の視床下部から体内時計のリズムを作る時計遺伝子を発見し、遺伝子が作るたんぱく質の量が約24時間周期で変動してリズムを作っていることを解明した。しかし、脳以外の臓器のリズムが作られる仕組みは分からず、マウスを使って研究していた。
 その結果、皮膚や臓器を形作る線維芽細胞から時計遺伝子とみられる遺伝子を発見した。この遺伝子を働かないようにしたマウスでは、脳、線維芽細胞とも、たんぱく質の量をコントロールできなくなって体内時計が狂うことを確認。また、その遺伝子が作るたんぱく質を解析すると、脳と全く同じ仕組みでリズムを作っていることも分かり、脳にあるのと同じ時計遺伝子であることを証明した。

 岡村教授は「脳と同じ仕組みで発振する時計が体中にあることが分かった。夜中に食事をしても胃や腸が昼のように消化活動をスムーズに始めるのは、体中の時計が脳の時計とは別に柔軟に動く仕組みを持っているからではないか。脳にある時計は非常に強力で、体中の時計を一日に一回合わせているようだ」と話している。
<毎日新聞ニュース速報>

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010411 アルツハイマー病患者に初の遺伝子治療実施
米カリフォルニア大サンディエゴ校の研究チームは十日、アルツハイマー病患者に対する遺伝子治療を実施したと発表した。世界でも初の試みという。
 手術を受けたのは、アルツハイマー病初期の白人女性(60)。オレゴン州在住の元教師で、三年前、この病気と診断された。
 今回の治療では、まず、脳の神経の成長を促進する物質を作り出す遺伝子を女性の皮膚の細胞に入れて三か月間培養。今月五日、この細胞を脳内の五か所に手術して埋め込んだ。女性は、二日後に退院。現在、経過を見守っている。
 治療の狙いは、この病気で障害を受けた神経の回復と保護で、病気そのものを治すことではない。まだ安全性を確認する臨床試験の第一段階で、効果は未知数という。
 アルツハイマー病患者は、米国で四百万人以上、日本で五十万人以上といわれ、女性の夫は、「私たちには四人の子供と一人の孫がいる。もしこの病気が遺伝性なら子孫に影響があるかもしれない。妻への効果もさることながら、未来の治療法開発に貢献したかった」との声明を出した。
<読売新聞ニュース速報>

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010406 生命の材料はすい星から? 激突実験で可能性確認
地球の生命は、約四十億年前に地球に盛んに激突していたすい星に含まれていたアミノ酸が原材料だったか もしれないと米カリフォルニア大バークリー校のジェニファー・ブ ランク博士らが五日、カリフォルニア州で開かれた米化学会で発表 した。
 すい星にアミノ酸や有機物が含まれていることは以前から分かっ ていたが、地球に衝突する際の高熱で分解してしまい、生命の原料 にはならない、との説が主流だった。しかし、同博士らはすい星衝 突を模擬した激突実験で、アミノ酸は分解しないばかりか、複数が つながってタンパク質の断片(ペプチド)を作り出すことを確かめ た。
 同博士は「実験では、あらゆるアミノ酸の組み合わせのペプチド ができた」と指摘。すい星の氷がとけてできる水滴も蒸発しないま ま残ることが実験で分かり、同博士は「すい星衝突は生命に必要な アミノ酸、水、エネルギーを一度に作り出す」と話した。
 地球の生命の誕生をめぐってはこれまで、原始大気に含まれてい たメタンやアンモニアに雷が作用してアミノ酸ができたとする説な どが唱えられていた。
<共同通信ニュース速報>

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4月 第1週
010403 ヒトゲノムで抗肥満薬目指す 武田薬品が化合物発見
医薬品最大手の武田薬品工業は三日、ヒトゲノム(全遺伝情報) を活用して抗肥満薬の候補となる化合物(ビフェニリルアミド誘導 体)を発見したことを明らかにした。
 実用化に向けた初期段階にとどまっているが、この抗肥満薬を同 社初のゲノム創薬にすることを目指す。国内の医薬品メーカーでゲ ノム創薬を目指して新薬候補となる化合物を発見したケースはまだ 少ないという。
 武田は、米国のバイオベンチャー企業、セレーラ・ジェノミクス などから購入したゲノムや、バイオテクノロジーと情報技術(IT )を融合した手法などを活用。化合物の発見に取り組む中、マウス を使った実験でこの化合物を経口投与すると、摂食が抑制されるこ となどが確認できたとしている。
 ゲノム創薬に向けては遺伝情報の迅速な解析でバイオとITの連 携が不可欠。三菱化学と富士通がITを軸に提携するなど、総合化 学メーカーとIT関連企業も結び付きを強めつつあり、武田の動向 に関心が集まりそうだ。
<共同通信ニュース速報>

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010401 魚の遺伝子改良に資金援助=「極めて危険な結果」招く可能性も−英政府
1日付の英紙インディペンデント・オン・サンデーは、遺伝子改良技術によって通常より4−6倍も成長の速い魚や病気に強い魚をつくり出そうとする非公開の研究に対し、農業・漁業・食糧省など英国の3省庁がこれまでに総額2600万ポンド(約44億円)もの資金を投入していると報じた。
 魚の消費拡大に対応しようとするものだが、こうした遺伝子改良魚が自然の魚と交配した場合、予測し得ない「極めて危険な結果」をもたらす可能性があるとされる。
[時事通信社]

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