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連載・特集

いのち見つめて 地域医療の未来
 第6部 医療と向き合う

 多忙を極める医療現場。過剰労働に耐えかねて辞めるスタッフは少なくない。患者の理不尽な要求や心無い言葉に神経をすり減らすケースも多く、医療従事者が抱えるストレスは増えている。医療をテーマにした年間企画の最終章第6部では、限られた医療資源を有効活用し、現在の医療環境を維持するために、患者側も考えなければならない課題を整理する。

2007/11/19の紙面より
(30)モラル低下と格差社会

経済的打撃が深刻化

増え続ける医療費未払いや保険料滞納。モラルの低下とともに制度のほころびも垣間見える
 「払えるのに払わない」。給食費や奨学金返還の未納が問題になっているが、医療費の未払いも深刻化している。全国的にモラルの低下が目立つ中、鳥取県も例外ではない。

 今年三月に県病院局が発表した二つの県立病院の二〇〇五年度末の医療費未払い総額は一億円に上った。市部の主要病院(二百床以上)に問い合わせたところ、二千万−六千万円の幅で未収金を抱えていることが分かった。互いの顔が分かる郡部より、人間関係が希薄な市部で顕著だ。

簡裁申し立ても

 県は再来受け付けの拒否、訪問・電話による督促、最終催告状の送付と回収対策を強化した。だが、地道に徴収活動を続けることが基本であることは変わらず、「状況が大きく改善したとはまだ言えない」と苦渋の表情だ。

 三月には簡易裁判所への支払い督促申し立てを初めて実施した。〇三年度に三回入院して治療を受けた受診者に対し、約四十万円の支払いを求め、訴えは認められた。それでも支払いはなく、強制執行の準備中だ。「最終催告状を新たに四件送付したばかりです」。裁判所申し立てを見据える案件は減らない。

 自営業者や農業者、年金生活者などが加入する国民健康保険でも保険料の滞納が増えている。県医療指導課によると、国保対象世帯数約十二万一千世帯(二〇〇六年度)に対し、滞納は一万五千−一万六千世帯に上る。税滞納と重複するケースも多く、生活全般で苦しい様子がうかがえる。

 滞納が続くと有効期限の短い短期被保険証、医療費を窓口でいったん全額負担しないといけない資格証明書の交付に進む。

 倉吉市では〇五年度の国保料未収額が約二億九千万円に上り、本年度から納付期限を八期から九期に拡充した。一方、短期被保険証の有効期間は原則一カ月に設定。新規滞納の防止に意を注ぐが、市国民健康保険課は「連絡が途絶えたり、開き直る場合もある」と対応に苦慮している。

ためらう受診

 医療費や保険料の未払い増加は景気低迷による影響も大きい。患者が受診に二の足を踏まないよう、各病院では相談窓口を設け、高額療養費の払い戻しなど医療費の公的助成制度の紹介や生活補助を申請する支援も行っている。

 しかし、高額な医療費から受診をためらったと思われるケースも。ある開業医は「来られた時には手遅れだった。すぐに紹介状を書いて別の病院に行ってもらったが、一週間後に亡くなられたのが忘れられない」と残念そうに振り返った。

 「国民皆保険」の維持を名目に、国は医療費抑制の方針を掲げるが、制度のほころびとともに患者の痛みも無視できない。


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