ドームやきものワールド
11/16〜20、ナゴヤドーム。文化と出会い、暮らしを楽しむ「器の世界」
【暮らし】ベビーカー『手伝って』 お願いは具体的に2007年11月17日 交通機関利用の際のベビーカー事故への対処法を紹介した生活面記事(九月二十九日付)で、「事故防止のためにもっと声をかけ合おう」と提案したところ、東京成徳短大の寺田清美教授から「授業で実践している」という声が届いた。ユニークな授業に密着した。 (井上圭子) 「何かお手伝いできることありますか」 「ありがとうございます。では子どもは私が抱くので、ベビーカーを持ってもらえますか」 今月四日、東京都中野区で行われた「身近な子育て応援」キャンペーン。東京メトロ丸ノ内線新中野駅の地上入り口で、エプロン姿の男子学生の申し出を、参加した母親は笑顔で受け入れ、「ここを持って」と具体的に指示。階段をおりて「助かったわ、ありがとう」「どういたしまして」と笑顔を交わした。 こども未来財団の二〇〇四年調査で、子育て中や妊娠中の母親の多くが「積極的に子どもを産みたい育てたいと思える社会ではない」(80・2%)、「制度や設備だけでは不十分。国民の意識改革が必要」(82・9%)と答えたのを受け、同財団は思いやりを行動にする「身近な子育て応援活動」を展開している。 今回はその一環として、保育学が専門で同様の考え方で赤ちゃんとの触れ合い授業を行う寺田教授に同財団が委託し、支援を行動に移す実習やバリアフリー調査などを行った。ゼミの学生二十人、親子十組、子育て支援団体関係者十人の計約四十人が参加した。 実際に学生たちは、街でベビーカーを押して段差につまずいたり、自転車とすれ違う恐怖を感じたり、畳んだベビーカーと荷物と子どもを抱えてバスに乗り込み「こりゃ重い」と実感したり。迷惑そうに通り過ぎる人がいる一方で、「あっちにエレベーターあるよ」「荷物持とうか」と声をかけてくれる人もいて、参加者からは「助けられるのってうれしい」との声も上がった。 特に、ベビーカーを持ってあげるなど具体的な手助け行動は、学生たちに収穫があったようだ。保育士を目指す学生の加藤大輔さん(20)は「大変さが分かった。どうしていいかわからなかったが、今度から勇気を出して声をかけてみたい」。「一度やって喜ばれると、さらにやりたくなる」(寺田教授) 参加した母親たちも「公共交通機関は周りに迷惑がかかると思い車ばかりでしたが、手助けがあれば電車で街に出てみたい」「言わなければ困っていることも伝わらないね」と口々に話した。 内閣府のバリアフリー化推進に関する国民意識調査(〇五年)によると、外出先での手助けを「常に」「できるだけ」する人は56・7%いた。一方「したいが行動には移していない」人は40・1%、しない理由を聞くと「かえって迷惑になると嫌」「方法がわからない」などが半数近くいた。 サポーターとして参加したNPO法人「せたがや子育てネット」の松田妙子代表(38)は「『絶対に助けたくない』という人は少なく、どう手を貸してよいのか戸惑っている人が多い。頼む相手とタイミングを見極め、具体的にお願いすれば、まず断る人はいない」と子育て世代に助言する。 逆に先輩世代からは「今の若い母親は甘えすぎ」という厳しい声も。参加した母親の一人、岡野香織さん(32)は「大切なのは互いの気遣いやマナー。私たちも『優遇されて当然』と勘違いせず、荷物を軽くしたり事前にエレベーターの位置を確認したり、時間にゆとりを持つなど工夫が必要。公共機関での外出が特別でも大変でもなく、普通に自然に社会に浸透したらいいな」と語った。 子連れ外出でうれしかった周囲の思いやり・電車やバスで席を譲られた ・ベビーカーを運んでくれた ・子どもをあやしてくれた ・優しい言葉で励まされた ・ドアを開けて待っていてくれた ・スーパーでかごを運んでくれた ・荷物を持ってくれた ・手が離せない間、子どもを見ていてくれた ※子ども未来財団「身近な『子育て応援』のおすすめ」リーフレットより
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