[社会] 愛知県警の裏金作りを現職警察官が実名で内部告発!
署長をやると家が建つ
「警察だけが治外法権でいいはずはない」。東玲治さんは語る。東さんは、愛媛県警の裏金作りを現職警察官として実名で内部告発した仙波敏郎さんを支える会メンバーだ。仙波さんが記者会見で明らかにした内容は、@愛媛県警では二人(仙波さんを含む)を除く全警察官が裏金作りに関与している、A捜査協力者に対する謝礼金=捜査報償費はすべてが裏金化され、幹部が私的に使っている、Bニセ領収書を書かない者はマル特=《組織の敵》として昇進・処遇で徹底的に差別を受ける、というもの。警察官全員が犯罪に荷担しているという衝撃的なものだった。
二〇〇四年二月、北海道警釧路方面本部長・警視長=原田宏二氏が警察組織の裏金作りの実態を初めて告発して以降、同年三月には、元弟子屈署次長=斎藤邦雄が証拠資料を携えて記者会見。五月には、大洲警察署(愛媛県)の元会計課長が匿名でテレビ出演し、証拠品の偽造印を示している。会計課長といえば裏金作りの全体像を知る立場である。この衝撃は大きかったが、県警は疑惑を全否定した。
現職警察官である仙波氏の実名による告発(〇五年一月)は、県警をさらに追いつめる痛打となったが、〇七年九月一一日、松山地裁は不当配転に対する国家賠償請求の第一審判決で、仙波氏の主張をほぼ全面的に認め、県に請求の満額にあたる一〇〇万円の支払いを命じた。告発後の不当配転の取り消しを審議した県人事委員会も「配置換えは違法」として異動を取り消す裁決を下しており、仙波氏の主張は、二度にわたって認められたことになる。
仙波氏の支援を続けながらも、ジャーナリストとしてこの事件を見つめ続ける東氏に仙波氏の告発の意義や、取材活動から見えてきたことなどを聞いた。(編集部・山田)
裏金作りの実態とは?
仙波さんが拒否した「ニセ領収書」とは、架空の捜査協力者に代わって、捜査協力費を受け取ったとする領収書を警察官や警察職員が作成することで、公金である捜査報償費を裏金化するためのものです。
仙波さんは、新任巡査部長として着任した三島署でニセ領収書の作成を求められ、「犯罪行為はできない」と作成を拒みました。二四才の時です。その後同署で三回拒否し、赴任先でも作成を拒み続けたため、ついには組織不適合者をさす「マル特」の烙印を押されます。
ニセ領収書作りを拒否して以降、仙波さんは昇進の道を完全に閉ざされ、交番・駐在勤務など外勤の現場をたらい回しにされました。現場以外には必ず裏金があるので、裏金作りに協力しない仙波さんに内容を知られることを恐れた県警中枢が、裏金を扱わない現場の一線におくという人事政策を採ったのです。
それでも彼が仕事を投げ出さず、広域窃盗犯の逮捕という成果も上げているのは、彼が警察官という仕事に誇りを持っているからです。
警察の組織的な裏金作りは、他の官公庁にあるような個人的な使い込みや非公式な飲食費用の捻出などとは全く性格の違うものです。まずその規模です。全国で社保庁職員が詐取した金額は四億円程度とされていますが、愛媛県警の裏金がほぼそれに匹敵します。警察組織全体では、約一〇〇倍=四〇〇億円位になるのではないでしょうか。社保庁の不正とは比較にならない巨額な公金が、毎年裏金として消えているのです。
さらに警察の裏金は、一部幹部が独占していることも大きな特徴です。カラ出張旅費やニセ領収書で現金化した裏金は、各警察署ナンバー2が管理するようですが、現金にして(金庫に入れ)プールされ、実際の捜査報償費や慰労会費用・交際費などの必要な出費をまかなった後に、残った金を年度末の異動の際に警察署長が全てポケットにねじ込んで新任地に転出するのです。この時点でプールした裏金はゼロとなり、新任署長の下でまた裏金が作られていきます。「署長をやると家が建つ」と言われるゆえんです。