私たちの体は食べることで維持され、健康な体は健全な食事によってつくられます。ところが、このあたりまえのことがないがしろにされていると思える現象がいろいろ起こっています。
例えば、若い女性の食事です。厚生労働省の調査によると、20代の女性の4人に1人は、食事や栄養についてほとんど考えたことがないと答えています。また、朝食抜きの人の割合が20年前の約2倍に増えています。
妊娠中の食事は、子供の生涯にわたる健康を左右する大切な因子であるというお話をしました。妊娠してから栄養に気をつけることはもちろんですが、実は、妊娠前からの母親の栄養状態が赤ちゃんに影響するのです。 ビタミンBの一種である「葉酸」は、DNAを構成する核酸やたんぱく質の合成を促進する働きを持っています。このため、妊娠初期に不足すると、ある種の脊椎(せきつい)・神経の先天異常の発症リスクが増えてしまいます。妊娠前から葉酸を十分含んだバランスのよい食事を取ることが重要です。葉酸はホウレン草などの緑黄色野菜や豆類、レバーに多く含まれています。サプリメント(栄養補助食品)に頼る生活は問題ですが、必要摂取量(妊婦では成人の約2倍)が取れない時は、サプリメントを利用するのも良いでしょう。
次世代につながる若い女性の食事は大切ですが、神経質になることはありません。3食をバランスよく食べ、ダイエットを避け、たばこを吸わない、という普段の心掛けだけで随分違います。(大阪樟蔭女子大学教授・三宅婦人科内科医院医師、甲村弘子)
毎日新聞 2007年11月18日 大阪朝刊