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著作権講座4時間目・著作権の用語




用語集
非営利サイトの管理人向けにできるだけかみ砕いて書いているため、専門家の方は???と思われる部分があるかもしれません。
専門家の方や学生さんで、詳しく知りたい方は他の法律専門サイトをご利用下さい。

著作物
2時間目、「著作物の定義」に細かく書いていますが、ここで例をあげると、くまのプーさんの形そのものが著作物といえます。写真やスキャンはもとより、手で描いたりしても、完成した物がプーさんとそっくり(誰が見てもくまのプーさん)であれば、それはディズニーの著作物と言うことになります。

著作権
その、著作物を守り、無断使用をさせない権利で、実際にはさまざまな権利によって保護されています。
「著作権に触れる」というのは、実際は著作権の子分である色々な権利(著作隣接権)のどれかに触れると言うことで、それらを合わせて「著作権」といいます

著作権に含まれる権利

複製権・・・くまのプーさんを形取ることが出来るのは、著作者(Disney社)のみ、という権利です。サイトにアップして他人のパソコンに表示させると「複製」とみなされる考え方が一般的です。家庭内の複製と使用は、別途例外が決められています。

公衆送信権・・・・「公衆送信」とは、不特定の人や多数の人に対して著作物の送信を行うことを指します。公衆送信は原則として著作権者だけが行うことができます(著作権法2条1項7号の2、23条)。

 インターネットを利用して、ホームページに写真や文章などの著作物を掲載したり、電子メールに著作物のファイルを添付して多くの人に送ったりすることなどが該当するほか、テレビやラジオなどの放送や、有線放送などを利用して著作物を送信することも公衆送信に当たります。

 また、実際には送信が行われていなくても、著作物を送信できる状態に準備すること(送信可能化)も公衆送信に含まれます。例えば、ファイル交換ソフトを使って、著作権者に無断で、パソコンにある著作物を送信することができるようにした時点で、公衆送信権侵害になります。



展示権、口述権、上映及び頒布権・・・複製した物を、公に出せるのはDisney社並びに許諾を受けた者だけ、という権利です。これは、有償・無償を問いません。
つまり、くまのプーさんの生写真を売ることはおろか、友人にあげることも法律上では・・・
また、サイトにアップすると、複製の他「公衆送信権」の侵害にあたるという考え方が一般的です。(判例はない)

翻訳権
複製権と似ていますが、外国語に翻訳できるのも、著作者・著作権者だけということになります。

翻案権
くまのプーさんに実は弟がいた、実はカンガはシングルマザーで、1人でルーを育てている、というプーさんに関することを脚色したり、話を作ったりできるのはDisney社並びに許諾を受けた者だけ、という権利です。
プーさんの出てくる童話を作って発表しても、複製権以外にこれにも引っ掛かります。


著作者人格権
著作者人格権というのは著作権の一部でもありますが、他人に譲渡したりすることが出来ない、真の作者を守るための権利です。

公表権(18条) ですが、著作者が「どのような方法で公表するか」を選択出来る権利です。
投稿などしてしまうと、相手に公表することを委ねたことになり、この権利は主張できません。
投稿を受けた人が例えばテレビやネットで無断で使ったとき(約束と異なる投稿方法)には主張できます。


氏名表示権(19条) 自分の著作物を公表するときに、名前を出すことを義務づけたり名前を出させないよう二次使用(いわゆるライセンス)の場合でも、(c)Disneyを必ずつけること、という条件をつけられるのです。
が、 投稿をまとめて再掲載するような場合は「投稿した際のHN」の表示、または「無表示」であれば同権の侵害にあたると考えるのは難しいと思います。(画像が投稿されたものであると判別でき、かつ、投稿人が著作権者以外でないということが判別できれば問題ないのでは)

同一性保持権(20条) 自分の著作物を、自分が書いたのと同じように公表させる権利。たとえば、ミッキーの耳を3枚描いて公表すると、この権利の侵害にもあたります。また、替え歌を作って歌詞を公表しても、同様に同一性保持権の侵害になります。WEBサイトの場合で言うと、トリミング、圧縮、サイズの変更、保存形式の変更などは同権の侵害に当たりませんが、それ以外の加工(素材として使うなど)だと同権の侵害になります。

で、もう一つ
名誉・声望保持権(113条3項)というのもあります。
簡単に言うと「著作物の使い方で、原著作者がどのような評価を受けるか」ということであり、
「著作者の創作意図に外れた利用をされることで、創作意図に疑いを持たせたり、芸術的価値をそこなったりするか」ということです。
例えば「芸術的に書いた絵画を複製して包装紙に使った」「高尚な音楽を作ったのに、低俗なショーの伴奏に使われた」などのケースが名誉・声望保持権の侵害になるとのことで、「当初の主旨と違う使われ方」はこちらの権利と関連があります。

ちなみに、著作権のテキストや説明の中で、著作者人格権から「名誉・声望保持権」が抜けている場合も多いので、注意が必要です。(本来の著作者人格権ではなく、みなし規定で著作者人格権と同等の効力をもつとされているため、ちょっと分かりにくい)


あと、契約書に「著作者人格権は行使しない」という文言を入れたところで、著作者人格権は消滅しません。 (この文言、実は法律上は意味のない文言です)
但し、投稿などの場合はある程度決められた範囲内で著作権者(投稿を受けた者)が自由に使えると言うことで、著作者の権利はその分、制限されるということです。
そうしないと、著作権者は常に「投稿を引っ込めて欲しい」という要請におびえることになりますので。
著作者が公表を差し止めることができるのは、契約(利用規約)の範囲外の公表をされた際に、氏名表示権、同一性保持権、名誉声望保持権の侵害に当たる場合と考えられます。




さまざまな著作物について

著作権法では何が著作物かを法律で定めていますので、ここにまとめました。
(当講座の性質上、簡単にまとめた部分もありますので、ご了承下さい)

・言語の著作物
思想または感情が「言語」によって表現されている著作物です。
「小説」「脚本」などの「文書著作物」と、「講演の筆記録」などの「演述著作物」に分けられます。
ラジオ番組の場合、台本通りに芸能人が発言すれば前者、アドリブなら後者になります。
いずれにしても、文章の内容が思想または感情を表していることが必要で、契約書などの商用文の形式や内容は著作物ではありません。
WEBサイトの利用規約も、よっぽど独創的な表現をしていないと、著作物とは言えないと思います。
(ソース丸ごとコピーの場合は、ページの色・デザインなど美術の著作物という部分は認められやすいが、規約部分は難しい面がある。)
また、E-mailの文書の場合、著作権は差出人にありますので、受け取った人は無断でそれを公表することはできません。(あらすじは著作物ではないので公開してもよい。ただし、人格権などに配慮は必要)

なお、文章にもよりますが、文章の全てが著作物とはいえないこともあります。
例えば、私のサイト(TDLページ)で各種のネタばらしをしている「黄色のページ」。文章は私の著作物ですが、中に書かれている「蒸気機関車やバスのメーカー」「ミッキーの家やおばけやしきの構造」などは単なるデータに過ぎないので、自分の文章で書き直せば公表することが出来ます。


・音楽の著作物
思想または感情が「旋律もしくは音」によって表現されている著作物です。(歌詞は言語の著作物)
演奏されている音楽ではなく、旋律が著作物なので、他人の著作物である曲を自分で演奏し、その音をMDに複製して無断で販売したり、MP3などを使って無断でホームページで公開することもできません。

また、「替え歌」を著作権者に無断で掲載した場合は、旋律も載せていなければ原歌詞も載せていないからセーフ、と言うのではなく、音楽の場合は旋律と歌詞は一体と考えられているので、翻案権と同一性保持権でも問題になります。


・舞踊著作物
思想または感情が「振り付け」によって表現されている著作物です。
「ディズニーランドのパレードのダンサーの振り付けを真似しよう」として振り付けをCGで再現したり、自分で振り付けのイラストを描くなどしてサイトにアップすると、舞踊著作物の著作権侵害になります。


・美術著作物
思想または感情が「線・色彩・明暗に」よって「平面または立体的に」表現されている著作物です。
絵画、版画、彫刻などは狭義の美術著作物といえ、キャラクターは広義の美術著作物といえます。
キャラクターの似顔絵を描く場合、必ずしも公表されている作品と同一または類似したポーズではないかも知れませんが、世間に一定のイメージを植え付けることで商品価値を生み出しているキャラクターの場合、この考え方が認められます。
くまのプーさんがロダンの「考える人」のポーズをとれば美術著作物の著作権侵害になりますが、ロダンの銅像が風船につかまって空を飛んでいても同権の侵害にはならないのでは。(同一性保持権で問題があるかも知れないが)

・建築著作物
思想または感情が「土地の工作物」によって表現されている著作物です。
一般的には(著作物である)設計図に基づいて 建築物を建設すること、現存する建物を模倣して建物を建てることが複製とされ、それ以外の場合(写真、サイトへのアップ)は自由に利用できるものとされています。(著作権法46条)・・模型の場合は「意匠権」「特許」などが絡むこともあります。
(学説によっては、「当該建築著作物の複製は営利目的で使用できないはずだ」というものもあります。)
一つ注意したいのは、(写真の場合)複製が自由というのは誰もが入れる場所や撮影目的の立入が認められた場所から撮影したものに限定されると言うことです。
他人の土地に無断で入って撮影すれば、刑法や民法に抵触しますし、ディズニーランドのように管理された土地から撮影する場合は管理者の意向に従うこととされています。


シンデレラ城の写真を非営利の個人サイトに掲載する場合を整理します。(写真は自分で撮影したもの)
社団法人著作権情報センターへの質問をもとに、私が解釈したところでは
・パークの敷地外から撮影したものは、シンデレラ城単体の写真でも掲載OK。
・パークの敷地内で撮影した場合、シンデレラ城単体の写真は不可。(著作権には引っかからないが、サイト掲載目的の撮影はディズニー社の見解(私権)として制限されており、それに引っかかるため)
・パークの敷地内でも、シンデレラ城をバックにした家族写真はOK。(シンデレラ城はあくまでも従であり、家族を紹介する写真にシンデレラ城が写り込んでいる場合は、家族写真であるという点が優先されるため)



・映画の著作物
思想または感情が「映像と音の連続」によって表現されている著作物です。
判例や多数説では「ストーリー性をもった映像と音の連続」ということですので、映画、テレビドラマ、テレビ番組、ゲーム画面も映画の著作物です。一方で、たまごっちの画面や、パソコンのNEW!!などの動画はストーリー性がないので、映画の著作物ではないとされています。(美術の著作物には該当します)


・図形著作物(地図の著作物)
紙幅の都合で、地図の著作物について説明します。
電話帳と同じく、地図は作成に大変な労力を要します。
しかし、配列されたデータには著作権はありませんので、そのデータを除いた部分が著作物とされます。
例えば、東京ディズニーランドのガイドマップの場合、地図の色使い、建物のデフォルメの方法、建物に付けられた番号とその説明文や配列順は著作物(美術著作物と編集著作物)となりますが、その地図からデータだけを抜き出し、自分の創造を加えて描けば描いた人の著作物となるわけです。
例えば、私の描いたこのような東京ディズニーランドの地図の場合、著作権は私にありますので、ディズニー社といえども無断で複製は出来ないわけです。



・写真著作物(撮影者の著作権より見た場合)
思想または感情が「一定の映像」によって表現されている著作物です。
「一定の映像」とは銀塩写真、デジタルカメラなど、写真の制作方法に基づいて作成された映像です
アングルの選択、光の当たり加減の選択、モデルの表情を切り取るタイミングなどが創作と認められます
他人が撮った写真を参考にして自分で同じ場所に行って写真を撮った場合、複製という証拠が無い場合は撮影した人の著作物となる一方、証明写真のような創作性のない写真は著作物と見なされない場合があります。



・プログラムの著作物
思想または感情が「電子計算機を機能させるための指令の組み合わせ」によって表現されている著作物です。


・編集著作物
「個々の素材とは別個に、その全体の構成において、その素材の選択または配列が創作性を有するもの」です。
百科事典や、文学全集、新聞、雑誌などとされていますが、当サイトの場合は「リンクのページ」などお役立ち系のページが該当します。
また、有名なテレビ番組「トリビアの泉」の場合、「ミジンコは敵に襲われるとトゲを生やす」「訓読みの訓は音読み」といったトリビアそのものは著作物ではありませんが、高橋克美氏やタモリ氏の発言、番組の演出はもちろん著作物ですし、番組で紹介されたトリビアを「WEBページで再現」すると、編集著作物の著作権侵害になります。どのトリビアを選択し、どの順番で放送するかという台本を作る行為は番組の魅力を高める上で必要な知的営みであると考えられるからです。



頒布(はんぷ)

辞書的に言うと「多くの人に分け与えること」という意味です。有償無償は問いません。
ネット上で画像を掲載すると「複製権の侵害」になりますが、次のように使用した場合は頒布にあたり、頒布権の侵害にもあたります。

・バナー バナーはネット上の慣習により、他のサイトの管理人にお持ち帰り頂くことが前提となっています。従って、ディズニーの著作物を使うと「ディズニーの画像を頒布した」ということになってしまいます。

・素材屋さん 有償無償を問わず、素材屋サイトは頒布を目的としたサイトですので、著作権の取り扱いには慎重になる必要があります。他人の著作物を無許可で大々的に配布した場合、サイトの存在意義が問われることも・・・(ディズニーの著作物の場合、頒布権侵害で個人サイトが警告を受けた例がある)

もし、他人のサイト(著作物を無断で持ち帰らせるバナーや著作物の素材屋)から著作物を持ち帰って自分のサイトに掲載した場合、利用した側は、自分で著作物を書いた場合と同じ扱いにあります。(著作物の内容の違法性が問題になる)
提供した側に関しては私も勉強不足で何とも言えないのですが、ただの掲載よりはペナルティーの度合いは大きいはずです。




私的利用

ここにあった「私的利用」の解説は補習3時間目 私的使用についてに移動しました。(別窓で開きます)




フェアユース

アメリカ合衆国の著作権法では、「元の著作物の現存ないし潜在する価値を低減することなく公共の利益を増進するとき並びに私的利用、調査研究目的には、著作物の無許諾の利用が認められ、著作権侵害を構成しない」とされる「フェアユース(Fair use)」という考え方があります。

この考え方が日本に入り、一部の人は「フェアユースの考え/精神に則り、著作物を使用しています」と称して他人の著作物を堂々と(自分のサイトに)違法掲載しているサイト管理人がいますが、この考え方は正しくありません。

というのは、日本の著作権法では「著作権侵害にならない場合」を厳密に法律で規定しているのに対し、アメリカ著作権法の場合は私的使用などを認める条項がありません。裁判所が個々に判断をし、それを積み重ねることによってフェアユースの考え方が導き出されるのです。
逆に、日本の場合は「我が国の著作権法は、著作権が制限される場合や要件が決まっており、「フェア・ユース」にあたる一般条項を定めておらず、法律の根拠のないまま訴えられた者が主張している「フェア・ユース」の考え方を適用するのは正しくない」(東京地裁平成7年12月18日民29部判決 書籍発行等差止請求事件、平6(ワ)9532号より一部抜粋、管理人が平易な文に書き改めました)という判決が出ており、著作物の扱いは現行の著作権法の範囲内で考えるしかなさそうです。

上記のサイト管理人は実質的には「黙示の許諾」(講座1時間目)に近い考え方でサイトを運営していることになりますが、厳密には法に触れる行為ですよ





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