実習1時間目
運用の現状



1時間目〜6時間目までは、法律にのっとって、一般的に正しい解釈とされているものについてお話しました。
それで終われば、格調高い、まともな講座なのですが、これがすべてというわけではありません。
これから、しゅんしゅんが法律の別の側面からの話や現実的にどうすれば良いかをお話します。
これは、あくまでもしゅんしゅんの見解であります。これでは不安、と思われる方や解釈に不満な方は読むのを中止し、1〜6時間目の内容のみを参照してサイトを運営していただきたいと思います。



運用の現状

実際問題として、著作権の侵害は親告罪(この場合は著作権者からの告発がないと、罪として立件できない)で、かつ、侵害が「実質的違法性」を備えている必要があるなど、罪として問うことは非常に難しいという現状はあります。
特に、非営利目的のサイトで、領布やダウンロードを目的としていない場合、よほど悪質なものでなければ、損害や違法性の認定に手間がかかるものです。また、可罰性があるかどうかも、判断されなければなりません。
(可罰性=刑事制裁を受けなければならない程の違法性 ≒ その程度の違反で罪になるかどうか)

分かりやすく言い直すと、現状では、単に著作物を掲載しているだけでは殆ど警告はないものと考えて良いでしょう。また、仮に警告があっても、個人のサイトでは刑法上の罪に問われることはまず、ありません。
非常に日本的な考えですが、「見て見ぬ振り」的なところがないとは言えません。
(1時間目でお話しした「黙示の許諾」とはこのことを言います
かといって、どんどん違法行為をしても良いというわけではない。)

ただ、その著作物を配布の目的のみで使用したり、著作者の(著作権以外の)権利を侵害したとなると、著作者・著作権者は牙をむき、襲いかかってきます。

例として「バナーにプーさんを使う」(バナーはみんなで持ち帰るものなので、頒布にあたる。配布は、ただ掲載するより罪が重い)「画像のお持ち帰りを目的としたサイトを作る(これも頒布にあたります)」「ディズニー以外の著作権者の権利の侵害(写真集を複製することで、出版社が持つ領布権を侵害することになる)」そして、「誹謗中傷・名誉毀損」の目的に使用すること、が考えられます。



見解の相違

ディズニー社は、著作権協会(社団法人コンピュータソフトウエア著作権協会)に著作権の管理を委託しているのですが、その解釈は、実は微妙に異なっています。著作権協会の場合、先方が例を多用して分かりやすく説明していただいたので、それを「ディズニーの画像を使った、非営利目的の個人のホームページ」にしゅんしゅんが置き換えて説明します。
なお、著作権テレホンガイドと著作権ホットライン(社団法人コンピュータソフトウエア著作権協会)では、担当者の見解が微妙に違っているところがありますが、念のため厳しい方を採用しました。また、写真撮影者とサイト管理者は同一人物として話をすすめます。
著作権関連団体の見解の一部は、他のサイトの管理人よりご提供いただきました。

 内 容  著作権テレホンガイド
著作権ホットライン
編集・・しゅんしゅん  
ディズニー社
パーク外で、子供にミッキーマウスのTシャツを着せて撮った写真 使用には何ら問題はありません  (質問せず)
舞浜駅前の橋の上から撮ったボン・ボヤージュの写真 使用には何ら問題はありません  使用しないで 
いただきたいと
思います
パーク内、シンデレラ城の前で撮った家族写真 景色には著作権はありませんので、シンデレラ城が「従」であれば問題ありません。ただし、建築著作物(パークの建物)が主となる場合は、使用できません。
トゥモローランドテラスで撮ったハンバーガーの写真 問題ありません。ただし、キャラクターなど著作物は「従」であることが必要です
ショーで、ミッキーのアップを撮って掲載 写真上でキャラクターが主であるか、従であるかによります。(ステージの景色の紹介ならセーフ、ミッキーの紹介はアウトといったところでしょうか。しゅんしゅん註)
パークで撮った写真をバナーに加工、「ご自由にお持ち帰り下さい」 頒布権の侵害になりますので、使用できません
ショーで、ダンサーのアップを撮って掲載 肖像権の侵害になりますので、使用できません
自分で撮ったミッキーのぬいぐるみの写真を加工して掲載 キャラクターが主であるので、使用できません
ガイドブックをスキャンして、サイトに掲載 出版社の著作権・頒布権の侵害になりますので、使用できません

実際、著作権を管理する著作権関連団体がOKと言えば大丈夫なのでしょうが、著作権を持っているのはあくまでもディズニー社です。この表をどう活用されるかは、利用者自身の判断でお願いします。



著作権者の意向と著作物の使用について〜著作者に直接質問すると・・・

著作物を自分のサイトで使用したい、ということで、著作権者に直接質問する方も多いと聞きます。
もちろん、無断で使用するよりは遙かに良いことのはずなのですが、実は思わぬ落とし穴が待っているのです

上記のディズニー社の例でも分かるとおり、キャラクターを保持する著作権者の中には、合法的な事でも「ご遠慮下さい」といった表現で著作物を使用させない見解を出すところがあります。
読者から相談を頂いた(著作者の)見解の文章をよく見ると、確かに間違っていないのですが、難しく書いてあったり、脅かすように書いてあったりします。
で、何も知らない人がそれを読み、びっくりしてサイトを閉めるという話も耳にします。

例えば、Aさんが「私のサイトに『ニッキーマウス探検隊』というタイトルをつけ、ニニーマウスと子供が写っている写真を載せたいのですが、よろしいでしょうか」という質問を著作権者であるビズニー社に送り、こんな返事が来たとします。
(1)ニッキーマウスは、当社が著作権を保有しているキャラクターで、その権利は法律で保護されていますのであなたのサイトのタイトルへのご使用やサイトへの掲載はご遠慮頂きたいと思います。
(2)著作物をサイトに無断で掲載すると、著作権法違反となり、500万円以下の罰金または5年以下の懲役に処せられることがあります。

自分の質問に対して、こんな文章が送りつけられてきたら、普通の人ならびっくりし、場合によってはサイトを閉めてしまうことでしょう。

ただ、私の講座の読者なら、サイトを閉めずにこんな風に考えればよろしいかと思います。
・タイトルに著作者の所持する著作物の名称を使用することはできるのか。
・サイトに掲載できない著作物、といっても著作権法の裏付けがあるものなのか、それとも著作者の単なるお願いに過ぎないものなのか。

この場合、別のページでも触れましたが、法律上の正解は次の通りです。
(1)Aさんのサイトのタイトルやサイトの形態が、ニッキーマウスの公式サイトやビズニー社の事業と関連があるように見えなくて、ニッキーマウスやビズニー社の経営の妨げにならなければ問題ありません。
読者の方がサイトのタイトルを見たり、開いたりしたときに公式サイトと誤認しなければよいわけです。従って『ビズニー社公認、ニッキーマウスオフィシャル探検隊』なんていうタイトルだとまずいです。
著作物の掲載ですが、社団法人著作権情報センターなど公的機関の見解によって、載せられるものと載せられないものがあります。(上記の表を参照)
あくまでも「お願い」としてすべての著作物をひとまとめにして「載せないで」と言っているのです。

(2)の著作権法違反の刑罰のくだりですが、これはあくまでも刑罰の紹介であり、(1)とは切り離して考えるべきでしょう。実際にビズニー社が個人のサイトもどんどん告発しているのでなければ、「(著作権法の解釈上掲載が認められている著作物を)ご自分のサイトに掲載すると刑罰の対象となる」と主張すると、それは虚偽の記述(回答)ということになり、民法上の不法行為や場合によっては脅迫罪と受け止められることも考えられます。


最終的に判断するのはあなたです
これでひと安心。画像をばんばん使ってサイトを作ろう、という前に次の点に注意して下さい。
☆ 使っている画像は本当に使ってもよい画像か。
例えば、ニッキーマウスの大写しは自分で撮影した写真でも掲載できない・・・など。

で、次に考えていただきたいことがあります。
☆ 著作者の気持ちをくみ取ろう。
法律解釈上掲載が許される画像でも著作者側が「掲載しないで」というお願いをするのは、自分たちの著作物のイメージを守りたい、という気持ちがあるからです。
つまり、本当に「著作権」を支持するのであれば、著作者の見解に従う必要があります。

例えば、ディズニー社は「ディズニー関連の画像やパーク内の画像は一切載せないで。お願い」と言っていますので、その意向に従えばサイトから完全にディズニー画像(自分で撮った「パーク内で撮影した家族写真」も含まれます) を締め出してサイトを運営することになるのです。

(私は、といえばディズニーの作品は大好きですが、ディズニー社そのもののファンではないので、合法的な範囲でディズニーの著作物を使用しています。と、いうかそのためにこの講座を開いたようなものです。)

著作者の意向に完全に従うのか、法律で認められている範囲で著作物を使うのか、判断するのはあなたです。


「撮影者の著作権」と「被写体の著作権」の実例
講談社の雑誌、ディズニーファン2001年10月増刊号の43ページに「初めての東京ディズニーシー」という記事があります。
この記事は木場弘子さん一家がTDSを体験取材するという話なのですが、旦那さん(与田剛氏)の着ている服には大きな「CAPTAIN SANTA」のマークが。この記事のどこを見てもCAPTAIN SANTA側の許諾である「(C) JOY MARK DESING CO.LTD」等の記述はありません。

もちろん、この写真や記事はキャプテン・サンタの洋服やキャラクターの紹介ではなく、TDSの紹介であるのは明らかですが、 営利目的の商業誌・.ディズニーファンでも、キャラクターの紹介を目的としたり、キャラクターの名誉などを損なわなければ 他の著作物の掲載は可能、という証拠にほかなりません。
非営利目的の個人のサイトは、営利目的の商業誌より条件が厳しいと言うことはありえないので・・・・

もちろん、この雑誌や写真の著作権は講談社(写真はカメラマンも)にあるので、キャプテンサンタの販売店で「与田剛氏も着用しています。」といった形で雑誌を掲示することはできません。






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