児童虐待防止法の施行から二十日で七年。「虐待」への関心が高まり、児童相談所や市町村への相談件数は年々増える一方だ。親子が分離される事例も増加し、全国の児童養護施設は満杯状態が続いている。
私がしばしば訪れる備北地域唯一の児童養護施設・みのり園(岡山県吉備中央町豊野)も例外ではない。昭和十〜四十年代の建物は病院のように居室や食堂、事務室などが一体となった「大舎」形式で、二〜十八歳の六十人と職員の多くが暮らす。幼児らが狭い廊下を駆け回り、職員は常に食事やトイレの世話などに追われている。
ある日の夕方、四、五歳くらいの男児に声をかけられた。「お前何しに来た?」。あどけない顔に似つかわしくない言葉。彼が育った家で常に耳にし、時には自分に向けられた“荒れた言葉”の影響だろうか。そう考えると、やりきれない気分になった。
他施設同様、被虐待児が七割以上を占める同園。「心が傷ついた子どもに、もっとゆったり接したい」と職員は言う。しかし国が示した、子どもと職員の配置定員(六対一)の基準は一九七六年から据え置かれたまま。現場では「ケアの難しい子どもの増加に対応できない」と悲鳴が上がる。
各施設ではグループホームの導入など生活単位を小さくし、家庭の雰囲気を取り入れる努力が続くが、人員配置の手薄さは自助努力の範囲を超えている。子どもにとって“家庭の代わり”となるべき施設のケアの質を、国は本当に保障できているのか―。紙面を通じて問い続けたい。
(高梁支局・神辺英明)