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社説(2007年11月17日朝刊)

[いじめ対策]

許さない校風育てよう

 全国の学校で二〇〇六年度に認知したいじめの件数は十二万四千八百九十八件に上ることが文部科学省の調査で分かった。前年度に比べ六・二倍も増えた計算だ。

 県内のいじめ件数は七百五十六件で、前年度に比べ二・一倍増えた。

 ただし、〇六年度調査からいじめの定義も調査方法も変わっており、単純に前年度と比較することはできない。

 従来のいじめの定義から「継続的」「深刻」などの条件を削除し、いじめ被害者の気持ちを重視するようにしたという。調査対象も、公立小中高校のほか今回初めて、国立・私立校を加えた。

 この数字が果たしてどれだけ実態を反映しているのか、疑わしい部分もある。都道府県によって調査の具体的な方法が異なるからだ。

 実態を正確に把握するために全国調査を実施し、調査結果に基づいて適切な対策を講じる。それはいい。しかし、この種の全国調査には、いつも危うさが伴う。

 いじめをなくすために努力するのではなく、数字を減らすことのみに力を注ぐ、という本末転倒の取り組みが学校現場で起こりかねないからだ。

 数字を減らすこと自体が目的化してしまい、現に生じているいじめに目をつぶる、ということが過去になかったかどうか。

 那覇市教育委員会が市内の中学教員を対象に実施したアンケートによると、約三割がいじめ問題の解決に「自信がない」「どちらかというと自信がない」と答えた。

 現場経験の浅い若い教員ほど、どう対応していいか分からず不安を感じているに違いない。

 責任回避の逃げ腰の姿勢では、いじめ問題に対処することはできない。かといって一人の教師にすべての責任を負わせるような方法も問題がある。

 最近、校風という言葉を聞かなくなったが、「いじめを許さない」という毅然とした校風を意識的に育てていくことが何よりも大切だと思う。

 校風というからには、教師と子どもたちの間にそれが共通の価値として共有されていなければならない。「いじめを許さない」という価値を校風として共有していくための、多様な試みが必要だ。

 今回の調査で「ネットいじめ」の一端も明らかになった。実態把握が難しく、正直なところ、匿名性や閉鎖性の故に対策も容易でない。学校だけの対応にはおのずから限界がある。これにどう取り組むか。文部科学省は、指針を示す必要がある。



社説(2007年11月17日朝刊)

[土産品適正表示]

消費者の目を忘れるな

 食品の安全性や表示に対する消費者の関心が高まっている。相次ぐ食品偽装事件は決してひとごとではない。

 不正競争防止法、日本農林規格(JAS)法などの法令の順守、適正表示を軽視して消費者の信頼を失うと、倒産にまで追い込まれかねない。

 県観光おみやげ品公正取引協議会の第五回観光土産品認定審査会が十四社の百八品目について審査した結果、三十九品が不合格商品とされた。

 原材料名、賞味期限の有無などで不適切な表示があった。栄養成分値の表示がなかったり、少量しか使用されていない原料が大量に含まれているかのような誤解を与える表示もあった。これでは信用問題にも発展しかねない。

 公正取引委員会が二〇〇二年、「過大包装」違反などで県内五社に排除命令を出したが、この五社が同協議会の再発足に尽力したという。

 協議会役員は「商品のパッケージや内容はレベルアップしている」と語っている。土産品の品質向上へ向けた業界の地道な取り組みが実を結びつつあるのは確かだろう。業界を挙げた自助努力を評価したい。

 しかし、気になるのは全体に占める不合格商品の比率が高いことだ。認定審査を受けていない土産品も少なくないのではないか。とすれば県や業界でどう対応するかという課題が残る。

 ひとたび問題が起きれば、定着しつつある「長寿」「健康」という沖縄ブランドへのダメージは避けられない。

 このところ、食肉加工販売会社「ミートホープ」(北海道)の食肉偽装、「比内鶏」(秋田)の問題、和菓子メーカー「赤福」(三重)の製造日・賞味期限の改ざん、「船場吉兆」(大阪)の偽装表示などが相次いでいる。

 問題の業者は、気の緩みなどから目先の利益優先の思考に陥り、消費者の目線を忘れてしまったのだろう。

 土産品は沖縄観光の印象を大きく左右する。食品の適正表示をめぐる一連の問題を受け、消費者の目は一段と厳しくなっている。今後は不合格商品をゼロにしていく取り組みが必要だ。


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