2007年11月18日放送
大橋巨泉さん
有吉玉青さん(作家)
フェルメールの最高傑作と言われる「牛乳を注ぐ女」が、日本で初公開されている。柔らかな日差しが射し込む部屋で、女性が器に牛乳を入れているという何気ない光景を描いた1枚。見る者をとりこにする魔法のような作品の魅力はどこにあるのか?大橋巨泉さんは、女性の表情に注目する。牛乳を注ぐことだけに集中しているその表情には、一切の迷いやぶれがない。そこに、フェルメールの女性に対するあたたかな眼差しを感じるという。フェルメールほど、女性が日常の一瞬にかいま見せる姿に美しさを見いだした作家はいないのではないかと考えている。 有吉玉青さんは、絵に描き込まれた細部にこそ美しさがあるという。壁に打ち込まれた小さな釘の影までかいていたり、窓ガラスが割れて光がもれている様を、色合いの違いで絶妙に表現していたり・・。ひとつひとつの細やかな描写が、これ以外にないと思わせるほど圧倒的な存在感を放つのは、リアリズムを追求したのではなく、見る者が一切の疑問を抱かないような説得力を隅々に持たせるためだったのではないかと考える。今回は、檀ふみさんもゲストの一員として参加。フェルメールと同時代の17世紀オランダ絵画との比較も交えながら、「牛乳を注ぐ女」を通して、希代の画家が絵に込めた思いを読み解いていく。
フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展
会場:国立新美術館(東京・六本木)
会期:12月17日まで
『牛乳を注ぐ女』
1658〜1659頃
ヨハネス・フェルメール
アムステルダム国立美術館