【ニューヨーク斉藤信宏】トヨタ自動車の張富士夫会長は14日、ニューヨークで講演し「海外進出する際に最も大切なのは、相手の話にしっかり耳を傾けて文化の違いを理解しようと努力することだ」と企業の国際化に関する持論を展開した。
張会長は、米ケンタッキー州にある同社工場で、87~94年まで約7年間社長などを務めた。日米貿易摩擦の激しかった時期に重なり、摩擦回避のため工場の現地化に苦労した経験を持つ。張会長は社長時代に、1年間皆勤だった社員を表彰した際の逸話を披露。「たくさんいた皆勤社員の中から抽選で10人にトヨタの乗用車『カムリ』をプレゼントした。私は不公平になると反対したが、米国人幹部がこぞって賛成したので従ってみると、社員に大好評だった」と述べ、地元の意見に従うことの大切さを説いた。
また「米国人は機会が均等なら結果が不平等でも満足する。日本人は結果の平等を求めがちだ」と、日本社会のあり方をちくりと批判した。
「トヨタ方式」と呼ばれる製造工程は米国でも浸透しているが、張会長は米国人社員が「アイ・カイゼンド・ディス・マシン」などと「カイゼン」という言葉に過去形を示す“ed”を付けて動詞として使っている話を披露。「トヨタ方式が受け入れられたことを実感した」と振り返った。
毎日新聞 2007年11月15日 18時41分 (最終更新時間 11月15日 22時38分)