【パリ福井聡】スペインのバレンシアで開かれていた国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第27回総会は17日、地球温暖化に関する第4次統合報告書を採択して閉幕した。国連の潘基文(バン・ギムン)事務総長は会見で「世界の科学者は一致して、その考えを示した。各国の政策決定者が、12月にバリで開かれる国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で同様に行動することを期待する」と、次は政治が温暖化阻止に向けて動くべきだと強調した。
報告書は、海面上昇が今後数世紀にわたって続き、地球温暖化が広範囲にわたる回復不能な結果をもたらす恐れがあると警告。経済・政治的に弱い人々が、温暖化の影響を最も受けやすいと指摘した。以前の推定よりわずかな気温上昇で、より大きなリスクが生じるとしたうえで、特に影響を受ける地域として北極、サハラ砂漠以南のアフリカ、小島嶼(とうしょ)、大規模デルタ地帯を列挙し温暖化の危険を明確に訴えた。
一方、温暖化の被害軽減策について「今後20〜30年の努力と投資が、長期的リスクの低減や回避、遅延の度合いを決める」と主張、人類の取り組みによる回避策の道筋を示した。温室効果ガス削減効率の低い工場や発電所はいったん建設されると影響が長期に及ぶため、早期に高い効率のものを建てることなど、望ましい具体策を挙げた。さらに、より早い対策がコスト軽減につながると明記。最も厳しい排出削減策でも、経済的損失は世界平均で年間0.12%以下の国内総生産(GDP)成長率低下にとどまると推計した。
報告書は90年、96年、01年に次ぐ4回目。各国政府が承認した23ページの「政策決定者向け要約」と約70ページの本編で構成される。今年2〜5月に公表された三つの作業部会報告を基にしている。
来月3日に開幕するCOP13では、今回の報告書を「共通認識」として、京都議定書に規定のない13年以後の排出削減策の国際交渉が始まる見通し。潘事務総長は「気候変動の危機はわれわれに立ち向かう最大の挑戦で、世界は破局のふちに立たされている。報告書はわれわれすべてに『気候変動に対処する真の方策がある』とのメッセージを携えており、バリ会議に向けた突破口となる」と述べた。
【ことば】◇気候変動に関する政府間パネル(IPCC)◇ 科学、影響、対策の三つの作業部会に分かれ、地球温暖化について最新の分析をまとめる国連機関。130カ国以上から約4000人の専門家が参加し、科学的な知見を評価して確度の高い情報を提供。温暖化をめぐる各国の政策に影響を及ぼしている。最初の報告書は90年で、今回が4回目。「地球温暖化の知識を広め対策を促した」として、今年のノーベル平和賞にアル・ゴア前米副大統領と共に選ばれた。
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