福岡県筑前町で三輪中学校2年の森啓祐君=当時(13)=が昨年10月、いじめを苦に自殺してから11日で1年を迎えた。この日、遺族は啓祐君のことを忘れまいと自宅の庭に桜を植樹。同中学校では全校集会が開かれ、生徒たちは啓祐君の冥福を祈り、再発防止の決意をあらたにした。

 桜が好きだったという啓祐君。春だけでなく、啓祐君が亡くなった秋にも花を咲かせる「10月桜」を家族で選んだ。「桜が育つ姿に息子の成長を重ねたい」という両親の願いも込められている。

 啓祐君が最期を迎えた自宅倉庫のそばに、父順二さん(41)と母美加さん(37)が苗木を植え、土をかぶせた。すでに何輪かが咲いており、美加さんは「啓祐が夢と希望を抱いて三輪中に入学した日、学校そばの桜並木を一緒に歩いたことを思い出す」と、当時を振り返った。

 両親はこの桜を「響(ひびき)の樹」と名付けた。「互いに心と心が響き合う世の中になってほしい」との思いが込められた「響(きょう)存(ぞん)院(いん)」という啓祐君の法名にちなんだという。

 順二さんは「将来は、いじめ撲滅の思いを共有できる人に桜の枝を接ぎ木してもらい、二度といじめが起きないことを願う私たちの思いを広げていってほしい」と話した。

=2007/10/11付 西日本新聞夕刊=