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「吉兆グループ」に広がる波紋、宴会のキャンセルなども

2007年11月17日

 高級料亭「船場吉兆」(大阪市)の表示偽装事件が、吉兆ののれんを使うグループ4社に波紋を広げている。厳しい批判を浴びせる得意客への対応に追われ、宴会や結婚式のキャンセルも出始めた。16日の大阪府警の本店捜索後も固く口を閉ざす船場吉兆経営陣に対し、創業者一族からは「もう吉兆の名前を使ってほしくない」との声も上がっている。

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 「船場とか京都とか言っても、客からすれば同じ吉兆じゃないか」「他の吉兆にも責任の一端があるのではないか」

 船場吉兆が福岡市の百貨店「岩田屋」に出店する「吉兆天神フードパーク」で消費期限が切れた菓子を売っていたことが報じられた10月29日以降、京都吉兆(京都市右京区)には得意客から批判や苦情が入るようになった。

 京都吉兆は、創業者の故湯木貞一氏(97年、95歳で死去)の次女の夫が設立。嵐山本店のほか、京都や名古屋に計6店舗を構える。貞一氏の孫にあたる総料理長の徳岡邦夫さん(47)は船場吉兆の問題発覚後、ブログにこう書き込んだ。「同じ名を冠する企業同士、もっと密な連携を取り、安心と安全が最も大切な『食』というものに対する意識や態勢を共有しておくべきだった」

 市保健所から品質管理などを調べられたが、賞味期限や産地表示に関する指摘はなかった。しかし、嵐山本店で宴会2件、リーガロイヤル京都店(京都市下京区)で婚礼2件の予約がそれぞれキャンセルされた。

 「めでたい席をキャンセルさせたのは申し訳ない」。徳岡さんは怒りよりも客に迷惑をかけたことを悔やむ。おせちやお歳暮の販売は例年の半分になる見込みで、「船場には、もう吉兆を名乗ってほしくない」と憤った。

 船場吉兆の表示偽装に対し「知識がなかったではすまない」と突き放すのは、貞一氏の長女の夫が設立した東京吉兆(東京都中央区)の湯木義夫取締役(51)。船場吉兆が岩田屋に出店することは、一族が定期的に開く「経済会議」で聞いていたが、委託生産の黒豆プリンの販売は知らなかったという。

 問題発覚後、鶏肉のみそ漬けや瓶詰などの原料について産地証明書を改めて取り寄せ、問題がないことを確認した。料亭への影響は「ない」としながらも、歳末用ギフトに関しては「吉兆の名がつくものを贈答品にするのをためらうかも」。船場吉兆には「せめてどう作るかにはこだわってほしかった」と話した。

 貞一氏の長男が引き継いだ本吉兆(大阪・高麗橋)や、同氏の四女の夫が経営する神戸吉兆(大阪・中之島)にも「お宅は大丈夫なのか」などの問い合わせが相次ぐ。

 互いの経営には口出ししないという慣習を改める時期にきている――。創業者一族が役員に名を連ねるグループ統括企業「吉兆」(大阪市)は来月、一族を集め、船場吉兆をグループからはずすことの是非や、各吉兆の品質管理の基準のあり方を話し合う予定だ。

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