税金を原資とした政党助成制度がスタートした95年以降、自民党本部から、党の幹部職員や現職議員が役員を務める株式会社3社に事業を発注し、計97億円の政党交付金(助成金)が支払われていたことが毎日新聞の調べで分かった。事実上の「身内」に多額の税金が流れ込んでいながら党本部と会社側は具体的な業務内容を明らかにしておらず、高い透明性が求められる政党交付金の趣旨に反するとの批判も出ている。
3社はいずれも自民党本部に近い東京都千代田区に本社事務所を置く▽広告代理店「自由企画社」▽世論調査会社「日本情報調査」▽データ管理会社「システム収納センター」。
政党交付金使途等報告書によると、自由企画社には06年までに「宣伝広報費」「筆耕翻訳料」などの名目で計85億円が投入された。同社は73年、橋本登美三郎幹事長(当時)の提唱で党機関誌の広告を取り次ぐ党直属の代理店として設立。現在は元宿仁・自民党事務総長のほか、元党事務局長らが取締役を務める。
同社は「広報企画アドバイザーとして、また広告会社とのトータルコーディネーターとして業務を行っている」と説明したが、売上高や従業員数などは「従来から答えていない」としている。
約11億円が支払われた日本情報調査は宮路和明経理局長(衆院議員)らが代表取締役、元宿氏らが取締役を務める。03年に設立され業務はコンピューター電話システムによる世論調査とされる。
システム収納センターは77年に設立。01年から「賃料、借料」名目で交付金が支出されるようになり、06年までの総計は8700万円。同社は「党関係のデータ管理やシステム設計などの業務を行っている」とだけ説明する。代表取締役は宮路氏と党事務局長経験者。福田康夫首相も党経理局長だった99年に取締役に就いたことがある。両社も売上高や従業員数は明らかにしていない。
3社は党職員や議員と兼務している役員は無給という。党幹事長室は文書で「収支は収支報告書の記載のとおりであり、詳細は、わが党の広報戦略、選挙戦略にかかわる事項のため、従来よりお答えしておりません」と回答した。06年の政党交付金支給総額は約317億円で、自民党には168億円が交付されている。【日下部聡】
▽政治資金オンブズマン共同代表の上脇博之・神戸学院大大学院教授の話 党の見解は説明になっていない。民間会社とはいえ、党と密接な関係があるのだから、例えば「こんなポスターを作った」などと具体的に使途を説明するのが国民への義務ではないか。できないなら交付金は国に返還すべきだ。説明できなければ、別の目的に流用しているのではないかと疑念を招く。
【ことば】◇政党交付金(助成金)◇ 企業献金への依存を抑えることを目的に、公費で政党活動を支援するため95年に始まった。すべて税金のため、寄付などによる「政治資金」と違い、事務所費についても5万円以上の支出は収支報告書に内訳の記載と領収書添付を義務付けるなど、より厳しい使途公開が求められている。国民1人当たり負担額は年250円。各政党の議員数と得票数に応じて配分する。06年度の総額は約317億円で、自民168億円、民主104億円など。自民党は収入全体のうち64.4%、民主党は83.8%と依存度は高い。共産党は制度に反対し受けていない。
毎日新聞 2007年11月18日 2時30分