アメリカを訪問中の拉致被害者の家族会と国会議員らが、6か国協議を担当するヒル国務次官補に面会し、北朝鮮のテロ支援国家指定をアメリカが解除しないよう要請しましたが、ヒル次官補は、大統領が決めることだと回答を避けました。
 「テロ支援国の指定解除には拉致問題の解決がなければ駄目だと、北朝鮮に伝えるという風に言ってほしかったが、それは逃げられました」(拉致被害者家族会 増元照明 事務局長)
 
 ヒル国務次官補に初めて直訴した後、拉致被害者の家族会と拉致議連の一行は落胆の色を隠せませんでした。ブッシュ大統領が「一番、心に残る出会いの1つだ」と振り返る横田早紀江さんとの面会。
 
 「(北朝鮮は)愛する家族を引き裂く、心無い国だ」(ブッシュ大統領)
 
 あれからわずか1年半。事態は家族の思いとは逆の方向に動いています。「テロ支援国家指定」。アメリカ国務省のホームページを見ると、その説明には12人の日本人が拉致されたと書かれています。しかし、今年9月の米朝協議でヒル国務次官補とキム・ゲグァン外務次官は、北朝鮮が今年中に核施設の無能力化などを行えば指定を解除するという暗黙の約束を結びました。
 
 「ブッシュ政権は、結果を出すために北朝鮮の要求を聞き入れることが必要だと判断したのです」(プリチャード 元・朝鮮半島和平担当大使)
 
 第1期ブッシュ政権で北朝鮮との交渉役を務めたプリチャード氏は、現政権が対話路線に転じたことで指定解除という交渉カードを切ったのだと説明します。
 
 「政策を転換したブッシュ政権は、それが成功である事を示す必要があった。北朝鮮は、その弱みをわかって足元をみている」(プリチャード 元・朝鮮半島和平担当大使)
 
 家族会との会談でヒル次官補は、指定解除は北朝鮮から譲歩を引き出す手段だと話したと言います。しかし、彼の言う北朝鮮の譲歩とは拉致問題の進展ではありません。
 
(Q.家族らにどんな説明?)
 「北朝鮮に会う度に、拉致問題は我々にとって重要で、もっときちんと取り組む必要があると伝えていると説明しました」(ヒル国務次官補)
(Q.家族らの懸念は払拭できたと思うか?)
 「わからない、彼らに聞いてください」(ヒル国務次官補)
 
 「『大統領が決める』あるいは『私は意見を言うだけ』。なんとなく強い意志がうかがわれなかったというのが実感です」(拉致被害者家族会 飯塚繁雄 副会長)
 
 1年半前、ブッシュ大統領は横田めぐみさんの写真を、「ここに一緒にいるように」と自らテーブルに立てかけたと言います。その同じ執務室で16日、福田総理が初めての日米首脳会談に臨みます。ブッシュ大統領がテロ支援国家指定の解除についてどのように説明するのか、また、福田総理が日本の立場をどう訴えるのか。拉致被害者家族を始めとした厳しい目が注がれています。(16日18:05)