
荒舩:土屋圭市さんといえば、ドリフトキングとして有名ですが、今年はハリウッドデビューをされたとお聞きしましたが。
土屋:釣り人の役で出演しました。最初はテクニカルディレクターで、主役の代わりに吹き替えでハンドルを握るだけの仕事だったのです。そのうちに、監督がおまえも出てみたらということで、釣り人になってしまった。ドリフト選手権(D1グランプリ)人気があるからできた映画ですね。
荒舩:レーサーとしては、引退なさってますが、車のハンドルを握ることはあるのですか。
土屋:雑誌やビデオの仕事が現役時に6本だったのが、引退後には10本になっているので、毎週どこかのサーキットを走っています。ビデオの方も毎月新しいのが出ています。

荒舩:レーシング場とは別に、プライベートで運転することはあるのでしょうか。
土屋:街中の運転は嫌いなんです。渋滞が多くて。都内はマネージャーが運転してますね。渋滞だらけで、おまけに危ない。
渋滞はテンションを下げさせます。止まって動いて、ちょっとしてまた止まって動いてというのが、人間の体にメモリーされてしまい、そのリズムが狂った時に追突事故を起こしてしまうのです。15m走り、止まる。また15m走り止まる。次に15m走ると思っていると、5mで止まらなければならない状況になる。そんな時が一番危ないんですよ。都内はほとんどがそんな状態です。
郊外から、都心に入ってくる箇所が全部そんな状態ですね。高速を降りて、出口付近から抜け道を行くと、皆さんカーナビを使っているので、皆同じ所に集中してしまいます。その付近が特に危なくなっています。安全という意味では高速の渋滞の方がまだ良いかもしれない。
一般道に降りて、抜け道だと、そこは生活道路です。子供やお年寄りがいる、自転車が走っているわけですから危険がすごく大きいんですね。

荒舩:渋滞回避のために車が生活道路に入り込んで事故を起こすケースが増えているわけですね。そうしたことを解消するために、中央環状線、外環道、圏央道の3環状の整備が進められています。
土屋:外かんが整備できたときにはすごく喜びました。東北自動車道や常磐道から渋滞を避けながら都心にアクセスできるようになりましたからね。急がば回れとも言いますよね。
東京の道路がどうして混んでいるかというと、通過するだけの車が多いからです。
通過交通が無くなると、生活道路への流入が減る。それと共に、CO2の排出量が減少して、環境のためにもなるわけですね。スムーズに走っている時と比べると、止まったり走り出す時のCO2の排出量は何倍にもなりますから。
荒舩:3環状によるCO2の減少は、東京都全体が森になったのと同じぐらいの効果といわれています。
土屋:それはすごいですね。計画図を見ると、この整備計画はめちゃくちゃ良いです。
道は、クモの巣状に繋がっているのが理想的なのです。都心部を通過しなくても、どんな風にでも迂回して走ることができる。それに近いすばらしい計画ですね。
これができたら、快適に走れそうじゃないですか。ベストな道になります。都内に用事がある人には渋滞がなくなり、楽に走れるようになるでしょう。
道路は、流れるというのが一番大切です。流れないと、空いている方へ逃げようとして脇道に入っていく。脇道に入ると事故が増えていくという悪循環になってしまいます。
環状道路が早く実現するといいですね。もっと早くやって欲しかったと思うくらいです。そうしたら自分でも、ステアリングを握りますよ。
街中の運転は嫌だと言いましたが、夜中は運転しています。渋滞の無いところは運転してもストレスがないですから。

荒舩:渋滞を好きな人はいないと思いますが、レーサーをなさっていたので特にそうなのでしょうね。
土屋:スピードではないんです。40km/hでも60km/hでも快適に流れているというのが、人間の本能に対して気持ち良いのではないでしょうか。止まって、動いて、止まって、動いてはストレスを増大させます。この3環状の整備ができたら、かなりの渋滞が解消するんじゃないでしょうか。
気持ち良く走る条件は道路整備ですね。あと10年ぐらいでできるのですね、早くできないかな。すごく楽しみですね。

荒舩:土屋さんは、世界中で活躍ですが、諸外国の道路事情はどうでしょうか。
土屋:一番進んでいるのはフランスです。ほとんどの高速が繋がっています。ドライバーは渋滞を迂回しながら走れるので、どんなに混雑していても車が止まらずに流れているんですね。それに、パリ市内では大型車を見かけることがありません。東京都内はトラックだらけですがパリには乗用車しかない。パリ中心部を車が通過しないように整備しているからです。ですから街中の風景が映画みたいできれいです。
北京には、さきごろに行って来たのですが、バイクは見かけるけれど車が少ない。最初は、車がないのかと思っていたのですが、理由は道路網の整備だったのです。北京の道路網の構造はすごいです。中心を迂回してどっち回りでも行ける。朝夕の渋滞もなく、どこに行くときでも全く渋滞はありませんでした。

荒舩:世界の道路事情をお話しいただきましたが、今後道路サービスについてご意見はおありですか。
土屋:3環状のような道路整備ができるなら、どんなことでも協力したいと思います。
東京都内に用事のある人には便利。用事のない人は、都心を避けて行く。渋滞がなくなるので、生活道路を抜け道にすることがないので安全になるという3つの幸せをつくる道路です。
これからの東京は、道路整備と環境意識の両方を整備することが必要ですね。
完成すれば、現在のフランスの道路より良くなります。フランスの高速は、2、3カ所繋がってないところがありますから、東京の道路が一番になりますよ。
荒舩:レーサーの立場からドライバーにメッセージをお願いします。
土屋:今は車がなければ生活できない時代です。特に、やらないで欲しいのは飲酒運転です。車は便利なものですが、すごく危ない凶器にもなると認識してください。車に乗る方も、道を歩く方も、お互いが幸福になるように努めたいよね。

荒舩:土屋さんは車とのお付き合いは長いと思いますが、車への思い、またこれからの夢などお聞かせください。
土屋:中学生の頃ですが、高橋国光さんがスカイラインGTRで富士スピードウエイを走っているのを見てカッコイイと憧れました。それで、家の車を敷地内でちょっとイジッたのが最初です。
高校は工業高校の自動車科、18歳で免許を取ってからは地元で走っていました。碓氷峠デビューはけっこう遅くて24歳の頃です。
その後プロのドライバーになって、回りの人たちの協力で大舞台を用意してもらえた。
高橋国光さんと組んで優勝した時は夢のようでした。鈴木亜久里と組んでも優勝できたし、どちらもラッキーでした。憧れの人と一緒に優勝を経験できて、すごく幸せな人生です。
これからは、D1グランプリをもっと大きくしていくのが目標です。アメリカやヨーロッパでも開催していますが、D1をF1グランプリのような大きなイベントにしたいと思っています。
イギリスのBBCをはじめ、世界中のメディアから取材が来ています。世界が注目してくれているのは、本当に嬉しいですね。
日本発のD1グランプリを応援して頂けると幸いです。 |
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ドリフト走行を多用するドライビングスタイルから、ドリフトキング(通称ドリキン)と呼ばれ、さまざまなフィクションのモデルともなっているレーサー。1977年の富士フレッシュマンレースでデビュー。その後日本のトップドライバーの一人としてレーシング界を牽引。1995年にはル・マン24時間レースのGT2クラスで優勝。1999年のTOYOTA GT-ONE TS020で総合2位。レーシングドライバーの他にも、ビデオマガジンのキャスターやラジオのDJを努めるなど、幅広いタレント活動を展開。現役引退の翌年、2004年からは全日本GT選手権(現Super GT)の監督を務めている。現役時より、D1グランプリの審査委員長として、D1を世界的規模のイベントにすべく奔走。本年9月に日本公開のハリウッド映画「ワイルドスピードX3 TOKYO DORIFT]では俳優としても出演。
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フリーアナウンサー
埼玉県出身、元テレビ埼玉キャスター。
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※埼玉新聞 朝刊 2006年11月16日5面
特集「ドリフトキング」土屋圭市のカーライフ より記載
※写真は埼玉新聞社提供 |
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