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発行周期:不定期 最新号発行日:2007/11/17 最新号発行部数:2145 マガジンID:0000101909 個別ページ
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太田述正コラム#2124(2007.10.14)
<海自艦艇インド洋派遣問題(続)(その6)>(2007.11.17公開)

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<バグってハニー>

>また、これに関連し、「ときわ」が、ペコスに補給したのと同じ日に米イージ
ス艦ポール・ハミルトンにも燃料を直接提供しており、 そのペコスがイラク戦争
に参加した可能性があるという指摘もなされており、防衛相は、そのポイントは、
ポール・ハミルトンが巡航ミサイルのトマホークを搭 載していた艦艇なのかどう
かだとして、その点を米側に照会したいと国会で答弁しました・・。 

 ポール・ハミルトン、イラク開戦時にトマホーク発射してますね。 
 第五艦隊の“消えた”ウェブページから 
http://nofrills.up.seesaa.net/image/5th-oif.png 

On March 21, the night of "shock and awe," 30 U.S. Navy and coalition 
warships launched more than 380 TLAMs against significant, real-time 
military targets of interest. The U.S. ships which launched Tomahawks 
were USS Bunker Hill (CG 52),・・・ USS Paul Hamilton (DDG 60),・・・USS
 Cheyenne (SSN 773) and two Royal Navy submarines, HMS Splendid and HMS
 Turbulent. 
−−− 

 まあ、先生的にはトマホークを発射してようがしてまいが関係ない、というこ
となんでしょうが。給油から一ヶ月近くたった艦艇の作戦行動を縛ろうとするな
んておこがましいですよね。

<太田>

 長々と神学論争にお付き合いいただき、恐縮です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
4 終わりに代えて

 (1)神学論争

 政府と民主党の間の神学論争が延々と続いています。
 政府は、海自が2001年12月から今年8月末までに実施した給油は11カ国に対し
計777件(計約48万4,000キロリットル)で、米国向けが全量の約80%を占める。防
衛省はこのうち対イラク作戦に参加した米英両国分を中心に、テロ特措法に反し
た目的外使用がなかったか各国に問い合わせ、その根拠となる航海日誌などの米
国等から提供を受けた資料を精査し、その結果「概括的に転用はない」(政府高
官)と結論付け、今週後半にも公表する(
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007101301000542.html
。10月14日アクセス)のだそうです。
 日本政府が苦労するのは身から出た錆ですが、こんな馬鹿馬鹿しい作業に付き
合わされ、口裏合わせまでさせられた米国政府等には衷心より同情を禁じ得ませ
ん。
 米国防総省の諮問機関・国防科学委員会のウィリアム・シュナイダー委員長は
10日、燃料の使用目的については、「米国はイラクでの攻撃作戦とその支援には
使っていないと保証できるだろう」としながらも、「空母への給油の場合、艦上
から飛び立ったE2(早期警戒機)がインド洋上でイラク関連情報を探知すれば、
イラクの戦場へ伝えないとは言えない」として、厳密な区分は作戦上の各国の関
係を困難にするとの見解を示しました(
http://mainichi.jp/select/world/news/20071014k0000m030104000c.html
。10月14日アクセス)。
 言うまでもなく、この発言の前段は口裏合わせの結果に従ったものであり、後
段がホンネです。
 この問題の核心は、政府・自民党の安全保障政策のホンネとタテマエが乖離し
ている上に、何がホンネであるかについても、実のところはっきりしていないこ
とです。
 これは、政府・自民党の安全保障政策が一貫して、米国の要請(指示)と世論
との板挟みの中で落としどころを探す、というものであったところから来ていま
す。
 
 平行して、民主党内でも神学論争が続いています。
 そこへ小沢代表が、日本がアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)の活動
に参加することの是非を巡り「どうしても嫌だと言うなら離党するしかない」と
論争打ち切りを宣言を行い、波紋を呼んでいます。
 しかし、論争打ち切りとはいきそうもありません。
 「左」からは「(憲法で禁じられた)国権の発動にあたらないというのは無理
がある」(枝野幸男・元政調会長)等の声が、「右」からは「<国連中心主義に
ついても>安保理常任理事国の中国やロシアが『うん』と言ったり棄権したもの
しか安全保障的な動きができない」(前原誠司副代表)との声が出、ますます論
争はヒートアップしてきました。
 こちらの問題の核心も、民主党が昨年12月に決めた「政権政策の基本方針」に
しても、国連活動へ積極参加する主体が自衛隊なのか、小沢氏の持論である自衛
隊とは別の「国連待機部隊」なのか、具体的言及がないことが象徴しているよう
に、民主党にいまだに党としての明確な安全保障政策がないことです。
 (以上、事実関係については、
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071013ia23.htm
(10月14日アクセス)による。)

 私に理解できないのは、国会で誰も燃料を無償で提供していることを問題にし
ていないことです。
 そもそも世界の議会の原点とも言うべきイギリス議会は、国王(行政府)を戦
費の承認の是非を通じてコントロールするものであった、ということを肝に命じ
て欲しいものです。

 (2)神学論争をやっているヒマはない

 それにしても、政府は、豪州・インド・インドネシアに対しては、自由民主主
義同盟の結成を呼びかけ(
http://www.ft.com/cms/s/0/87e194aa-6b95-11dc-863b-0000779fd2ac.html
。9月26日アクセス)、自衛隊には、現在伊豆大島東方海上で実施中の大量破壊
兵器拡散阻止構想(PSI)に基づく7か国合同の海上阻止演習「パシフィックシ
ールド07」へ参加させた(
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071013ia26.htm
。10月14日アクセス)というのに、政府や民主党はこれらの落とし前をどうつけ
るつもりなのでしょう。
 海自補給艦から外国の艦艇への給油すらできないということになれば、自由民
主主義同盟なんて絵に描いた餅以下の話になってしまいますし、自衛隊だって宝
の持ち腐れになってしまいます。
 シュナイダー氏は、日本に以下のような苦言を呈しています。
 「給油活動<は>1999年の日米防衛指針(ガイドライン)関連法成立後の・・
日本の大きな政治的変化の産物・・だと評価<しているところ、>・・問われて
いるのはその変化が長期的なものなのか、それとも一部の政治指導者の時代に限
ったものだったのかということだ・・。控えめな給油活動も続けられない<とい
うの>なら、・・米国と日本、豪州<等の国々>で21世紀の新たな同盟構造を模
索しているが、日本にいかなる関与を期待できるのか疑問をもたらす・・さらに
、・・日本が安全保障上の役割を受け入れることが困難なら、なぜ・・国連安保
理常任理事国・・になる必要があるのか」(毎日前掲)と。
 神学論争をやっているヒマはないのです。

 (3)私の提言

 私は、インド洋でこれまで実施してきた無償の給油活動は止めさせ、その代わ
り、海自艦艇をOEF-MIOの一環としての海上阻止行動の本体に参加させることを
提言します。
 ただし、インド洋派遣自衛艦には補給艦を随伴させることとし、他国が給油を
求める時はこれに応じてもよいが、あくまでも有償(原価)で提供することとす
るのです。
 もっともそうなれば、ほとんど給油を求める国はなくなると思いますが・・。
 これは、民主党が小沢下ろしを行った上で、この案で党内コンセンサスを形成
することが前提になります。
 こうでもしない限り、民主党は再び世論から見放されることでしょう。
 (私は、ISAFへの参加は、自衛隊関係の法整備が十分でない現状においては、
隊員にとってリスクが大きすぎるので差し控えるべきだと思っていることを申し
添えます。)

(完)
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