◇「安心してお産と子育てができる地域をつくる住民の集い」世話人・片桐直希さん(62)
「安心して、産んで、育てて、死んでいける。そんな地域環境を作っていきたい」。産科医を介在せず、助産師と母親だけの出産を取り扱う「バースセンター」の設立運動を地元・上田市で展開している。
お産に興味を持ったのはおよそ2年前。医師不足で廃院の危機に直面していた上田市産院で、孫が誕生したのがきっかけだった。「出産のことなんて興味がなかったが、孫の誕生で考えが変わった」
助産師による出産に積極的な産院の医師と知り合い、熱っぽく語るその医師のまなざしに感化された。折しも、産院問題で「選ぶ出産」を望む母親たちが同市を中心に存続を訴えて署名活動をしている時だった。
今年6月、出産に関する講演会を開いた時、母親から「病院での出産は機械的で精神的な負担が大きい」「温かみがある環境で、安心して子供を産みたい」などという切なる思いを聞き、胸が高鳴った。9月には、上田をはじめ周辺自治体の住民約40人で、母親が願う、安心してお産ができる環境づくりを目指して会を設立した。
合わせて、「バースセンター設立」を県や上田市に求める署名活動を始めた。現在、約2万人分が県内全域から集まっているという。「母親たちの切なる願いがなぜ行政には分からないのか。少子化対策を含め、出産がいかに重要であるかを訴えたい」と力を込めた。【川口健史】
毎日新聞 2007年11月17日