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連載・特集

いのち見つめて 地域医療の未来
 第6部 医療と向き合う

 多忙を極める医療現場。過剰労働に耐えかねて辞めるスタッフは少なくない。患者の理不尽な要求や心無い言葉に神経をすり減らすケースも多く、医療従事者が抱えるストレスは増えている。医療をテーマにした年間企画の最終章第6部では、限られた医療資源を有効活用し、現在の医療環境を維持するために、患者側も考えなければならない課題を整理する。

2007/11/17の紙面より
(28)病院と診療所使い分け

かかりつけ医活用

病院と診療所の機能を理解して使い分けなければ、今の医療環境を保てなくなる可能性もある=鳥取市的場1丁目の鳥取市立病院
 殺到する軽症患者の対応に悩む総合病院は多い。鳥取県立中央病院(鳥取市江津)の院長、武田倬は「高度な医療も救急も、軽症でも重症でもいつでも診てほしい。それは正直な欲求かもしれないけど、それでは病院はやっていけない」と受診抑制への理解を求める。

 武田が着任した二〇〇二年、外来はちょっとした風邪などの軽症患者と専門治療が必要な患者でごった返していた。外来患者は毎日のように千人を越えていた。手術に人手が回せない。入院患者への対応がどんどん遅くなる。抑制しないともう回らなかった。

 救命救急センターを持つ急性期病院。高度医療を提供しつつ、私立病院では採算が合わない診療科目も引き受ける。「できるだけ入院患者さんに特化した治療をしなければならないのです」

 外来は午前だけにし、新患は原則として他の医療機関からの紹介だけ受け付けることにした。反発は激しかったが、ここ最近は一日七百五十人程度まで落ち着いてきた。

開業医との連携

 一方で総合病院は開業医との連携強化を進めている。鳥取県東部医師会でもかかりつけ医の紹介事業に取り組んでいる。理事の乾俊彦は「病院と診療所の連携で、かかりつけ医を活用した方が効率的」と強調する。

 診療所で診察を受けて専門的な診断が必要な場合、総合病院に紹介状を持って行く。外来での待ち時間は少なく、たまたま行った日に目当ての専門医がいないということもない。適切な科に直接到達できる。しかし、乾は「そうした利点がなかなか住民に認識されていない」と嘆く。

総合医の概念

 昔に比べてかかりつけ医の概念が薄れた理由として、総合病院の方がスタッフや設備が充実しているという「大病院志向」のほか▽地域での人間関係の希薄化▽オフィス開業−などが挙げられる。核家族化や転勤族の増加で、かかりつけ医と接する機会が少なくなった。一方、街中でも自宅は郊外という開業医が増え、時間外の診療を受け付けない傾向が見られる。

 医療の役割分担が進む中、かかりつけ医の重要性が見直されている。国は高齢者の在宅医療を推進するために「総合医」の概念を打ち出した。病院の専門医や介護施設と連携しながら、普段は開業医が在宅医療や生活指導を受け持つ。この方がトータルでは医療費を抑制できるとする。

 医療資源を「浪費」しないためにも医者への上手なかかり方が求められている。病院と診療所の機能分担と連携は、患者の症状に応じて最適な医療を素早く受けられる道筋といえる。

 県立中央病院長の武田は訴える。「皆さんが良い医療をいつでも受けられる環境にずっといたいと願うのであれば、現状や制度を理解して、私たちと一緒に地域医療を守ってほしい」(敬称略)


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