|
いのち見つめて 地域医療の未来 第6部 医療と向き合う
2007/11/17の紙面より
かかりつけ医活用
武田が着任した二〇〇二年、外来はちょっとした風邪などの軽症患者と専門治療が必要な患者でごった返していた。外来患者は毎日のように千人を越えていた。手術に人手が回せない。入院患者への対応がどんどん遅くなる。抑制しないともう回らなかった。 救命救急センターを持つ急性期病院。高度医療を提供しつつ、私立病院では採算が合わない診療科目も引き受ける。「できるだけ入院患者さんに特化した治療をしなければならないのです」 外来は午前だけにし、新患は原則として他の医療機関からの紹介だけ受け付けることにした。反発は激しかったが、ここ最近は一日七百五十人程度まで落ち着いてきた。 開業医との連携一方で総合病院は開業医との連携強化を進めている。鳥取県東部医師会でもかかりつけ医の紹介事業に取り組んでいる。理事の乾俊彦は「病院と診療所の連携で、かかりつけ医を活用した方が効率的」と強調する。診療所で診察を受けて専門的な診断が必要な場合、総合病院に紹介状を持って行く。外来での待ち時間は少なく、たまたま行った日に目当ての専門医がいないということもない。適切な科に直接到達できる。しかし、乾は「そうした利点がなかなか住民に認識されていない」と嘆く。 総合医の概念昔に比べてかかりつけ医の概念が薄れた理由として、総合病院の方がスタッフや設備が充実しているという「大病院志向」のほか▽地域での人間関係の希薄化▽オフィス開業−などが挙げられる。核家族化や転勤族の増加で、かかりつけ医と接する機会が少なくなった。一方、街中でも自宅は郊外という開業医が増え、時間外の診療を受け付けない傾向が見られる。医療の役割分担が進む中、かかりつけ医の重要性が見直されている。国は高齢者の在宅医療を推進するために「総合医」の概念を打ち出した。病院の専門医や介護施設と連携しながら、普段は開業医が在宅医療や生活指導を受け持つ。この方がトータルでは医療費を抑制できるとする。 医療資源を「浪費」しないためにも医者への上手なかかり方が求められている。病院と診療所の機能分担と連携は、患者の症状に応じて最適な医療を素早く受けられる道筋といえる。 県立中央病院長の武田は訴える。「皆さんが良い医療をいつでも受けられる環境にずっといたいと願うのであれば、現状や制度を理解して、私たちと一緒に地域医療を守ってほしい」(敬称略) インデックス
第6部 医療と向き合う (28)病院と診療所使い分け(11/17) (27)救急外来のコンビニ化(11/16) 第5部 転換期の高齢者医療 (26)認知症(09/24) (25)リハビリ病棟(09/23) (24)療養病床再編(下)(09/22) (23)療養病床再編(上)(09/21) (22)後期高齢者医療制度(09/20) 第4部 生活習慣病を防げ (21)治療現場(07/07) (20)健康教室(07/06) (19)食生活改善推進員(07/05) (18)対策の義務化(07/04) (17)糖尿病予備軍(07/03) 第3部 がん最前線 (16)がんサロン(05/12) (15)緩和ケア(05/11) (14)生活の質(05/10) (13)拠点病院(05/09) (12)がん検診(05/08) 第2部 看護職はいま (11)研修・教育(03/15) (10)専門・認定看護師(03/14) (9)大量採用の波(03/13) (8)身障者とともに(03/11) (7)男性だからこそ(03/10) (6)娘の母、患者の母(03/09) 第1部 医師不足 (5)研修医の県外流出(01/07) (4)病院運営に暗雲(01/06) (3)小児診療の地域偏在(01/05) (2)休止する診療科(01/04) (1)山間部医療支える診療所(01/03) |
トップページ | ローカルニュース | 連載・特集 | コラム | 論壇 | イベント案内 | 日本海クラブ | サイトマップ | ||
当サイトの著作権について
本ページ内に掲載の記事・写真など一切の無断転載を禁じます。すべての記事・写真の著作権は新日本海新聞社に帰属します。 ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会) |