▽件数急増、医師不足続く
島根県内で唯一、総合周産期母子医療センターに指定されている県立中央病院(出雲市)が来年一月以降、出産予約を制限することが十五日、分かった。妊娠初期から通院する妊婦は従来通り対応する一方、里帰り出産など転院を伴う出産の予約は、一部受け入れない可能性がある。産婦人科不足を背景に近年、同病院の出産件数が急増し、センター機能の低下が生じる恐れがあるためで、医師不足は基幹病院にも影を落としている。
■周産期医療の役割維持
予約を制限するのは、同病院での初診が遅かったり、里帰り出産などで途中からの受診となるケースで、その場合、他の病院を紹介する。初診から通う妊婦をはじめ、早産や帝王切開などハイリスク出産は受け入れる。
予約制限の導入に踏み切るのは、産婦人科での出産対応件数が急増したため。一九九七年度は五百九十四件だったのに対し、二〇〇二年度は八百九十七件、〇六年度は千九十九件と初めて千件を超えた。お産を扱う病院の減少や、里帰り出産の増加、総合病院での出産を望む妊婦や家族の安全志向なども増加の要因とみられる。
出産件数の増加に対し同病院の産婦人科医の人手不足は解消されておらず、本年度は嘱託を含めて九人しかいない。四十床の産婦人科のベッドは満員状態が続いている。
さらに、同病院は〇六年一月、重症の妊婦や新生児治療の中核を担う総合周産期母子医療センターに指定。出産件数の四分の一は帝王切開が占めるなど、県内各地からリスクが高い妊婦を受け入れ、通常の出産とともに緊急出産への対応も求められる。
母性小児診療部の岩成治部長は「人的、設備的に、出産を希望する妊婦すべて受け入れるには限界を迎えている。不便をおかけするが、総合周産期母子医療センターの役割を維持するため協力してほしい」と呼び掛けている。(城戸収)
●クリック 総合周産期母子医療センター
合併症のある妊娠や重い妊娠中毒症、切迫早産、胎児の異常など、正常な出産が困難な病気やリスクが高い妊娠に対応するため、24時間態勢で妊産婦と新生児を受け入れる医療施設。新生児集中治療室(NICU)病床数などに基づき、都道府県が指定する。厚生労働省は各都道府県に1施設以上の設置を目指している。
【写真説明】出産予約の制限に踏み切る島根県立中央病院
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