「組織的関与」にメス――船場吉兆偽装

 
              
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「組織的関与」にメス――船場吉兆偽装

2007/11/16配信
 国内外で「名店」と呼ばれた高級料亭「吉兆」グループの「船場吉兆」に大阪府警の捜査のメスが入った。デザート、総菜、鶏肉、牛肉商品、めんつゆ……。消費期限や原材料、産地にからむ同社製品の表示の偽装が次々と発覚。「組織的な関与はない」と会社側は釈明を続けるが、府警は会社幹部などによる関与や指示、隠ぺい工作がなかったか一連の疑惑の全容解明を急ぐ。

 ▼「地鶏指定ない」

 「鶏肉に加え、牛肉商品も表示を偽って販売していた」――。

 9日、大阪市内の記者会見で湯木正徳社長(74)は深々と頭を下げた。福岡市内の販売店では菓子や総菜の期限表示の改ざんがすでに判明。本店で取り扱う“吉兆ブランド商品”でも不正が行われていたことは、多くの国内外の吉兆ファンを驚かせた。

 問題が発覚した商品のうち、「地鶏こがねみそ漬け」などの原材料はブロイラーだった。関係者によると、鶏肉は約16年前、湯木社長と創業者で父の貞一氏が京都市内の納入業者との間で買い付けを契約。「この肉はおいしい、郵送して」。この一言で取引が続いたという。

 だが、業者によると、湯木社長らが「地鶏」と指定したことは1度もなく、品質確認を求められたことも1度もなかったという。一方で、湯木社長は「途中から(ブロイラーに)変えられ、裏切られた」と主張。業者側は「あまりに理不尽な対応」と憤る。

 ▼責任逃れ?

 「日持ちするんやから、1カ月延ばせ」。福岡市の百貨店「岩田屋」の「吉兆天神フードパーク」で働いていたパート従業員らによると、湯木尚治取締役(九州地区担当)はデザートなどの消費期限の改ざんを指示していたとされる。さらに関係者が驚くのは、責任を逃れようとしたと受け取れる湯木取締役の指示だ。

 「改ざんはあんたがしたことにしてと言われた」「『パートが不正をした』とする文書に無理やり署名させられた」――。一部のパート女性は問題発覚後の10月下旬、福岡市内の別の店舗で事実上、軟禁状態にされ、指示に応じるよう迫られたこともあったという。

 女性パートの1人は署名を拒むと「やったのはあんたやないか、と怒鳴られた。屈辱的なことだ」と訴えた。

 ▼老舗の誇りどこへ

 こうした一連の偽装表示について、「吉兆」グループの中でも「船場吉兆」が伝統を軽んじ、売り上げ確保に走ったことが一因とする声は関係者の間に強い。パート女性らに対する問題発言が指摘された湯木取締役も、料理人としての評価は高いが、グループの関係者は「売り上げ第一の人物で品質管理や経営のあり方には疑問が残った」と話す。

 府警は今後、農林水産省近畿農政局とも連携して同社の不明朗な業務実態の解明を進める。同農政局の担当者は「高額な代金を支払ってくれる料亭での得意客には『おもてなしの心』『誠意』を見せながら、顔の見えない一般消費者には舌を出していたのかも。食の安全を保つ上でも見逃せない行為」と言葉を強めた。
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