診療報酬改定 問われる医療の質確保
公明新聞:2007年11月16日
医師不足、がん対策の充実が必要
医療経済実態調査
来年度は2年ごとに行われる診療報酬改定の年にあたる。医師の不足や偏在、地域医療の質確保など、医療現場は今、さまざまな課題に直面している。
先日、厚生労働省は、診療報酬改定の基礎資料となる医療経済実態調査の結果(速報)を公表した。集計は、介護保険事業を実施していない医療機関を「集計1」、全体を「集計2」としてまとめられ、調査結果では、収入から費用を引いた医業収支差額は一般病院(集計1)でマイナス約1315万円と、前回(マイナス約617万円)より赤字が拡大。収入に占める赤字割合(構成比)も、マイナス5.6%(前回マイナス2.3%)に拡大している。
開設主体別では、最も赤字幅が大きいのは公立病院で、1施設当たり約7166万円(構成比17.4%)。日赤など公的病院も5.5%の赤字になった(前回0.9%黒字)。医療法人は2.5%の黒字(同1.3%黒字)、国立は0.3%の黒字(同0.5%黒字)だった。病床規模別で見ると、規模が大きくなるに従って赤字幅が拡大している。
開業医(一般診療所院長・集計1)の給与を初めて調べた結果、賞与も含めた平均月額は210万9728円。これに対し、病院勤務医(一般病院医師・集計1)の給与は平均月額117万9088円だった。開業医の給与は、勤務医の1.8倍に達し、一般病院の医院長(平均月額217万9450円)とほぼ同じとなった。
診療報酬の改定にあたり、小児科や産科など必要な分野への配分は欠かせない。今年(2007年)4月にはがん対策推進基本法が施行されており、3人に1人はがんで亡くなる日本にあって、がん対策の充実は今や国の責務になったといってよい。また、病院の経営悪化は過酷な勤務医の労働条件をさらに悪化させ、医療の質低下を招きかねない。
厳しい財政の中、大幅な医療費の伸びを放置できる状況にはないが、医療の質を確保するため、限られた資源をどう振り分けるのか。賢明な判断が求められている。
14日の経済財政諮問会議(議長・福田康夫首相)では民間議員4人が見直しに関して提言。医師不足が指摘される産科や小児科の救急外来などで病院勤務医への報酬を手厚くする一方、高齢化の進展を背景に増え続けている医療費に歯止めをかける狙いで、診療所の初診・再診料引き下げなど、1・8倍を超える勤務医と開業医の給与の開きを是正する考えを表明した。さらに、病院は高度な医療や救急に、診療所は日常的な外来診療を中心にする「役割分担」につながる報酬制度を求めている。
安易な数合わせ避けよ
前回の2006年度改定では、合計3.16%と過去最大の引き下げ幅で、来年度も引き下げるならば4回連続の引き下げとなる。診療報酬は1%引き下げると約800億円の国庫負担削減になる。だからといって、国民生活に直結する医療への支出を、財政再建の数合わせのためだけに安易に決めてしまうことは避けなければならない。
今回の改定に関して、日本医師会は「これ以上のマイナス改定は医療現場の崩壊を招く」と診療報酬の大幅引き上げを求めている。どこに住んでいても安心して生活ができる医療基盤の整備は不可欠であり、これからの議論の推移を注視したい。
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