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著者に会いたい

高学歴ワーキングプア 水月昭道さん

[掲載]2007年11月11日
[文・写真]丸山玄則

■フリーター博士、赤裸々に

 末は博士か大臣か――「『博士』がキラキラと輝いていた時代が、たしかにあったのだ」。水月昭道(みづきしょうどう)さんは著作の中で、しみじみと記す。

写真水月昭道さん

 実際の「平成の博士」はどうか。大学院を修了しても「2人に1人」は定職に就けず、「フリーター博士」は1万2000人以上。専任教員を夢見ながら、非常勤講師やコンビニ店員、肉体労働で食いつなぐ。中にはパチプロに転じたり、ひきこもりになったり、心を病んだり――そんな実態を同じ非正規雇用の「人間環境学博士」の目で、悲惨な実例を豊富に交えながら赤裸々に描いた。

 「優秀な若い人たちが私の周りから次々と消えていく。みんな大学に残りたいから声を上げられない。だれかが問題を提起しないといけないと思ったんです」

 大量の余剰博士は国策で生まれた。政府は91年、「世界的水準の教育研究の推進」を旗印に大学院生の倍増化に乗り出したが、大学や企業などの受け皿が育たない。結果的に改革は、副題の「『フリーター生産工場』としての大学院」につながった。「この構造を押さえないと、『就職できないのは自己責任』と問題の本質がすり替わってしまう」

 子どもの発達と社会の関係を探る「子どもの道草」研究が専門で、自らも「道草人生」。大学中退後、バイク便ライダーとして各地を巡り、研究生活にのめり込んだのは30代。専任教員には落選続きで、現在の立命館大研究員、同志社大非常勤講師の立場も今年度末に任期切れだ。

 「道草」の過程で痛感したのが「教育」の大切さ。「社会に貢献したくてもフリーターにならざるをえない若者を生み出す構造は、大学院だけではなく『教育』全体が抱える問題。官民一体で議論してほしい」

 子どもがいる父母にお薦めの本だ。

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