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いのち見つめて 地域医療の未来 第6部 医療と向き合う
2007/11/16の紙面より
24時間営業の病院
トリアージ昼間や前日に他で受診していても症状が改善しないと駆け込んだり、「朝から熱があったけど用事があったので」と夜間に訪れる身勝手な親もいる。しかし、小児科診療部長の林原博(52)は「家庭の事情はよく分かる。心配だと思ったら、来てもらうしかない」と好意的に受け止める。核家族化に共働き。子どもが病気にかかっても、雇用が不安定で仕事を休めない親たち。少子化で患者は減りそうなものだが、小児救急は以前にも増して忙しい。県境を越えた安来市から駆け込む人も多く、ニーズの高さがうかがえる。林原はこうした要因に理解を示しつつ「できることは限られている」と釘を刺した。 効率的に診察するため、処置や検査は必要最低限しか行わない。質問が重複しないよう問診票に症状を記入してもらい、看護師は緊急度に応じて診察の順番を判断する「トリアージ」を行う。食欲がないからと希望が多い点滴は「栄養剤ではない」と断る場合もある。 それでも四人の小児科医で当直を回すのは楽ではない。日曜でも実質二人が拘束されるため、丸一日休める日はほとんどないのが実情だ。 親への啓発金曜日の午後八時すぎ。長男(5つ)が腸感冒にかかったと米子市内の家族がセンターにやって来た。会社員の父親(33)は「かかりつけの先生は日曜でも出てこられる。うちだけではないと思うと申し訳なくて…」。遅くなったため、かかりつけ医には相談しづらくなったようだ。県内では日曜でも急患を受け入れる開業医はまだ多いというが、林原は急病時の対応法を啓発する必要があると考えている。しかし、忙しい親たちほど講演会には参加できない。携帯電話で閲覧できる情報提供サイトを個人的に開設して、質問にも答えるが限界がある。「聞いてほしい人にどうやって伝えればいいか」。頭を悩ませている。 小児救急だけでなく、救急外来はどこも多忙だ。例えば鳥取大学医学部付属病院(米子市西町)の救命救急センター。受診した患者数(二〇〇六年度)は約一万三千六百人で、うち86%は軽症患者だ。限られたスタッフが処置に手を取られている時、重篤な患者が搬送されると処置に支障が出かねない。 救急外来を二十四時間営業の病院とみなす医療の「コンビニ化」が疲弊に拍車を掛けている。(敬称略) インデックス
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