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2007年11月16日

 国会に再喚問された守屋前防衛事務次官の証言を聞いて、喜劇王チャプリンの名画「モダン・タイムス」を連想した。工場の機械の歯車として働く主人公が、人間の優しさを取り戻そうとする時代風刺の物語である

無声映画で、チャプリン得意のパントマイムが全編にあふれるが、一カ所だけ本人の声が流れる。少女と一緒に警察に追われる主人公が、追い詰められた酒場の舞台で、急場しのぎに即席の歌と踊りを披露する

が、映画で流れる声は、「ティティーナ」「ティナティナ」という意味不明の歌詞だけ。それでも、おかしな歌と踊りに酒場は大興奮となり、そのすきに主人公らは逃げ出す

追い詰められた前次官も、国会で重い口を開いた。「キュウマ」や「ヌカガ」という名前が出たが、疑惑の核心に触れると、「ティティーナ」ならぬ「記憶にございません」を連発した。追及する側も「時間がない」を繰り返し、矛先はぶれた

名画の主人公は警察の追及を逃れ、新たな人生を踏み出そうとする。前次官には司直の手が迫っているとか。その「記憶にない」の真偽のいくつかが解明されない限り、お粗末な一幕で終わる。


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