ミャンマーの国民和解仲介のため同国を訪れていた国連のガンバリ特別顧問は、安全保障理事会に出席し、民主化に向けた軍政の措置を評価する報告を行った。
ガンバリ特別顧問は、国民民主連盟(NLD)の書記長で自宅軟禁中の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが約三年半ぶりにNLD幹部と会えたことなどを説明し「数週間前と比べ状況は質的に違う」と強調した。
九月末、反政府デモを武力弾圧したミャンマー軍政が、打って変わって民主化に前向きな姿勢を示したのは、国際社会の圧力が一定の効果を挙げていることを示すものと言えよう。
デモ鎮圧に対し、国連安全保障理事会は「強い遺憾」の意を表明する議長声明を採択し、政治的対話を開始し、政治犯を釈放するよう要求した。映像ジャーナリスト長井健司さんが射殺された日本は無償資金協力の一部取りやめを発表した。米国も軍政指導部の資産凍結など新たな追加制裁措置に言及した。
状況の変化は、十月下旬のスー・チーさんと軍政側のアウン・チー交渉担当相との会談が発端だ。この時は、国営テレビで放映されるなど、宣伝色が強いものだった。
二回目の会談は、国連のガンバリ特別顧問による強い働き掛けで十一月九日に実現した。その際、スー・チーさんは、接見が禁止されていたNLDのアウン・シュエ議長らとの会談も認められた。
スー・チーさんは、和解に向けた対話進展を「非常に楽観している」と述べている。軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長を前提に「議題や対応策を詰めている」とする。
軍政との対話姿勢をスー・チーさんが打ち出した背景には、国連や欧米諸国など国際社会の支持のあるこの時期なら、交渉を有利に進めることができるからだろう。
一方の軍政側には、スー・チーさんとの対話推進などを強調し「民主化努力」をアピールし、国際的批判をかわす狙いがあるとみられる。これまで譲歩の姿勢を示しては、野党側に受け入れがたい要求を持ち出し、民主的動きに背を向けるのが軍政のやり口だ。気を許すことはできないが、対話の機会を逃さないようにもしたい。
国際社会は結束してミャンマーに圧力をかけ民主化を促すべきだ。制裁強化を訴える欧米諸国に対しインドや中国は対話による解決を主張し、足並みがそろっていない。日本としては、中印にミャンマーを説得するよう働き掛けることも必要となろう。
国土交通省が二〇〇八年度から十年間の道路整備中期計画素案を発表した。総事業費は六十八兆円に上り、揮発油税などを本来より高くしている道路特定財源の暫定税率を維持し、ほぼ全額を使い切る内容になったのが特徴だ。
道路特定財源は公共事業の削減が続き余剰が発生した。このため昨年末の閣議で余剰分は一般財源化する方針を決めるとともに、今後の道路事業は整備計画を新たに策定することになった。
車頼みの地方でも、慢性的な渋滞に頭を痛める都市部でも道路整備の必要性は高い中で、十年間にわたる中期の目標が示されたことは重要だ。議論の「たたき台」として有効に活用すべきである。
素案には生活幹線道路のうち幅が狭いなど車のスムーズな走行に支障がある約五千区間の整備や、拠点空港・港湾について高速道路のインターチェンジに十分以内で到達可能な数を現在の約七割から欧米並みの約九割にすることなどが盛り込まれた。
政府は与党との調整を経て十二月に中期計画を閣議決定する予定だが、来年三月末で期限を迎える道路特定財源の暫定税率の扱いが大きな焦点になろう。
素案は延長を前提に、余剰を出さないよう使い切ることになっている。「余ったら一般財源に」とする政府の方針を逆手に取り、「余らない計画を立てた」という批判は少なくない。暫定税率の延長に反対する民主党の封じ込め策との見方もある。
素案に具体的な整備区間は挙げられていない。納税者の理解を得て道路整備を進めるには整備区間を明確に示し、必要性を徹底的に精査した上で暫定税率延長の是非を議論すべきだろう。
(2007年11月15日掲載)