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【社会】

医学生の3割1度は産科医目指す 『勤務実態』や『訴訟』考え挫折 横浜市大の学生が調査

2007年11月15日 夕刊

 医学部の学生で過去に産婦人科医を志したことのある人は全体の29%いるにもかかわらず、現在第一志望にしている学生は全体の4%、第三志望まで含めても14%にとどまり、多くは「勤務実態」や「訴訟リスク」を理由に挫折していることが十五日、横浜市立大の医学部学生が実施した調査で分かった。

 志望しない人が「産婦人科医になってもいい条件」として挙げたのは「適正な当直回数」や「刑事責任に問われない」が多く、医療を取り巻く厳しい環境が学生の進路希望にも影響し、産科医不足に拍車が掛かる状況が浮き彫りになった。

 調査結果は、十七日に同学部で開かれるシンポジウム「STOP the 妊婦たらい回し」で発表される。

 調査は同学部医学科一−六年の三百六十一人を対象に実施し、応じた三百七人(回答率85%)と他大学十三人の計三百二十人の回答を分析した。

 産婦人科を目指したことがあるとしたのは一年20%、二年18%、三年25%、四年37%、五年32%、六年47%と学年が上がるほど高率。理由として「命の誕生という感動にかかわることができる」「時代や国を問わず必要とされる」などが挙がり、六年は「実習で楽しかった」も目立った。

 しかし、一度は産科医を志望した学生の約半数が進路を変更。その理由として勤務実態(当直回数、勤務時間、育児との両立困難)や訴訟リスクが高いことが挙がった。

 シンポジウムでは、結果を基に、学生が現場の医師らと意見交換。産科医不足を実感したことがあるかなどについて、妊産婦約百人に実施した調査結果も発表する。企画した医学科三年の武部貴則さん(20)は「問題の改善には、医師や行政だけでなく市民にも果たす責任がある。患者と医師の間に立つ学生の考えを伝え、医師不足などについて考え直すきっかけになれば」と話す。

 シンポは同大福浦キャンパス(同市金沢区)で午後三−六時。入場無料。

<メモ> 産科医不足 深夜・長時間労働や分娩(ぶんべん)事故に伴う訴訟リスク、子育てによる女性医師の休職などを背景に産科医が減少。2006年2月に、福島県警が帝王切開した妊婦の死亡をめぐり県立大野病院の産科医を業務上過失致死容疑などで逮捕したことも影響しているとされる。各地で妊婦の救急搬送先が見つからない事例も相次ぎ、背景に産科医不足が指摘された。国は分娩事故で医師に過失がなくても補償金を支払う「無過失補償制度」の創設や、中核病院への集約化による地域医療ネットワークづくりなどの対策を進めている。

 

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