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社説

赤福/地に落ちた老舗ののれん

 伊勢神宮の参拝土産として知られるもち菓子の「赤福」(三重県伊勢市)で、驚くような偽装が次々と明るみに出ている。

 まず製造年月日の改ざんだ。製造後に冷凍し、最大で十四日間保管した後、解凍して出荷していた。その際、出荷日を「製造年月日」と偽り、消費期限もずらしていた。不正表示は三十年以上も続いていた。

 売れ残りの再利用も行われていた。店頭で売れ残った商品を工場に戻し、冷凍した後、製造年月日を書き換えて再包装、再出荷するやり方である。売れ残りの商品の一部は「むきあん」「むきもち」と称し、それぞれ分離して再び利用していた。

 方法も手が込んでいる。作業員が識別できるように、複数の記号を組み合わせて商品に印字。早く売り切るためとみられるが、偽装が組織ぐるみであることを示している。消費者軽視もはなはだしい。

 赤福は、創業三百年と伝えられる老舗である。鮮度が自慢で「製造したその日限りの販売」をうたい文句にしてきた。「伊勢の名物 赤福餅(もち)はええじゃないか」のCMソングとともに愛されてきた。

 一連の裏切り行為で老舗ののれんは大きく傷ついた。経営者は、ことの深刻さを分かっているのだろうか。

 赤福の社長は再利用などについて、当初は「ない」と否定していたが、すぐに「誤った報告をした」と述べ、虚偽報告を認めた。その後も強弁した先から、うそがばれる。そのたびに発言を取り繕い、謝罪を繰り返す。経営者失格と言わざる得ない。

 ここ数年、食品の偽表示や産地偽装などが繰り返されてきた。最近も不二家、ミートホープ、「白い恋人」などに続き、秋田県の食肉加工会社が格安の廃鶏などで作った商品を「比内地鶏(ひないじどり)」と偽って高く売りつけていたことが発覚した。

 隠ぺい、改ざん、偽装。安全より利益を優先させる企業体質をこれだけ見せつけられると、安心して食品を買えなくなる。

 消費者の不信を招いていては、食品企業は成り立たない。外部人材を役員に登用するなど、経営へのチェック機能を強化することを真剣に考えるべきだろう。

 赤福に対し、農水省は日本農林規格(JAS)法に基づき、原因究明、再発防止対策の実施を指示。三重県は食品衛生法違反で無期限の営業禁止とした。

 しかし、監視は十分か。農水省は偽装情報を受け付ける食品表示一一〇番を設けているが、内部告発を端緒に立ち入り調査にも本腰を入れてほしい。消費者との間にほどよい緊張感を保つことが重要だ。

(10/24 08:49)

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