望まれる社外の専門家のサポート
ただし,社外の専門家によるサポートは役に立っているようだ。自社内ではなく,社外の専門家との契約を望む声も多かった。
■会社でメンタルヘルスケアの企業と契約している。実際に利用したことは一度だけだが,そこでのアドバイスが非常に参考になった。また,もしもの際にはもう一度相談に行けば解決できるのではと思える安心感がある。(37歳,ベンダー)
■直接会社ではないところを窓口として,相談できるところがあるとよい。そして,必要に応じてそこから会社に連絡をして対応策を進めてもらえるとよい。会社の同僚で,部署移動の結果,こころの病になってしまった人が,そういった機関を窓口として相談し,会社との交渉もしてもらった結果移動前の部署に戻すことによって,こころの病を改善できた。(46歳,マーケティング/営業,ユーザー企業)
■企業は対外的にメンタルヘルスのための部門を作っているが,利用されていないのが実情だと思います。自社のエンジニアを守るためには,社外の専門家のサポートを会社の体制としてとってもらいたいものです。(27歳,インストラクタ,ベンダー)
そのほか,会社のサポート体制に関しては,以下のような意見があった。
■部署内やプロジェクト・チームの近くにカウンセラーがいないため,うつ病などの発見が遅れるとともに,本人がつらい状況にあるときに相談しづらい。強いストレスがかかっているプロジェクト・チームの近くにはカウンセラーなどのプロがいるべき。(31歳,プロジェクト・マネジャー,ベンダー)
■診断が降りたら積極的に労災と認定し,補償+αをするような仕組みを義務付けるべき。(35歳,SE,ベンダー)
■こころの病になる前に気づける仕組みがない。週報を毎週記入し,MGがチェックする体制になってはいるが,そこに業務改善や現状を書いても何もリアクションが返ってこない。事前に対処をするためには,組織をもっと細分化し,メンバーそれぞれがお互いの状況を気づけるようなコミュニケーションの仕組みが必要ではないかと思う。(27歳,SE,ベンダー)
結局,自衛するしかない
いつ終わるともしれぬ過重労働。会社のサポート体制には完全には頼れない。となれば,やはり「自分の身は自分で守る」しかない。
■こころの病に関しては他人は当てにできないし,ならないと思います。他を当てにするより,自分で予防を心がけたり,なったらなったで速やかに医師に相談するべきだと考えます。真っ当な会社なら,診断書があれば休職することもできるでしょう。自分の身は自分で守るしかありません。(30歳代,プログラマ,ベンダー)
■数週間前に全く感情(表情)が出ない状態になり,仕事にもろくに取り組めない事態に陥りました。精神科と診療内科を受診して,ともに「初期のうつ症状」との診断でした。現在は抗うつ薬などを服用しつつ,通常の勤務が可能になっていますが,作業量(成果・進捗)は以前より落ちています。体調の波もあるため,周囲の関係者には事情を伝えて,自身の状態に合わせて作業しています。期限などの条件はあれど,「無理はしない」ことに決めてしまいました。それで会社からの評価が下がっても仕方ありません。解雇にならない限り,できる範囲のことを確実に進めて収入を確保する方針です。現在の職場ではこころの病への考慮は感じられません。とりあえずは自衛するつもりです。(40歳,プログラマ,ベンダー)
■早期治療は,早く治すために必要。私は残業が多いプロジェクトでは,頭を刺激した状態で,夜,家に帰っても眠れないことが多いです。会社としては休ませるわけにはいかないと・・・。でも,自己判断で休む勇気が必要と思います。(30歳代,プログラマ,ベンダー)
■まじめな人ほど危険です。できる人ほど,まじめな人ほど,「仕事は適当にやる」ということを心にとどめておかねばなりません。(28歳,マーケティング/営業,ベンダー)
いかがだっただろうか。長文になってしまったが,ここで紹介した意見が,少しでもこころの病の予防に役立てば幸いだ。なお,10月31日にITproでは,メンタルヘルスや体の健康の専門サイト,「ITpro SkillUP ヘルスケア」を立ち上げた。こちらにも,こころの病の予防に役立つ情報が満載なので,ぜひご覧いただきたい。