誰もが覗く「こころの病の淵」
先に,こころの病の最大の原因として過重労働を挙げた。この過重労働という環境は,ITエンジニアなら誰もが体験している。誰もが,こころの病の「予備軍」と言えるのだ。実際,コメントでも「このままでは,こころの病になるかもしれない」という不安の声は多かった。
■いつの間にか,八方ふさがりと感じてしまう心境に落ち込む。忙しすぎる,休息がないなどエンジニアとしては「ごく当たり前」の状況下で心がすり減っていくようです。これを解決するには,その状況を離れるしかないのが,今後の自分にとって不安です。(36歳,プログラマ,ユーザー企業)
■コスト削減による人不足で,未来もずっと毎日16時間以上勤務や20日連続勤務が続くと思うと,不安になり,精神的に不安定になることがある。ごくまれに,本当に忙しくなると,ふと「やばいな」と思う状態になることがある。会社はそれを知っていても特に対策は立ててくれず,自分の身も心も自分で守るしかない状態。(32歳,Webディレクター,ベンダー)
■土日祝の休日がない状態で勤務するとうつ状態かもと感じることがあります。人手を簡単に増やせない実情があり,その分各個人への負担が増し,納期遅延も許されず,人員の補充もなく,休日返上で仕事をし続けるしかない状態で,その重圧などからうつになる方を複数見ています。いつ我が身かと案ずることもあります。(40歳,マーケティング/営業,ベンダー)
サポート体制が遅れている中小企業
こころの病の予防や早期発見,確実な治療,スムーズな復職のためには,社員教育やカウンセラーの配備,相談室の設置といった企業のサポート体制が欠かせない。大手企業では,こうしたサポート体制が整った会社は多いが,中小企業ではまだまだのようだ。
■中小企業に体制などあるはずがない。うつ病と診断されれば隔離され,昇進から完全にはずされる。辞めれば再就職も難しく,食べるために派遣などでSEなどをすれば悪化する。死ぬしかないんじゃないの?と最近思う。(30歳代,プロジェクト・マネジャー,ベンダー)
■こころの病について,大企業では理解が進み,かつ支援体制も確立できているようだが,中堅・中小企業では,まだ誤解されている面も多い。支援体制も人員構成上,厳しいものがあると感じる。「自分の身は自分で守る」という気持ちがないと,やっていけないと思う。(46歳,マーケティング/営業,ベンダー)
■人材を大切にする会社に入らないとだめです。中小企業では難しいのでは。(41歳,運用/管理,ユーザー企業)
■大手企業は,こころの病気にかかった社員の復帰プログラムがちゃんとあり機能してると思います(以前,メーカーに勤務していたとき,感じたことです)。今,自分が勤務している会社(300+α人)には,ちゃんとしたプログラムが存在しません。そのあたりは,行政が介入してでも制度などを整えさせるべきと思っております。(40歳,SE,ベンダー)
もっとも,大企業だから必ずサポート体制が充実している,というわけではないようだ。
■大企業に勤めていたが,クライアントからの理不尽な要求や,上昇志向の強いメンバーによる足並みの乱れなどがストレスに感じて,中小企業に転職した。転職先でもすぐには回復せず,転職直後に入院することになってしまったが,会社の手厚いサポートのおかげでほとんど回復した。こころの問題に対する姿勢は大企業がよいとは限らないということが分かった。(40歳,コンサルタント,ベンダー)
会社の相談窓口に相談できるわけがない
企業のサポート体制については,「表面的で役に立たない」とするコメントが多かった。
■会社でも相談窓口を整備するなどの対応は「表面的」にはしているが,辞めていくSEは少なくない。(39歳,プロジェクト・マネジャー,ユーザー企業)
■メンタルヘルスに関する講習は行われているが,病気にならないと(病気になって長期休暇しないと)職場は動かない。上司も見て見ぬふりをする。講習はまるで役に立たない。(42歳,保守/サポート,ユーザー企業)
■会社の中に悩みを抱えているのに,会社側が用意した相談窓口に相談できるわけがないと思う。しかし,会社側は制度や体制を整えることが解決策だと思っているようだ。(39歳,SE,ベンダー)
■会社は建前としては,こころの病を引き起こした社員をサポートするようなことを言ってはいるが,実際には厄介者扱いにされる。また,こころの病に至った原因を調べることも,対処することもない。会社にとって,SEというのは取り替え可能な部品にしか過ぎないのです。(34歳,SE,ベンダー)