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【社会】歴史に残る「自動運転」 名古屋地下鉄、15日で開業50周年2007年11月14日 14時50分
ボタンを押すだけで発車から停車までを全自動で行う実験が、1960年に名古屋市の地下鉄で実施され、成功を収めていたことを示す資料が44年ぶりに見つかった。全自動運転は当時、パリ地下鉄でしか実現していなかった先進技術。費用が高額だったことなどからその後立ち消えとなったが、高い技術力は、15日に開業50周年を迎える現在の地下鉄に脈々と息づいている。 実験は、運転の安全性の向上や、運転士の負担軽減が目的。 60年10月25日に始まり、初日は20回走行。テスト車両を停車位置の1・05メートルから2・63メートル手前に止めることができた。3年後には167回走行し、いずれも停車位置の誤差が50センチ以内に収まるなど、精度がぐっと高まった。 線路上に複数設置された「地上子」と呼ばれる装置の上を電車が通ると、あらかじめ設定された速度を電波で送信。すると現在速度と命令を比較し、加減速したり停車したりする仕組みだ。 大成功といっていい結果だったが、実験はその後1度も行われなかった。当時は電車1両が1500万円の時代。自動運転装置は1組5、600万円で高価だった。しかも、無人運転とするには線路内への飛び込みや災害など緊急時への対応に課題が残った。 しかし、担当の技師たちがその後、速度の出過ぎを自動的に抑える装置の導入に携わるなど、技術は変えながら受け継がれ、94年に桜通線(中村区役所−今池間)の自動運転化で長年の夢は結実した。同線は運転士が車掌の役割も果たすワンマン運転を行っている。 一方、最初の実験資料はその後倉庫に眠ったままだった。掘り起こされたのは、開業50周年記念誌づくりがきっかけ。 今年4月、古い電車の写真を探していた市交通局車両課の桜井雄二郎係長(46)が1枚の白黒写真に違和感を覚えた。ノッチ(車のアクセルに相当)とブレーキの間に、小さな4つの見慣れぬボタンが写る。その後別の工場で見つかった資料から、自動運転装置だったことが分かった。 当時実験電車に乗り込んだ元交通局職員三井睦夫さん(69)は「こんな時代にすごいもんだな」と驚いたのを覚えている。元運転士としての自負は今も変わらない。「お客さまの命を預かっている以上、それを守るのは人間の役目だと思う」 (中日新聞)
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