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宮古島方言で胸打つ歌…異色シンガー下地勇 (夕刊フジ)

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 宮古島方言で胸打つ歌…異色シンガー下地勇(写真提供 産経新聞社)
 生まれ育った沖縄・宮古島の方言で歌うことにこわだるシンガー・ソングライター、下地勇(38)が、列島をツアーしながら熱い風を運んでいる。28歳で歌に目覚めた遅咲きの男の荒ぶる歌は、方言が分からなくてもオトナの胸を打つ生活感にあふれている。

 「ミャークフツ(宮古方言)で、歌い続けることに最初は迷いもあった。ライブを重ね、ブルースやレゲエ、フォルクローレなどさまざまな音楽を聴きながら、ようやくこれでいいと思えるようになりました」

 浅黒く精悍な面構えでギターを激しくかき鳴らす。沖縄本島の人が聞いても分からない宮古方言は、歌によってフランス語やスペイン語のリズムにも似た不思議な語感をもつ。良き夫で1男2女のパパだが、ライブが終わると女性ファンにワッと囲まれる。島の高校を出て、7年間の東京暮らし、8回転職した。

 「アララガマ(なにくそ)精神といって、裸一貫で故郷に錦を飾る風土があります。とび職や長距離ドライバーなどさまざまやりました。ギャンブルで勝ったら仲間をスナックに連れ歩き、負けたら借金。湯を沸かすガスも止められ、みそを水に溶いて飲んだことを歌った歌も実話です」

 宮古島には山も川もない。だから海は澄んで透明、サンゴが群生するが、昔から干ばつに悩まされた。島の男はサバニと呼ばれるカヌー様の手こぎ船で果敢に漁をしたり、サトウキビ栽培に励んだり。泡盛を車座になって酌み交わすオトーリ(御通り)で歌が飛び出す。

 「25歳になって沖縄本島でサラリーマン生活を送りながら、小学校時代に三線(さんしん)を習った島の第一人者に宮古の民謡を教えてもらうようになった。歌で方言を残したいと強く思うよったのはその頃です」

 歌手になったきっかけは、父親の還暦祝いに方言で自作曲を歌った1本のテープ。いつの間にかコピーされ島じゅうに出回った。宮古島で楽器や音響機器を販売する与那覇修広さん(50)は、「テープを聴いた第一印象は50、60代のオヤジ。島の日常を歌った詞が笑いころげるぐらいおもしろかった」と振り返る。インディーズから、メジャーへと方言ソングは一気に広がった。

 下地の名を広めた「おばぁ」は、実の祖母が祖父の最期を見届けるときの切なさを歌い、ライブの後は号泣する人が続出した伝説がある。

 今年に入って、NHK「トップランナー」「歌謡コンサート」に相次いで登場した。全国区になる日は、そこまで来ている。

 しもじ・いさむ 1969年、沖縄県宮古島生まれ。2002年「我達(ばんた)が生まり島」でデビュー。今月7日、初ライブDVD「下地勇LIVE ATARAKAツアー2007」を出した。秋のツアーは、21日の東京・草月ホールが控える。ホットスタッフ(TEL03・5720・9999)


[ 2007年11月15日16時51分 ]


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