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【溶けゆく日本人】快適の代償(2)“怪物”患者「治らない」と暴力 (2/3ページ)
医師の説明不足の面もあるだろう。しかし、ある産婦人科医は「妊婦さんに妊娠中の生活上の注意を時間をかけて説明すると、家族から『あまりプレッシャーをかけるな』と叱(しか)られる。一方で、説明を簡潔にすると『もっと詳しく説明しろ』と怒鳴られる。いったいどうすればいいのか」と困惑を隠さない。
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教育現場で教師に理不尽な要求をつきつける親のことを“怪物”にたとえて「モンスター・ペアレント」と呼んでいるが、同じように医療現場でモラルに欠けた行動をとる患者を「モンスター・ペイシェント(患者)」と呼ぶようになっている。
中でも小児科では、学校現場と同様に、非常識な親への対応に頭を痛めている。午前中から具合が悪いのに「夜の方がすいているから」と夜間診療の時間帯に子供を連れてくる▽薬が不要であることを説明しても「薬を出せ」と譲らない▽少しでも待ち時間が長くなると「いつまで待たせるんだ」と医師や看護師をどなりつける−など枚挙にいとまがない。
東京都内で小児科クリニック院長を務める小児科医(35)は、「薬を出せというのも、子供のためというより、自分がゆっくり寝たいためとしか思えないケースがほとんど。すべてにおいて親の都合が優先されている。医療行為は受けて当然、治って当然と思っているから、診察後に『ありがとうございました』の言葉もない」と嘆く。
子供が多い診療科ということでは、耳鼻科も大変だ。
和歌山県立医大の山中昇教授(耳鼻咽喉科)は「中耳炎の症状で受診する子供に耳あかがたまっていることが多く、そのため鼓膜の赤みや腫れがわかりづらい。『子供にとってお母さんの膝(ひざ)の上での耳あか取りは楽しみなもの。親子のスキンシップになりますよ』とお母さんに話すと、『子供の耳あかなんて、怖くて取れません』と平然と答えるんですよ」と話す。
さらに困るのは、診察中にじっとしていられない子供が多いこと。「子供が泣けばこちらがにらまれる。以前は親が『泣いたらだめよ』と子供をたしなめたものだが…」とあきらめ顔だ。