「飛行機に乗って修学旅行だよ」。少女と母親は指きりげんまんをした
飛行機で生まれて初めての修学旅行へ―。須賀川市の須賀川一中で平成15年10月、柔道部の練習中に頭を打ち意識不明の状態が続いている少女(17)が初めての修学旅行に行く。当時中学1年だった少女は現在、郡山養護学校高等部の2年生。14日から3日間、大阪市のユニバーサルスタジオジャパン(USJ)や水族館を巡る。「同世代と同じ体験をし、多くのものに触れさせたい」。両親の思いを学校、福島空港、航空会社が後押しし、「4年前に止まった時計の針」を動かした。
「修学旅行は東京ディズニーランドだって。友達と一緒に泊まるんだ」。中学時代、少女が楽しみにしていた修学旅行は、事故でふいになった。「4年前の10月18日に時計が止まったようだ」と母親(44)は、少女の無念さを代弁する。
事故から約2年後の平成18年1月に退院した少女は現在、在宅で療養している。母親はヘルパーの資格を取った。16年から始めた音楽療法は毎月続けられている。
少女は18年4月、養護学校に入学した。「2年生の修学旅行は大阪だって。連れて行けるかな」と両親。学校側は「全面協力します。2学年みんなで行きましょう」と応じた。「この機会を逃せば、1生修学旅行には行けないかもしれないし、飛行機にも乗れないだろう」。父親(51)の気持ちは固まった。
今年1月、両親は修学旅行で搭乗する日本航空便で、USJに飛んだ。巻き尺で通路や段差、トイレのドア幅などを測った。車いすで楽しめるアトラクションは少なかった。「それでも、園内を散策して雰囲気を楽しむことはできる」
事故から丸4年たった今年10月18日、母親は2回目の搭乗シミュレーションのため、福島空港にいた。「4年前の今ごろは、手術室で娘の死を覚悟した」。今は違う。娘と行く修学旅行に向け、「止まっていた時計の針が動きだした」。
飛行機に搭乗してから離陸までの時間は約20分しかない。空港は特殊なストレッチャーを用意する。少女を車いすからストレッチャーに移し、機内後部に設ける簡易ベッドに寝かせる。母親のほかホームヘルパー2人も同行する。
全国から少女のもとに届けられた、回復を祈る1000羽鶴は4万2000羽。「飛行機に乗って修学旅行だよ」。母親と指きりげんまんをする少女の表情が和らいだようにも見えた。