えー、毎度つまらない話にお付き合い下さり、有り難うございます。
昔の人は上手い事をおっしゃったもので、「商いは牛の涎」なんて言葉がございますな。
まぁ、商売に限らず、人生太く短くよりも細く長く、波風立てず人と争わず、万事円満に、慎ましくてささやかながらも小さな幸せを噛み締めて生きていたい。そう思うが人情というものでございましょう。
ところがどっこい、そうは問屋が卸さないのが世の中の世知辛い所。
「昔々浦島が助けた亀に連れられて竜宮城に行ってみれば絵にも描けない美しさ。」
なんていうのはお伽話の中だけで、大抵の場合、叩かれてる人を助けたりすれば、一緒に叩かれるのがオチというものでございましょう。
もっとも、お伽話の浦島太郎も、竜宮城で過ごした夢のような日々は実は全部夢で、気が付いたらヨボヨボの爺さんになって一人浜辺に立ち尽くし、「ああ、こんな事なら亀なんか助けるんじゃなかった。」と嘆いてみても時すでに遅し、という、ミもフタもない結末を迎えるのですが。
ここまで書けば状況の飲み込めてる方は「ああ、またあの話ね。」と察して貰えると思いますが、そうでない方も読んで下さっているので、もう一つ事例を紹介します。
秋田で実際に起きた事件なのですが、ある新婚の女性が、夫の関心を引くために、まったく無関係な第三者の男性にレイプされそうになったと嘘を吹聴して回ったため、この男性は周囲の人たちに通報され、警察に逮捕され、社会的信用も、半生かけて築いてきた会社も失ってしまったそうです。
しかもこの女性は、嘘がばれた後、「今は、夫に愛されて幸せです。」と、けろりとして語ったといいます。
善意と正義感と有余る行動力を備えた者が、こういうタイプの女性と出会うと、そりゃ悲惨ですわ。
何しろ、自分が正しいと思ってやった事が、幸せに暮らしていた市井の人の人生を、めちゃめちゃに破壊してしまったのですから。
私の場合、賢い友人に恵まれまして、一冊の本をプレゼントしてもらったため、最悪の危機は回避する事が出来ました。
パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか 岡田尊司著 PHP新書
件の女性のような病的気質を、以前は人格障害と呼んでいたのですが、「人格」に「障害」があるという表現が語弊を招きかねないというので最近では、パーソナリティ障害と呼ぶそうです。
現在京都医療少年院に勤務している著者が、多くの人から学んだことのエッセンスをまとめ上げたという本書の内容は、説明的にならずに、出来るだけイメージ豊かに理解してもらうために、具体例が豊富に採り入れられていて、それは私の、決して豊かではなかった幼少期、そして苦悶に満ちた学生時代を髣髴させるようで、読んでいて胸がえぐられるような思いがしました。
きっと、私の良く知る人物(実際には会った事も無いのですが)やその周りを取り囲む、様々な人たちにも、筆舌に尽くせない経緯があり、それで今のパーソナリティに辿り着いたのだと、あらためて思い知らされました。
パーソナリティ自体は、その人の人柄であり、そう簡単には変わらないし、変える必要もない。しかし、パーソナリティ障害は、パーソナリティの度が過ぎて社会に適応して生きていくのを邪魔している部分なので、変える必要があるし、実際、変えることができる。
パーソナリティ障害を克服した人はとても魅力的なパーソナリティとして円熟する。年々、周囲の評価も高まり、信頼や愛情に恵まれるだろう。
(著者あとがきより)
単なる精神医学の本ではなく、社会が内側から崩壊しかけている現代をどう生き抜くかの手引書でもある一冊。
この本を勧めてくれた私のかけがえのない賢い友人に、心から感謝の言葉を述べさせていただきます。