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【断 井口優子】医療報酬改定案はアメとムチ
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大病院の勤務医に友人がいる。ときおりメールがくるが「今日も朝8時半から夜の8時までぶっとおしで外来患者さんを診てくたくたです。勤務医の労働状況は悪くなるいっぽうです」と文章から疲労感がにじみでている。
本紙によると、2日、厚生労働省が、せめて時間外の勤務医の負担を軽減しようと一案を提示した。夜間や休日に少し体調を崩した患者さんが、開業医が閉まっているため救急病院にかかるケースが少なくない。これらの患者さんを開業医で負担してくれたなら、時間外診療の報酬の上乗せをします−というだけならわかる。ところが同時に時間内の初診・再診料を減らすというのである。収入を減らしたくない開業医はいやでも夜間延長をするだろうと。詐欺みたいな話である。
そもそも大病院は専門医でなければ手に負えない難しい病気を扱う場所である。家庭医が最初に患者をみて、専門医の診断が必要と思う患者を紹介する制度がきちんと作られねばならない。しかし政府は、手間のかかる制度作りは横におき、アメとムチの診療報酬の改定で医療政策の誘導をしようとしてきた。
今回もそうである。日本医師会が反発するのもわかる。が、「勤務医が多忙なら医師不足を解消すべき」と言ってもその財源をどこからもってくるのか。
政府与野党・財務省・厚生労働省がきっちりと国民に財源を示して、選択を迫るべき時がきているのではないか。保険代を上げるか、消費税を上げて医療費にあてるか。どちらもいやなら、肺炎をおこしやすい子供や高齢者ならともかく、多少の熱くらいで大病院に駆け込むのはやめましょう。(評論家)