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【社会】増える知的障害の子ども 特別支援学級56%増 自治体の対応に遅れ2007年11月13日 07時09分 子どもの総数は減り続けているが、特別支援学級(特殊学級)や養護学校に通う知的障害の子どもは急増している。全国の養護学校は教室数不足に苦慮し、文部科学省は養護学校の新築・増築で補助金アップを計画する。急増の原因はよくわからない。 (渡部穣) 神奈川県内の養護学校の廊下にずらりと並べられた荷物…。行事の準備や引っ越しなどではない。児童生徒数の増加で教室が足りず、図工室や理科室などを一般教室に割り当てるため、運び出された教材だ。 「もうつぶす教室がない。トイレも足りない。あまりの生徒の増え方に対応のしようがない」 「何とかしないと、障害者の人権問題になる」 今月四日の神奈川県内の養護学校教員らでつくる障害児学校教職員組合のシンポジウム「養護学校を増やそう」では、学校現場の教諭から次々と窮状が訴えられた。 きめ細かな指導が必要な養護学校は一教室に十五人までが基準。児童・生徒の急増で教室は当然足りなくなる。四百人以上のマンモス校を複数抱える愛知県のある養護学校は「アコーディオンのカーテンで仕切っただけの教室も。授業の質にも影響してきている」。 少子化で、小・中・高校の普通学級の人数は最近十年間で二十四万人以上減少しているが、養護学校の児童・生徒数は25%増。特別支援学級では56%も増加している。その結果、全児童・生徒に占める特別支援学級や養護学校に通う子どもの割合も0・85%から1・40%に増えた=表参照。 知的障害者対象の療育手帳=メモ参照=の発給数(十八歳未満)も、一九九七年の十一万七千三百七十八冊から、二〇〇五年の十七万三千四百三十八冊と47%も増加している。 知的障害者ばかり増えているが、原因はよくわからない。ろう学校、盲学校では生徒数は微減。養護学校では肢体不自由者や病弱者はほぼ増減がない。茨城大学の荒川智教授(特別支援教育)は「一九九〇年代から国が始めた特別支援教育の必要性に保護者らの理解が深まり、潜在化していた障害者が表に出てきた。普通学級に居づらい軽度の障害児と保護者が新しい居場所として特別支援学級などを求めたことも考えられる」と分析する。 一方、千葉大学の梅谷忠勇教授(障害児教育)は「大脳の障害に起因する障害が増えている可能性もある」。文科省特別支援教育課は「『医学の進歩で、重度の障害でも生存率が高まった影響もあるのでは』という見方もある」とする。同省では、知的障害者急増の原因について、現場から意見聴取することも考えているという。 中央大学の上林靖子教授(小児精神医学)は、国が進める特別支援教育を評価する一方、「施設の整備が追いついていない」と対応の遅れを批判する。 文科省は、事態を改善しようと、来年度予算で養護学校の新築・増築の補助金増を概算要求している。しかし、要求の内容は、各都道府県への補助金5%以下の小幅増で、財政難に苦しむ自治体の対応は難しくなりそうだ。 <療育手帳> 都道府県などが発行する知的障害の障害者手帳。認定基準は自治体によって異なるが、おおむね知能指数(IQ)50または70以下が対象。養育者への特別児童扶養手当の支給、税金・医療費の減免、JR運賃の割引、NHK受信料の減免が受けられる。養護学校高等部への入学希望者が急増し、手帳所有者を優先的に入学させる学校も出ている。 (東京新聞)
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