■対日交流団体の幹部、部下も懲役刑
【北京=伊藤正】日本各界とつながりを持つ中国国際友好連絡会(友連会=会長、黄華元外相)の王慶前・常務理事(51)が、日本人に軍事情報を漏洩(ろうえい)した罪で、猶予2年付きの死刑判決を受けたことが分かった。複数の日中関係筋が13日までに明らかにした。また王氏の部下で同会アジア部副部長の柴永光氏も汚職の罪で懲役3年に処されたとされ、友連会は設立以来の危機に揺れている。
王慶前氏は中国軍情報部門出身(大佐)で、1980年代から友連会の対日工作に従事。2001年まで数年間、在日大使館1等書記官として勤務、日本各界と幅広い関係を築き、帰国後も頻繁に訪日していた。
関係筋によると、王氏は昨年秋以来、国家安全省の隔離審査(身柄拘束下での取り調べ)を受けた末、軍事機密漏洩罪で起訴され、今春、非公開の軍事法廷で猶予付き死刑判決(2年後に無期懲役に減刑される可能性のある死刑)を言い渡された。
王氏に対する極刑判決について、中国でも友連会関係者以外は知る人はごく少数で、罪状は極秘にされている。関係筋によると、王氏は昨年夏ごろ、軍事資料をある日本人に渡し、その一部が公表されたことが摘発の端緒になったという。
しかし情報の内容や相手の日本人の身元は明らかでない。情報を得た相手はスパイ罪に問われる可能性があるが、日本の関係当局によると、中国側からの身元照会などはないという。
中国では昨年、前駐韓大使が機密漏洩容疑で更迭され、今年9月には新華社通信の前外事局長が同じく隔離審査になるなど、機密管理を強化している。王慶前氏の件については、柴永光氏の汚職摘発と併せ「友連会の不正常な対日活動への警告」(関係筋)との見方もある。
友連会は中国軍系列の対外民間交流団体として1984年に設立。故王震国家副主席(友連会名誉会長)や故トウ小平中央軍事委主席の支持で組織を拡大し、指導部にはトウ氏の三女、トウ榕氏(副会長)ら太子党(高官子女)や歴代駐日大使ら、各界有力者が名を連ねる。
同会を後押ししたのは日本船舶振興会(現日本財団)の故笹川良一会長で、80年代にトウ小平、王震両氏と意気投合し、100億円の笹川平和基金を提供。政治的後ろ盾に資金力が加わった友連会は、対日交流の中心団体になった。しかし近年、組織の肥大化に伴い対日交流をビジネス化、利権をあさる傾向が生まれていた。これに疑問を持つ日本財団(笹川陽平会長)は今年3月、友連会との関係を解消したが、中国政府も、友連会の正規化に着手した可能性がある。
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