第210号 平成19年 11月14日(水)

沖縄戦「集団自決検定問題」
つくる会が文科省へ三度目の申し入れ

  「新しい歴史教科書をつくる会」は11月13日午後3時15分より、沖縄戦「集団自決検定問題」に関し、渡海紀三朗文科大臣に下記内容の申し入れを行い、「伝えられるような訂正を受け入れれば、明らかに誤ったことを学校で教える事になるので、父母からの訴訟が起こると思われるが、これに対する対応はできているのか」と問い質しました。そして引き続き記者会見を開きました。
 なお、申し入れ・記者会見は、藤岡信勝会長、杉原誠四郎副会長、鈴木尚之事務局長の3名のほかに、つくる会会員で沖縄在住のジャーナリストの惠隆之介氏も同席して行われました。

 
                                            平成19年11月13日
渡海紀三朗 文部科学大臣殿
                                        新しい歴史教科書をつくる会
                                                会長 藤岡 信勝

          「沖縄集団自決」検定に関する「つくる会」の意見書(その3)

 (1)高校日本史教科書の「沖縄集団自決」検定について、私たちは去る6月27日、伊吹文明文科大臣(当時)あてに「意見書」を提出し、次の3点を求めました。@教育行政は国民全体に責任を負って行われるものであり、特定の地域の議会が決議したからといって道理のない検定意見撤回要求に屈しないこと、A供給本の印刷段階で自主訂正申請を教科書会社に出させ、軍の「命令」ないし「強要」を示唆する記述を復活させるなどの「政治的妥協」をしないこと、B一部で報じられている、「沖縄集団自決」検定に直接関わった企画官などの懲罰的な意味を持たせた配置転換をしないこと。

 (2)ところが、その後の事態は私たちが憂慮したまさにその方向に突き進みました。すなわち、上記Bの人事は7月10日付けで発令されてしまい、9月29日の沖縄県民大会ののち貴職は「沖縄県民の気持ちを受け止め、何ができるのか検討する」「教科書出版社から訂正申請があった場合は、真摯に対応したい」と語りました。これは従来の文科省の方針の根本的な転換を示唆するもので、これを危惧した私たちは10月4日、貴職に対し「教科書検定制度の趣旨をふまえ、いかなる政治的圧力にも屈することなく、毅然として対応」されるよう申し入れました。
その際、私たちは検定意見の撤回に反対する論拠として、@軍の「命令」や「強制」が無かったことはすでに確定した史実であること、A検定意見は公正かつ穏健・適切な内容であり一点の瑕疵もないこと、B9月29日の沖縄集会の主催者発表「11万人」は誇張された数字であり、沖縄の民意を正しく見るべきこと、C「軍の命令・強制」が証明できないためにこれを「関与」と言い換える言葉のトリックにまどわされてはならないこと、D文科省の妥協は教科書検定制度の根本的否定になること、の5点を指摘しました。

 (3)しかし、その後の事態はさらに私たちの憂慮する方向へまっしぐらに進んでいます。貴職は、沖縄の関係者らに「訂正申請」に対する「真摯な検討」の用意を繰り返し、それを受けて教科書会社各社は、11月上旬までに検定意見を付された5社7冊と検定意見をつけられなかった1社を加え合計6社8冊の教科書が訂正申請しました。その内容は、実教出版に例をとると、
<検定前> 日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺し合いをさせ、
<検定後> 日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺し合いがおこった。
 <訂正申請> 日本軍は、住民に手榴弾をくばって集団自害と殺し合いを強制した。
というものです。検定前よりもさらに日本軍を悪逆非道に描き出そうとする意図が際だっています。もし、この訂正申請を認めるならば、たとえ形式上検定意見を撤回しなくても、事実上の検定意見の撤回と選ぶところがなく、検定意見前の申請段階の記述よりもさらに反軍思想が露骨に表現されているといえます。私たちはこれを絶対に認めることは出来ません。

 (4)さらに、文科省は教科書会社に訂正申請を出させる際、その理由を「学習をすすめる上に支障となる記載」とするよう教科書会社に示唆したと伝えられています。これは恣意的な法規の運用と言わなければなりません。そもそも、教科用図書検定規則第13条に定められた「検定図書の訂正」とは、検定終了時点から使用開始にいたる約1年の間に発見された誤記・誤植・脱字、(どこかの国が消滅するなどの)「客観的事情の変更」に伴い教科書会社からの訂正申請が認められているもので、検定意見を否定するような訂正は認められていません。もちろん、過去にただの一例もそのようなケースはありません。ところが、今回は文科省がみずから教科書会社をたきつけて「学習上の支障」というこじつけで検定意見を否定する訂正をさせているのです。異例・異常な事態です。

(5)また、訂正申請を受けて教科書用図書検定調査審議会(以下、「検定審議会」)を開催すると公言していることも異例です。訂正申請はあくまで検定意見の範囲内で行われるべきものであり、従って検定意見にもられた基本方針が決まっている以上検定審議会を開催する必要はありませんし、そうした前例もありません。それなのに検定審議会を開催することは、文科省が「集団自決」についての検定意見に瑕疵があったと認めていることを意味します。すでに11月5日には、この問題を審議する日本史委員会が開催され、集団自決に関して沖縄戦の専門家から意見を聞くこと、人選はこれから詰めることなどを決めたとされています。「沖縄戦の専門家」を口実にしてどのような人物が選ばれるかは想像に難くありません。記述の復活を認める路線が出来上っているのではないかという強い危惧を抱かざるを得ません。

 (6)文科省によるこうした一連の行政行為は、検定意見撤回運動を推進してきた特定勢力の4つの目標、すなわち、@検定意見の撤回、A「軍の命令・強制」記述の復活、B沖縄条項の制定、C検定審議会の改組、の全てに対して全面的に屈服・容認するものです。つまり、「軍の命令・強制」記述が訂正申請で復活すれば、形式上検定意見を撤回しなくても事実上撤回と同じ意味をもつことは明かであり、また、こうした措置はたとえ教科書検定基準に明示されるか否かを問わず、沖縄に関する記述には検定意見をつけられないという沖縄条項が事実上効力をもつことを意味します。検定審議会のメンバーも特定勢力の意のままになります。

 (7)以上のことから、私たちは、貴職に対し次の諸点についての検討と回答を求めます。
 1)9月29日の沖縄「11万人」集会とは、実数2万人弱の集会を主催者発表を鵜呑みにしたことによる誤報でした。数の如何を問わず、こうした集会によって政府・文科省が既定の方針を転換するのは「不当な政治介入」ではありませんか。
 2)「沖縄集団自決」に関する検定意見と検定実務にいかなる瑕疵があったとお考えなのか、その内容を明示していただきたい。
 3)訂正申請の理由を「学習上の支障」とするよう教科書会社を指導した理由は何か。
 4)訂正申請に対し前例のない検定審議会を開くのはなぜか。
 5)検定審議会の日本史小委員会は、異なる立場の学者・関係者からのヒアリングを行うのが最小限の公平さであると考えるが、どうか。

 以上の5点につき、速やかな回答をお願い申し上げます。             (以上)

 

虚構の「軍命令・強制」説の復活を許さない!
「教科書検定への政治介入に反対する会」が緊急国民集会第2弾を開催

 沖縄戦「集団自決検定問題」の打開のため活動している「教科書検定への政治介入に反対する会」は、11月13日18時30分より新宿区・牛込箪笥ホールで、前回集会(10月15日開催)に続き、2回目の緊急国民集会を開催しました。会場はこの問題に危機感を持つ人々300人が集まりました。
 集会は小田村四郎氏の開会の挨拶で始まり、赤池誠章衆議院議員による決意表明、続いて、沖縄から駆けつけてくださった惠忠久(国旗国歌推進沖縄県民会議会長)、惠隆之介(ジャーナリスト)の両氏が登壇されました。その中で惠忠久氏は、集団自決は軍命令によって起こったのではないことを詳細に説明し、沖縄タイムス・琉球新報両紙の報道スタンスの危険性を指摘すると同時に、沖縄県全体がそれに逆らえない特殊な状況にあることを述べました。惠隆之介氏は、アメリカの統治下で、「旧軍は住民保護の視点を欠いた軍隊であった」という洗脳教育が徹底的に行われた事態をなまなましく伝え、実際の日本軍はそうではないことについて、当時の生存者の証言や疎開状況などを具体的に紹介し、「教科書はネガティブな面ばかり取り上げるのではなく、逆に軍が必死に県民を守ろうとした事例も載せるべきだ」と訴えました。
 また、都議会議員の古賀俊昭・土屋たかゆき両氏からそれぞれ問題打開のための決意表明があり、続いて渡部昇一氏、田久保忠衛氏、中村粲氏、秦郁彦氏が登壇しました。大阪から参加した徳永信一弁護士は、大阪地裁で現在係争中の「沖縄集団自決冤罪訴訟」の進行状況について報告しました。最後に総括として登壇した藤岡信勝当会会長は、「軍の強制・命令が無かった事を一番知っているのは他でもない沖縄の左翼である」と指摘、「目の前で嘘の歴史がつくられ、それが教科書に書かれる事は許せない」と述べ、各方面との連携を進め、問題に取り組んでいく強い決意を表明しました。
その後、下記の決議案が満場一致で採択されました。集会は出席した人々の何としても「軍命令・強制説」復活を阻止するという熱気の中で、高池勝彦当会副会長の閉会挨拶にて終了しました。
 なお、第3回国民集会は12月4日(火)午後1時から、衆議院第二議員会館にて開催の予定です。詳細は決定次第、FAX通信にてお知らせ致します。引き続き多くの方のご参加をよろしくお願い致します。

 

決     議 

 我々は、去る10月15日、参議院議員会館において、沖縄戦「集団自決」の教科書検定にかかわる不当な政治介入について、これに強く反対する緊急集会と記者会見を開いた。まさに緊急の企画であったにもかかわらず、事態を憂慮する有志国民と報道関係者が多数参集したところに、我々は予想を超える反響の大きさを実感した。
 我々が集会、決議、記者会見で繰返し訴えたのは次のことである。「集団自決」は決して忘れてはならない悲劇であるが、そこに軍の「命令」や「強制」が無かったことは実証済みの史実である。この史実に立った正当かつ妥当な検定意見はどこまでも堅持されるべきであって、教科書記述に虚構の「軍命令・強制」説をいささかでも復活させることがあってはならない。
 ところが、意図的に仕組まれその規模が過大に誤報された沖縄県民集会を受けて、福田総理大臣や渡海文部科学大臣ら政府首脳は、教科書会社からの訂正申請があればこれに応ずるとの方針に転換した。国会にも与野党を通じて「軍命令・強制」記述を復活させようとする動きがある。こうした政治介入によって検定意見を事実上撤回することは、教科書検定制度を崩壊させるものであって、断じて許し難い。
 我々が先陣を切って以後、各方面で検定への政治介入に反対する声が一気に盛り上がった。そして、これに呼応する形で良識ある国会議員が連携し結集して事に当ろうしていることは、歓迎し、期待するところ大である。有志地方議員が立ち上がったことも有難い。
 しかし、事態は予断を許さない。報道によれば、文科省は教科書会社に対して訂正申請の理由を「学習上の支障」とするよう示唆し、誘導している。言語道断である。正当かつ妥当な検定意見を守り通すか、それとも検定意見撤回への政治介入に屈伏するか、今やその岐路に立っている。
 我々は、国民に広く事態の重大性を訴えると共に、政府関係機関及び国会議員の過ちなき対応を求めるために、あらためて以下のことを主張し、強く要求する。

 一、沖縄戦「集団自決」で軍の「命令」や「強制」が無かったことは実証済みの史実である。
 一、この史実に立った正当かつ妥当な検定意見を否定し、虚構の「軍命令・強制」説に基づく教科書記述を復活させてはならない。
 一、当該検定意見の事実上の撤回を求めるいかなる政治介入も、教科書検定制度を根本的に否定するものであって、決して許されない。

 以上、決議する。

 平成19年11月13日
                                           沖縄戦「集団自決」検定
                    虚構の「軍命令・強制」説の復活を許さない!国民決起集会



 

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