「医師の過労死をなくし、勤務条件を改善するための施策を強化して」−。過労死弁護団全国連絡会議(代表幹事・松丸正弁護士)は11月14日、厚生労働省の舛添要一大臣に申し入れを行った。勤務医の労働条件、特に長時間労働を改善するためには、医師の増員等の課題とともに労働基準法の遵守が不可欠として、医師の労働時間の適正な把握や宿日直勤務の許可の適正な運用などを要求した。申し入れには、過労自殺した小児科医・中原利郎さん(当時44歳)の妻のり子さんら遺族も参加し、22,314筆に上る小児科医療の現場改善を求める要請書を提出した。
同連絡会議が集約した医師の過労死・過労自殺をめぐる労災認定や労災補償の事例は、これまでに全国で22件に及び、うち7件が今年に集中している。
厚労省の「医師需給に係る医師の勤務状況調査」によると、病院等の医療機関の勤務医の1週間当たりの勤務時間は平均で63.3時間。同連絡会議は「この勤務時間は、1週間に40時間を超える時間を時間外労働とする厚労省の『脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準』の考え方に基づけば、1カ月当たり約100時間の時間外労働に相当する」と指摘した上で、「現在の医師の勤務条件の改善は、医師の過労死・過労自殺を未然に防止するためにも、労働行政上の急務な課題と考える」として、この日の申し入れに至った。
同連絡会議は、4点にわたる項目の申し入れを実施。「医師の労働時間の適正な把握」では、「医療機関の勤務医についての労働時間の把握方法が適正になされているかを調査のうえ、医療機関に厳正な指導を行う」ように求めた。「宿日直勤務の許可の適正な運用」については、「宿日直勤務の許可を受けている医療機関でも、『応急患者の診療又は入院』等に追われ、仮眠も十分に取れていないのが実態」と指摘。「宿日直勤務の実態についての調査を実施するとともに、許可基準を満たしていない医療機関に対して、是正のため指導監督することを求める」と訴えた。加えて、最高裁の判例を踏まえ「宿日直時の医師の勤務は、仮眠時間も含めて労基法上の労働時間に該当することは明らかであり、厚労省の宿日直についての許可基準の見直しを検討すること」も申し入れた。
これらのほか、労基法第36条に基づく時間外及び休日労働に関する協定(36協定)の適正な内容による届け出、賃金不払い残業(サービス残業)の是正も要求した。
厚労省の意向により、取材は写真撮影の頭撮り≠ノ限定。終了後の報告で、同連絡会議は、申し入れの席上、昨年の医療保健業への監督は1,575件に上り、約8割に当たる1,283件に違反があったことを厚労省が示したことを記者に伝えた。この割合は、他業種では約65%という。
「それぞれの項目について調査した上で、是正するように」とした申し入れに対し、応対した担当者は「検討いたします」と回答。こうしたやり取りを踏まえ、同連絡会議は「医師の増員がないまま、本格的に監督すれば、医療が壊れてしまうだろう。医師不足の現状を打開するには、労働基準行政と医療行政をトータルに連携して施策を展開していくことが欠かせない」と述べた。
同席し、要請書を提出した中原のり子さんは「行政は過労死や過労自殺が起きてから(労災等を)認めるのではなく、過労死や過労自殺が起こらないように施策を進めていくべき」と強調した。
更新:2007/11/14 キャリアブレイン
医療ニュースデイリーアクセスランキング
※集計:11/13
医療ニュースアクセスランキング
※集計:11/8〜11/13
CB NEWS編集部の選んだ 07上半期特選ニュース10選
医療ニュース動画
総務省の調査で、悪い方向に向かっている分野として「医療・福祉」を上げる人が過去最高の割合になりました。 不安を払拭できる打開方策はあるのでしょうか?