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「煌めく」ためにはなにが必要か

「定年後の新しい生き方」はあるのか?

三田 典玄(2007-11-14 10:30)
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 11月のはじめ、ある仕事で知り合いになった浜岡勤さんという方に、1冊の本をいただいた。表紙には『煌めいて現役 ~定年後の「新しい生き方」創造にエール!』とあった。

本の表紙(撮影:三田典玄)

 その書名から察せられるように、この本には、サラリーマンだった人たちの「定年」後が書かれている。登場する12人がどのように生きたのか、どのように感じ、どのように準備し、どのように困難を乗り越えたのか、ということが、その人自身のことばで書かれている。

 この本をご紹介いただいた浜岡さんご自身も67歳で、すでに数年前に定年を迎えている。

 浜岡さんは日本の某写真メーカーに勤めながら、日本の古神道の研究に没頭した。その間、米国中西部の大学にも留学し、英語も非常に堪能だ。そして、この本には浜岡さんご自身の文章もある。浜岡さんはこの本全体の編纂もされている。

 戦後日本の終身雇用制の下、高度成長期と働き盛りの年齢が見事に一致した幸福な人たち。それが、日本の団塊の世代と、その少し前の、日本の大企業のサラリーマンだったのではないだろうか? 

 その「幸運」を体一杯に受け、企業戦士として思う存分勝負し、順調に老後を迎えた人たちが、現在、自分の「楽園」を作っている様子がこの本からは伺えた。

 私の世代やそれより若い世代から見ると、正直うらやましい、というよりも「妬ましい」という言い方のほうがあたっているかも知れない。読んでいるうちに、「これからはシルバーシートでもご老人に座席を譲るのはやめよう」などというつまらない考えが、何度頭をよぎったか知れない、ということは告白せざるを得ない(←半分冗談なので、そのまま取らないように)。

 それくらい、妬ましい。「定年になったそのときは落ち込んだけど、しばらくしたら元気になりました」というパターンの体験談が、やたら多いのだ。多くの人は世間の表に出ることを隠すように、それぞれの「趣味」を「生きがい」として生きている。なにせ今や、社会保険料をしっかり払っていても、将来果たして年金を受け取れるのかどうか怪しい時代に生まれた私たちである。本を読み進むうち、そのうち何人かの「趣味生活」の文章を読んで、ムカムカするものがなかったと言えばうそになる。

 けれども、この本の最後に登場する浜岡さんご自身の体験談は違った。

 家が貧しいために苦労して学校生活を送り、やがて大学に行き、すばらしい成績を収めた。大学院にも行けたけれども、これ以上自分を支えてくれた人たちに迷惑はかけられない、と、企業に就職した。大企業の中にあって、一個人として企業に流されず、多くの苦労を背負った。米国留学もした。その一方で英語の勉強、古神道の勉強をこなした。伊勢神宮のホームページの300ページの英訳はこの浜岡氏によるものだ。

 浜岡さんはこの本の中で、多くの示唆に富む言葉を重ねている。一部を引用しよう。

 「自分が納得できるまで時間をかけよう。人は人。自分は自分。わかるまで粘ろう」

 「天国へのパスポートとはなんだろう? 天国へ行くための航空券とはなんだろう? 定年退職後六年にしてやっと気がついた。パスポートとは【あなたはどういう人間なのか?】今の自分を表す身分証明書。航空券に相当するのは【人生の目標を定め日々努めること】なのだ。(中略) だから、いつも【いま】という瞬間が大事なのだ!と教えられる」

 「会社なり職場なりでルーチンの仕事をする人をプロとは考えない。他の人にとって代わられるからである。指示された通りに動く人もプロとは考えない。代わりの人がいるからである」

 「一、難しい課題を平気な顔でこなしている
  二、失敗の経験があり、それを教訓に挑戦し成功している
  三、確固たる信念を持ち、前向きで続け最後には結果を出す
  (それがプロである)」

 「こういう人生訓がある。【人事を尽くして天命を待つ】。私はこう言い替える。【天命を信じて人事を尽くせ】。」

  ◇

 浜岡さんは日本の名だたる大企業で、高度成長期のサラリーマンを勤め上げ、そこで定年を迎えた。この本には浜岡さんはじめ、いろいろな人の、いろいろな「定年後」が書かれている。しかし、浜岡さんには「定年」という言葉自身が似合わない。反対に「生涯現役」という言葉も、またちょっと違うと感じる。

 浜岡さんは、今日を精一杯に行きているひとりの人間。私にはそれ以上の言葉は見つからない。

 後で知ったのだが、オーマイニュースのこの記事でご紹介した鶴亀彰氏と浜岡勤氏は、なんと同郷で、中学校、高校(鹿児島ラサール高)も一緒であった、という。私はお二人とはまったく違うルートで知り合いになった。そのお二人がこんなところでの接点があると知ったときは驚いた。

 「人との出会いが、人のこころを豊かにする」

 浜岡さんが同書の中で紹介する、この素朴で、当たり前の言葉が、私自身にももたらされ、体言されようとは。不思議な出会いを作ってくれた本だった。こんなことも、世の中にはあるのだ。

  ◇

 なお、この本は浜岡さんはじめ、12人の執筆者全員の自費出版である。浜岡さんご自身へのメールで本書を手に入れることができる。

「煌めいて現役」 平成19年10月25日発売
編著者: 浜岡勤
発行者: 12人のサムライ
定価 : 1500円
お求めは浜岡さんご自身にご連絡ください。
浜岡氏のメールアドレス (t-hamaoka@nifty.com)

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