法務省が公表した二〇〇七年版「犯罪白書」は、一九四八年から〇六年までの刑事裁判有罪確定者のうち無作為抽出した百万人の調査結果を基に、再犯に関する特集を組んだ。
白書によると、百万人のうち再犯者は29%だったが、調査対象者が起こした総犯罪件数約百六十八万件を分析すると、再犯者による件数が58%に上っている。治安を守るうえで、犯罪の繰り返しを断ち切る再犯防止対策の重要性が高まっていることを裏付けたといえよう。
初犯の罪別再犯率で最も高いのは窃盗の45%で、次いで覚せい剤取締法違反の42%、傷害・暴行33%などとなっている。同一罪での再犯を見ても窃盗と覚せい剤取締法違反が、ともに29%でトップだった。常習化へと進んでいく状況をうかがわせる。
年齢層別の再犯率を見ると二十代前半で初めて罪を犯したケースが40%を超えて最も高く、その約半数が二年以内に再び犯罪に走っている。一方で十犯以上の「多数回再犯者」では、最後の裁判の際に六十歳以上だった割合は九〇年の11%が高齢化などで〇五年には40%となっている。
再犯防止をどう図るかが緊急の課題だ。一口に再犯といっても、罪や年齢、個人の特性などによって多様である。個別の犯罪の要因を解明し、初犯段階を中心に特質に応じて重点的・集中的な対策が必要だとする白書の提言はうなずけよう。
凶悪事件などを背景に、再犯防止を目的とした厳罰化傾向が進んでいる。犯した罪への償いとともに、社会復帰させる際の判断の厳格さも重要だが、それだけで再犯がなくなるとは思えない。受刑者らに心から悔いてやり直そうとする気持ちを持たせ、再出発を促す支援策が大事となる。
社会復帰へ向けて、刑務所などでの教育や訓練とあわせ社会の受け皿整備も重要だ。白書は〇六年の窃盗の場合、再入受刑者の八割以上が無職だったという。社会に戻っても、仕事や金銭面で行き詰まれば再び過ちを繰り返す事態にもなりかねない。
就労支援に一層の力を注ぐ必要があろう。法務省は厚生労働省とともに、受刑者らの就労を確保し、その改善更生を図るため〇六年度から刑務所出所者等総合的就労支援対策を始めた。職業紹介や相談、情報提供に関して両省庁の関係機関が連携している。
だが、現状を見る限り十分とはいい難い。今後、職業訓練内容の見直しや協力企業への支援、拡大を図ることが肝要だ。地域社会の理解を得ながら再犯を防ぐ活動を活発化させたい。
ラグビーの強豪、関東学院大の部員二人が大麻取締法違反の現行犯で逮捕された。室内で大麻を栽培していたという。そのマンションは、部が借り上げており「合宿所」といってもよい。部、大学は責任がないと言い逃れはできない。
同大学は結局、来年三月末までの対外試合を自粛し、春口広監督は三カ月の活動停止処分とした。社会秩序を乱しファンを失望させた罪は大きく当然の措置といえよう。
一九六一年創部の同大ラグビー部は、七四年に春口監督が就任するまでは非常に弱かったが、メキメキと実力をつけ、九〇年に全国大学選手権に初出場、九八年には初優勝を果たした。早大、明大などとともに大学ラグビーの人気を高めてきたがそれを今回、台無しにしてしまった。
神奈川県警の調べでは、両容疑者は今年初め、大麻の栽培方法のマニュアル本を入手し春、種を買い、夏合宿が終わったころ栽培を始めた。計画的であり許せない。大学は他に関係した部員がいないか調べているという。
それにしても大学スポーツ界の不祥事が止まらない。昨年は京大アメリカンフットボール部の元部員による女子学生集団暴行事件や、日大サッカー、ラグビー両部員の通学定期券不正使用が発覚した。今年五月には同志社大ラグビー部員によるわいせつ目的略取未遂事件もあった。
ルールを守るべきスポーツ界で規範意識が希薄になったのはどうしたことか。名門チームに所属していることへのおごり、勝ちさえすれば何をしても構わないという誤った勝利至上主義がまん延していないか。他校の例を「他山の石」としたか。この事件を機に今度こそ各大学は再発防止に真剣に取り組むべきだ。
(2007年11月13日掲載)