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全盲患者放置、「職員が勝手に判断」と病院側堺市北区の「新金岡豊川総合病院」(豊川元邦院長)の職員が糖尿病で入院中だった全盲の患者男性(63)を公園に置き去りにした事件で、病院側は13日、記者会見して「医療行為から大きく外れたことで、誠に申し訳ない」などと謝罪した。男性は病室で大声を上げるなどしてトラブルになり、入院費の滞納も185万円に上っていたというが、事件は、退院しても行き場のない〈医療難民〉の深刻な実情も浮き彫りにした。 一方、大阪府警西成署は、保護責任者遺棄容疑で同病院を捜索、カルテなどを押収し、男性の病状分析などを進めている。 調べや病院の説明によると、男性を放置したのは、院長室付渉外係や医事課などの32〜47歳の職員4人。男性は約7年前、糖尿病と胃炎の治療で他の病院から転院してきた。3年ほど前からは病状が安定したため病院側は通院治療が可能として、退院を勧めていた。 男性は、入院費滞納のほか、病室の備品を壊したり、看護師や他の患者をどなりつけたりしてトラブルになり、最近は6人部屋を1人で使用していた。 病院側は当初、男性の身寄りを把握していなかったが、今年9月、前妻(63)がいることがわかったため、退院手続きを取って男性を送り届けたが、「持病があって面倒をみられない」などと引き取りを断られた。 このため、職員らは男性を公園に置き去りにし、直後に「男性が倒れている。目が見えないようだ」と119番通報。しばらく付近にいたが、数分後、救急車のサイレンの音が近づいてきたのを確認して立ち去ったという。救急隊が到着した際、男性はパジャマ姿でベンチに座っており、「入院先の職員にほかされた」と話し、発熱などを訴えたため、別の病院に搬送され、現在も入院している。 ◇ 新金岡豊川総合病院の豊川泰樹・院長室長は記者会見で、「身元引受人がいたというだけで退院手続きを進めたのは、考えが甘かった」と述べる一方、「放置は職員の勝手な判断で、病院の指示はなかった。他の患者とのトラブルもあり、うまく意思疎通できなかったことが背景にあった」と釈明した。 ◇ ◆「受け皿ない患者」支援システムなく 大阪府医療対策課は「男性の症状なら、20日間ほどで療養型病床や介護施設に移るのが通常」としているが、身寄りのない患者の行き場を確保する医療・福祉のシステムは確立していない。堺市も「家族に引き取りを断られた患者を公的施設で受け入れる制度はない」(市保健所)という。 医療制度改革によって、長期入院の高齢者らを受け入れる「療養病床」の削減も進んでおり、今後、退院後の受け皿のない患者が増えることが懸念される。 安藤高朗・全日本病院協会副会長は「社会的入院を送る人が退院後に生活するには、行政と地域が連携し、医療や福祉のケアを横断的に行うシステムが欠かせないが、日本では未成熟だ。低所得の高齢者や障害者が入居できる住宅の整備も必要」と指摘する。 (2007年11月14日 読売新聞)
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