イラスト:岡林みかん |
第49回 私が新聞をとる理由 | |
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新聞を読むと悪い事件ばかりが目に入って気が滅入る、とこぼす 探偵に、男は、読むのをやめろとアドバイスします。新聞を読まな きゃならない法律なんてどこにもないんだぜ。(ローレンス・ブロ ック『八百万の死にざま』) いまから180年くらい前、ゲーテは、新聞を読まなくなってから、 心がのびのびとして気持ちがいい、と手紙に書きました。 山本夏彦も生前、新聞なんか読んでない、読まなくても平気だ、 とコラムで書いてたような気がします。出典は確認してませんが、 確かです。山本は同じネタを何度も使い回しにしてましたから。ジ ジイの繰(く)りごととは、よくいったものです。 ちかごろでは評論家やジャーナリストの中にも、新聞をとってな いというかたがいるようです。ただ、そういうみなさんは購読をし てないだけで、読んではいるんですよね。ネットでただで読めるか らいいのだそうで。 でも新聞とらないと、不便じゃないですか? いえ、べつに新聞 社になんらかの便宜(べんぎ)を図ってもらってるわけじゃないん ですよ。契約のとき、今度新聞の味方するコラム書くから、洗剤も うひと箱ちょうだいよ、なんて要求も一切してません。 私もためしにネットで新聞を読んでみたのですが、やっぱり読み づらい。紙媒体だと、ページ全体、記事をまとめてざっくり斜め読 みできますが、ネットだといちいち記事見出しをクリックしてスク ロールしながら読んでまた見出し一覧に戻って……ゲーテじゃない けど、読まないほうが心がのびのびしそうです。 それに、古新聞――ていうか新聞紙ね、これがないと困りますよ。 焼き芋や弁当箱くるむのに重宝します。宅急便でワレモノ送るとき、 新聞紙なら丸めて箱のすきまに詰められます。まさかノートパソコ ン丸めて詰めるわけにはいかないでしょ。寒いときは、服の下に新 聞紙入れると、あったかいんですよ。 なにより困るのは、チラシが入ってこなくなること。むしろ新聞 そのものよりも、それに挟まれて入ってくる、近所のスーパーや商 店街の安売りチラシのほうが重要なのではなかろうかと、なぜか主 婦目線で考えてしまう、生活感あふれる私。 さすがにスーパーの特売情報は、ネットには載ってませんよね。 ジャーナリストの奥様は、スーパーで特売の豚コマとか長ネギとか、 お買いにならないのかしら? まあ、食材はすべてデパ地下でお求 めに? 儲かってらっしゃるんですのね。ちなみにご主人の原稿料、 おいくら? え、おまえみたいな三流物書きに教える義理はない? ケチ。 |