DPC準備期間は「2年」/DPC評価分科会

 DPC(急性期入院医療費の包括支払方式)の基準などを検討している中央社会保険医療協議会(中医協)下部組織のDPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院院長)は11月12日、今年度のDPC準備病院がDPCに移行するために必要な準備期間を「2年間」とする方針で一致した。近く開催される中医協の診療報酬基本問題小委員会で承認されれば、今年度のDPC準備病院が来年度にDPC対象病院に移行することはできなくなる。また、DPCへの移行年度と診療報酬改定の年度を一致させる方針が固まれば、今年度の準備病院がDPCに移行できるのは2010年(平成22年)になる。

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 今年届け出があった約700施設のDPC準備病院とDPC対象病院を加えると、DPC関連病院は1,400病院を超え、病床数は全国の一般病床数の過半数を占める(05年度医療施設調査)。

 しかし、新規にDPCに手挙げした約700病院の半数が200床未満の中小病院。

 DPCに多様な病院が参入したことで医療資源の投入量や患者の病態の多様性が増していることから、DPC基準の見直しなどが求められている。

 このため厚生労働省は、06年度の基準である「看護配置基準10:1以上」「診療録管理体制加算の算定など」「データを適切に提出できる」――という3点を引き続き要件にした上で、3つ目の要件である「データの適切な提出」について、「データの質を確保することが重要である」とした。

 「データの質の確保」については、@一定期間、適切にデータを提出できること、A一定以上の(データ/病床)比があること――の2点を求める。

■ 一定期間のデータ提出
 
厚労省によると、データの提出期間を「1年間」とした場合、今年のDPC準備病院は今年7月から10月までの4カ月分のデータを提出する。
 一方、「2年間」とした場合、今年7月から12月までの6カ月分と、来年7月から10月までの4カ月分を合わせた10カ月分のデータを提出する。

 前回の同分科会では、準備期間を「1年間」または「2年間」とする両論併記で中医協の基本問題小委員会に報告する方針だったが、この日の会合では「1年間では短い」「じっくりデータを集積すべき」といった意見が相次いだため、「2年間が望ましい」との意見を提出する。

 このため、同委員会で承認されれば、今年のDPC準備病院が09年度に移行する場合には、今年7〜12月の6カ月分と来年7〜10月の4カ月分を合わせた10カ月分のデータが必要となる。

 もっとも、09年度は診療報酬改定の年度ではないため、同年度からDPC対象病院に移行するためには「改定年度以外でもDPC病院の指定をできる」とする中医協の決定が必要になる。

■ 一定以上の「データ/病床比」
 
04年度までDPC病院の要件に組み込まれていた「データ/病床比=3.5以上」を復活し、再びDPC対象病院の基準とすることについて、委員から若干の異論があったが了承された。

 データの提出期間を「1年間」(4カ月分)とした場合は3.5以上、「2年間」(10カ月分)とした場合は8.75以上が必要になる。厚労省によると、対象期間が7月〜10月(123日)、病床利用率が79.4%、平均在院日数が28日というケースでは、データ/病床比は3.49になる。病床利用率が高く、在院日数が短ければ、「データ/病床比」は大きくなる。

 例えば、一般病床での治療を終えた後に退院させずに療養病床に“転棟”させるケアミックス型の病院の場合、退院患者数がカウントされないので「データ/病床比」が3.5未満になることが多いため、「ケアミックス外しのための基準」になることが指摘されている。

 前回の厚労省の説明では、「データ/病床比」の基準を導入すると、04年と06年の対象病院のうち14病院、06年の準備病院のうち72病院の合計86病院がDPCの対象から外れるとしていた。
 ところが、今回の分科会では、計算式の分母に用いる「病床」を「許可病床数(全病床数)」としていたのを修正して、「DPC算定病床数」とした。

 このため、新しい計算式を基準にした場合に3.5以上を満たせない病院は04年と06年の対象病院のうち3病院、06年の準備病院のうち5病院となり、前回の「86病院」から大きく減少して「8病院」となった。

 質疑で、池上直己委員(慶應義塾大医学部医療政策・管理学教授)は「DPCを算定している病床数が月ごとに変化する場合はどうするのか」と質問した。
 厚労省は「そのような場合は詰めさせていただく」とかわしたが、西岡分科会長が「池上委員の発言でびっくりした。月ごとにDPCの算定病床数が変わることがあるのか。もし、あるとすればそれは問題だ」とただした。

 これに対して、厚労省は「現状では、DPCの算定病床数が月ごとに変わることはほとんどない」と説明したが、酒巻哲夫委員(群馬大医療情報部教授)が「DPCの算定病床数がどの程度変化するのか、そのような病院数がどのぐらいあるのか、実態を調べないと判断が難しい。データを示してほしい」と求めた。

 厚労省は「実際には毎月変わることはない。万が一、そのような病院があればピックアップして調べる」と理解を求め、土田会長も「もし、そのような事例があればまた議論するということで、ご了解いただきたい」と議論を収め、「データ/病床比」を要件とすることで合意した。

■ 手術・化学療法
 
厚労省は、適切なデータの提出をDPC対象病院の最低限の要件とした上で、さらに「データ/病床比」と「手術・化学療法・放射線治療・救急車の件数の割合」で絞り込む方針を示した。
 しかし、手術や化学療法などの件数の割合を要件に加えることについては意見がまとまらなかった。

 <データ/病床比の計算式>
 
対象期間において退院した患者の全データ数/病床
 =対象期間×病床利用率/平均在院日数

 


更新:2007/11/13   キャリアブレイン

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