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【シリーズ現場】

人権教育の現場から ■1■ 仲間支え寄り添う心

2007年11月13日

米山千幸教諭

写真

心の壁 

金沢・港中 米山 千幸教諭

居場所づくり 級友が知恵

 「2年1組 壁はない!」

 これは今春の終業式の時、二年一組の生徒たちが私にくれた色紙の言葉である。

 しかし、昨年四月に着任して二年一組の担任になった時、クラスの中に多数の壁があるのを感じた。先生と生徒の壁、男女間の壁、グループの壁…。仲の良い生徒同士が壁の中で固まっていて、壁の外にいる生徒たちとはかかわろうとしていなかった。

 これまで当たり前にできていた英語のペア活動ができなかったり、考えもなく口にした言葉で相手を傷つけてしまうなど、クラスにはさまざまな課題があった。

 私は「いじめ根絶宣言」をして、「班は壊すために創(つく)る」「先生はお客さん」という言葉を合言葉に、班活動に力を注ぎ、生徒同士のかかわりを強めようと努めた。

 そんな中、夏休みを境にして、Aが学校に来られなくなった。学校へ行けない理由はいろいろ変わり、原因がつかめなかった。「Aが望む治療を受ければ解決するのではないか」と単純に信じたが、治療が終了してもAは学校に来なかった。この時、Aに寄り添うことをせず、治療をしたら問題が解決すると考えていた自分の差別性に気づいた。

 Aにとって学校に行くことだけが目的ではない。Aはどこにいても『二の一』の仲間なのだから、Aのつらさを支え、生き方を手伝うことができたら良いのではないかと思った。それはAもクラスの生徒たちも同じで、学校は誰にでも居心地良くいられる場所でなければならない。

 生活ノートには一人ひとり丁寧に返事を書き、英語の授業では原点に戻り、「Heart To Heart」という教科通信を使って生徒と生徒、生徒と先生、生徒と世界を結びつけ、自分のことをみんなの前で語れるように努めた。

 生徒たちは「学校が嫌なら外で何か楽しい催しをして、二の一の雰囲気に慣れてもらおう」と実行委員会を作り、Aがどうしたら学校に来られるか、話し合いを始めた。三月にAが再び学校へやって来た時、クラスの中の壁は確実に少なく、低くなっているのを感じた。

      ◇

 いじめで人権を侵害され、教育を受ける権利さえ奪われている子どもがいる。子どもの人権侵害に目を向け、人権教育を推し進めようと二十三、二十四両日、第五十九回全国人権・同和教育研究大会(全国同和教育研究協議会主催)が金沢市などで開かれる。大会を前に、現場教師のリポートを紹介する。

 ◇第59回全国人権・同和教育研究大会◇ 23、24両日、金沢市の県産業展示館4号館をメーン会場に開催。基調提案などの全体会と分科会で構成。学校教育、社会教育部会で計9分科会に分かれ、県内外の教員や保護者らの報告がある。このほか特別部会として、JR金沢駅もてなしドーム地下広場などでの展示、交流コーナーも設けられる。参加費は4000円。詳細は県同和教育研究協議会のホームページにも掲載されている。

 

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