分娩(ぶんべん)可能な県内の医療機関が減少する中、県男女共同参画推進センター「ぴゅあ総合」はこのほど、出産研究の第一人者で知られる上田市産院(長野県上田市)の広瀬健副院長を招き、「安心して産める場を求めて」と題した講演会を行った。病院での分娩について、広瀬氏は「訴訟に対する『医師の安全』を優先している」と疑問を呈したうえで、「母親が身近な場所でリラックスしてお産ができるよう、助産師主導の体制が必要」と訴えた。
広瀬氏は、現行の一般的な分娩は「医学的管理」の下で行われ、母親は妊娠時からさまざまなリスクの説明により恐怖や不安を感じていると分析。出産時には「自然な姿勢とはいえない」(広瀬さん)分娩台に移されるなど、多くのストレスを受けているとした。
安全確保に向け、産婦人科医を一つの病院に集めて分娩にあたる「集約化」が県内でも進む中、集約化政策を取った後に見直した英国の例を紹介し、「忙しくなりすぎてかえって事故が増えた」と述べた。
広瀬氏は解決策として、産婦人科医がいなくても分娩を取り扱え、看護師も取れる国家資格の助産師に注目。妊娠から分娩、産後まで長期的なケアを助産師が主導し、異常出産時に産婦人科医がバックアップする体制の確立を提案した。
ただ、現状は「助産師に仕事をとられる」という考えが産婦人科医会に根強いと問題点を指摘したうえで、助産師が活躍するニュージーランドの例を挙げ、「きっかけになったのは市民の声」と市民活動の重要性を指摘した。【吉見裕都】
毎日新聞 2007年11月13日