薬害肝炎訴訟、福岡高裁も和解勧告…原告「大きな後押し」
福岡高裁の和解勧告に「本当の戦いはこれから」と記者会見で話す原告団の(左から)福田衣里子さん、山口美智子さんら(12日午後3時51分、福岡県弁護士会館で)=貞末ヒトミ撮影
出産時などに止血剤として投与された血液製剤でC型肝炎ウイルスに感染したとして、患者らが国と製薬会社を相手に損害賠償を求めた「薬害肝炎九州訴訟」控訴審の口頭弁論が12日、福岡高裁で開かれた。丸山昌一裁判長は、大阪高裁の和解勧告に言及し、「当裁判所も、早期に柔軟かつ妥当な解決を図るには和解が望ましいと考えている」と和解勧告した。
原告団は10月15日、和解勧告を求める上申書を同高裁に提出していた。原告側は、同様の上申書を東京、名古屋、仙台の3高裁にも提出している。大阪高裁に次いで福岡高裁も和解勧告したことで、全国の訴訟に影響を与えそうだ。
丸山裁判長は「大阪高裁の和解協議を注視したい。これを前提に進行協議したい」と述べて閉廷、進行協議が行われた。大阪高裁は12月7日までに和解骨子案を出すとしており、弁護団によると、丸山裁判長は「12月7日以降、和解をどう進めるかについて関係当事者で集まりたい」と提案。国は「持ち帰りたい」と答え、次回の進行協議は12月12日に仮指定された。
薬害肝炎訴訟は福岡、東京、大阪、名古屋、仙台の5地裁で提訴され、原告は全国で計171人。仙台を除く4地裁が国の責任を認めた。九州訴訟の原告は50人で、福岡高裁で17人、同地裁で33人が係争中。昨年8月の福岡地裁判決では、原告患者18人のうち11人について賠償を命じた。
提訴から4年半、謝罪と救済を求め続けた原告らは和解勧告を歓迎する一方、「本当の戦いはこれから」と気を引き締めた。
閉廷後の記者会見で、全国原告団代表の山口美智子さん(51)(福岡市)は「大変うれしい。和解勧告の4文字がいかに重い言葉か」と涙ぐんだ。原告の出田(いでた)妙子さん(49)(熊本市)も「大きな後押しを裁判所から頂いた」、福田衣里子さん(27)(長崎市)は「この流れは誰にも止められない」と声を詰まらせた。