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社説:ドクターヘリ 救急医療に力、導入急げ
地方病院の医師不足など県内のへき地医療の状況が悪化する中、先ごろ秋田市で救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)にかかわるフォーラムが開かれた。ヘリコプターに医師が同乗、現場で治療を開始し患者を病院に運ぶドクターヘリ。交通事故だけでなく、妊婦の容体急変や脳卒中、心臓疾患など一刻を争う疾病には極めて効果的なシステムであり、導入に向けた取り組みが急がれる。
ドクターヘリは単に医師や看護師が乗り込むだけではない。救急専用の医療機器を装備し、常駐する救命救急センターなどから救急現場に向かい、現場で治療を開始、医療機関に搬送する。このため救命率の向上や後遺症の軽減などに効果を挙げている。
システムは40年ほど前にドイツで誕生、アウトバーン(高速自動車道)での交通事故死亡者を大幅に減少させた。以来、欧米を中心にドクターヘリの導入が急速に進んでいる。
日本でも平成13年度から国の補助で導入が始まったが、現在運用しているのは10道県の10機ほど。高い救命効果と後遺症の軽減が実証されているにもかかわらず、全国での導入が進まないのはなぜか。約2億円の購入費、維持管理費のほか、救命救急センターの受け入れ体制、ヘリポートの整備など、クリアしなければならない課題が少なくないためだ。本県もその1県ということになる。
未導入の自治体の場合、ドクターヘリに代わり、防災ヘリが救急搬送の役割の一端を担っている。本県では県の防災ヘリ「なまはげ」が、一刻を争う遠隔地の救急患者搬送に当たっている。昨年の実績は、切迫流産や心筋梗塞(こうそく)といった急病のほか、交通事故、山岳負傷などで27回出動した。
以前より高速交通網が整備されたとはいえ、短時間で現場に着き、病院に搬送できるヘリのメリットは大きい。救急医療機器が整備され、医師が同乗したドクターヘリならなおさらだ。
最近は、医師不足により地方病院の産科休診などが問題となっているため、国は産科や小児科のほか高度医療の拠点病院への機能集約化を進めようとしている。さらに県内では医師不足で救急医療機関の指定を取り下げる病院も出てきており、より遠隔地の救急病院に搬送しなければならない状況が生まれている。へき地における救急時の医療確保が、今後大きな問題となることは間違いない。そのためにも、ドクターヘリ導入の検討を本格化させる必要がある。
今年6月に「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法(ドクヘリ法)」が成立。各都道府県は、来年4月までに策定する新たな医療計画の中にドクターヘリも含めた救急医療提供体制を記載することになっている。県も現在策定作業を進めているが、「整備する」「検討する」などといったあいまいな表現でなく、ドクターヘリ導入の具体的な目標年次を盛り込むべきだ。
広大な面積を持つ秋田にとってドクターヘリは、その機能を最も発揮できる地域といっていい。県と医療界が協力し1日も早い導入を期待したい。
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